第29回 東京国際映画祭(TIFF) 特集企画『映画監督 細田守の世界』ドキュメンタリー上映&トークショー
第29回 東京国際映画祭 (TIFF) 特集企画『映画監督 細田守の世界』ドキュメンタリー上映 プロフェッショナル 仕事の流儀 『アニメーション映画監督 細田守の仕事 “希望を灯す、魂の映画” 』 トークショー 登壇者

第29回 東京国際映画祭(TIFF) アニメーション特集
「映画監督 細田守の世界」ドキュメンタリー上映

世界で「ポスト・宮﨑駿」の期待高まる、細田守監督。
グローバル人材と作りたい、細田アニメの将来。

10月28日(金)、第29回東京国際映画祭(TIFF)の特集企画である『映画監督 細田守の世界』にて、NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀 アニメーション映画監督 細田守の仕事 “希望を灯す、魂の映画” 』(2015年8月3日放送)が、六本木アカデミーヒルズ49 オーディトリアムで上映された。

細田守監督の映画『バケモノの子』の制作に密着したこの番組の冒頭で、細田守監督はカメラマンに室内温度は快適かと話しかける。映画製作記であると同時に、大ヒットメーカーとは思えないほど実は気づかいやで、控えめな細田守監督の人となりを感じさせる。

ドキュメンタリー番組上映後は、細田守監督をはじめ、トーマス・ナム氏(韓国/アジア・ファンタスティック・フィルムネットワーク マネージングディレクター)、マリオン・クロムファス氏(ドイツ/ニッポン・コネクション映画祭 フェスティバル・ディレクター)、イヴ・モンマイヨール氏(フランス/映画評論家・映画監督)が、氷川竜介氏(本特集プログラミング・アドバイザー/アニメ特撮研究家)と共にトークショーに登壇し、細田守監督の海外での評価や今後の作品、映画祭事情等について熱く語り合った。

第29回 東京国際映画祭 (TIFF) 特集企画『映画監督 細田守の世界』ドキュメンタリー上映 プロフェッショナル 仕事の流儀 『アニメーション映画監督 細田守の仕事 “希望を灯す、魂の映画” 』 トークショー

細田守監督を前に海外から来日した三者が共通し驚いていたのが、その働き方である。番組の中で描かれたとある製作中の1日、監督が口にしたのはコーヒーとのど飴のみ。映画製作が始まると、私生活と仕事の境界線が全くなくなり、映画の中にのめりこむという細田守監督。取り憑かれたように作り続けることで生まれる作品は、海外でも高い評価を受けている。韓国では『おおかみこどもの雨と雪』が33万人を動員し、記録となっているとトーマス・ナム氏。マリオン・クロムファス氏は、ドイツでは批評家からも高い評価を受け、これまでアニメを観なかった人にも、絶対に観た方がいい! と勧められるものだと述べた。イヴ・モンマイヨール氏によれば、フランスでも素晴らしい評価で『サマーウォーズ』を中心とした細田守監督作品に、ファン層が拡大し続けているという。一方で、各国でスタジオジブリ作品と否応なく比較されている実情に関しては、アンフェアだ、とした上で“ポスト・宮﨑駿”として細田守監督に高い期待が寄せられているのだとも語った。

なぜ1本の映画製作に3年もかかるのか。待っているファンがたくさんいるというトーマス・ナム氏の訴えに対し、「4、5年かかってしまいそうな所を何とか頑張って3年におさめている。許してください」と困ったように謝罪した細田守監督に、客席から温かな笑い声が起こった。

また、短編映画を撮る予定はあるかと尋ねられると細田守監督は、「チャンスがあればぜひやりたい。映画祭に呼ばれるのは特別な体験で、できることなら毎年やりたいくらいだが、作品がないと厳しいですしね」と語った。細田守監督は普段、あまり周囲から影響を受けたくないため、映画をほとんど観ないという。しかし、海外の映画祭に行くと、そこでしか観ることができない映画も多く、一つでも多く観たいという思いが強くなるのだとか。トロント国際映画祭では、2日間で11本もの映画を観たという。映画祭で自分の作品上映中はどうしているかという質問には、「観客の反応は見たいが、自分の作品は繰り返し観たくないというジレンマにかられる。上映中は会場の外に出ていることがほとんどだが、上映後に観客から寄せられる質問には思いがけないものもたくさんあり、楽しみだ」と笑顔を見せた。

他のプロダクションと、共同製作をする可能性は今後あるのだろうか。もしあっても、できれば特撮などはやらず、あくまで細田監督らしさを貫いてほしいとマリオン・クロムファス氏。それに対し細田守監督は、「共同制作というのは出資だけではないと思う。デザイナーやアニメーターなど、映画を共に作るのは日本人だけとは限らない、現場レベルでグローバルな人材と仕事がしてみたい」と語った。海外へ行く際に、現地の人からその国や土地ならではの物語を教えてもらうことが嬉しく、映画の舞台にしてみたい場所もあるという細田守監督。グローバルな人材と共に、海外を舞台として作られる作品も、近い将来期待できるかもしれない。

[記者: 宮﨑 千尋 / スチール写真: © 2016 TIFF]

第29回 東京国際映画祭 (TIFF) 特集企画『映画監督 細田守の世界』ドキュメンタリー上映 プロフェッショナル 仕事の流儀 『アニメーション映画監督 細田守の仕事 “希望を灯す、魂の映画” 』 トークショー 細田守監督

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<第29回 東京国際映画祭(TIFF) 特集企画『映画監督 細田守の世界』>
ドキュメンタリー上映&トークショー

プロフェッショナル 仕事の流儀
『アニメーション映画監督 細田守の仕事 “希望を灯す、魂の映画” 』

■開催日: 2016年10月28日(金)
■会場: 六本木アカデミーヒルズ49 オーディトリアム
■登壇者: 細田守監督、トーマス・ナム、マリオン・クロムファス、イヴ・モンマイヨール、氷川竜介

【ドキュメンタリー】NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
『アニメーション映画監督 細田守の仕事 “希望を灯す、魂の映画” 』(2015年)

NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 『アニメーション映画監督・細田守』

この記事の著者

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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