映画『世界が愛した料理人』公開記念イベントレポート
【写真】映画『世界が愛した料理人』公開記念イベント エネコ・アチャ (Eneko Atxa)

【画像】映画『世界が愛した料理人』タイトルロゴ

 

スペイン史上最年少三ツ星シェフのお店『エネコ東京』
エネコ・アチャ来日!試食会&トークショー開催!

第67回ベルリン国際映画祭で上映され、話題を集めた究極の美食ドキュメンタリー映画『世界が愛した料理人』(原題: SOUL)がついに日本公開となった。

本作は、スペイン史上最年少でミシュラン三ツ星を獲得した天才料理人エネコ・アチャが料理の真髄、魂とは何かを求めるため、「すきやばし次郎」をはじめとする日本の名店を巡る美食探求ドキュメンタリー。公開を記念してエネコ・アチャシェフが来日。東京都港区の西麻布に1年前にオープンしたENEKO Tokyo(エネコ東京)にて開催された試食会とトークショーの模様をお届けする。

まずは、ENEKO Tokyo(エネコ東京)の一階にある「Green House」へ。2種の葡萄を使用して作られている「ゴルカ・イサギレ・チャコリ・ブランコ」をウェルカムドリンクに、「ピクニック」と名付けられた前菜が用意されていた。

 

「鰻とアンチョビのブリオッシュ」、レモンとフォアグラをムース状に掛け合わせた「レモングラ」、食べるように味わえるカクテル「カイピリーチャ」の3種がまさにピクニックBOXのように収められており、メインを楽しむ前に心をリラックスさせてくれる遊び心ある演出だ。真っ赤なトマトのような「カイピリーチャ」は口に含むとにパキンと割れ、瞬間ジューシーなカクテルが口の中一杯に広がって面白い。

 

2階ダイニングでは「オマール海老のコーヒーバター風味」や「バスク風キノコ」など、エネコ東京ならではの魅力的なバスク料理メニューの数々が並んだ。「バスク風キノコ」は細切りにされたエリンギをパスタに見立てオリーブオイルで煮込み、そこへ茸のエマルジョンソースをたっぷりと。 両脇を固めるのは卵黄の天婦羅である。

 

そして地下のメインホールへと移動し、今回のイベントに合わせ来日した天才料理人エネコ・アチャシェフが我々の目の前で「有機卵とトリュフ」を仕上げる様を見せてくれた。卵の黄身を半分ほど吸い上げ、その後、トリュフを実に3時間蒸して抽出したソースであるトリュフソースを卵黄の中に注入していく。こうすることで、卵を新鮮な状態で提供することが出来るのだという。食べた瞬間に卵黄の膜が弾け、濃厚な卵が極上のトリュフの風味と共に口の中に溶けてゆく。

 

試食会の後、映画『世界が愛した料理人』のダイジェスト上映会があり、その後、エネコシェフのトークイベントがスタートした。会場からの質問に懇切丁寧に、時にユーモラスに答え会場は終始和やかな雰囲気に包まれていた。

【写真】映画『世界が愛した料理人』公開記念イベント エネコ・アチャ (Eneko Atxa)

―― バスク料理について

バスク料理といえば一番特徴なのが味ですね。バスク地方の自然豊かな環境、伝統料理を大事にしているバスク人は、伝統を重んじながらも新しい料理を作りたいという意志があります。料理は言葉がないですが、料理を通して私たちの魂を世界へ伝えることができるのです。

―― 先ほど試食させていただいた「有機卵とトリュフ」と「ピクニック」について解説を改めてお聞かせください。

美味しいお料理を食べるのは素晴らしいことです。しかし、それだけというのはちょっと終わりにして、新しいエクスペリエンスをまずは体験してほしかった。インテリアガーデンで自然を感じながらお客様にリラックスしていただきたくて、それには「ピクニック」が良いと思いました。開放感があってリラックスできて、素晴らしいと思っていますよ。「有機卵とトリュフ」は生産者へのリスペクトとして考えました。スペインの私のお店である「アスルメンディ」の近くに生産者が住んでいます。彼の卵が素晴らしく、その素晴らしさを伝えたかったのです。卵とトリュフを別々にすると卵が古くなってしまう。生産者へのリスペクトとして、「トリュフ卵」の調理方法でお出しすることにしたのです。

 

―― どんな料理がお好きですか?

私としては世界のどこの料理も素晴らしいと感じています。「自分の魂から出てくる料理」というのは、お母さんやおばあさんが教えてくれた料理こそがそれにあたると思います。魂を感じる料理を世界に広げていきたい。

―― 「アスルメンディ」はサスティナブルな機能を有する最先端なレストランと評されていますが、ご自身はご自分のお店についてどうお考えですか?

社会に貢献できていると考えています。土地は、自然は私たち人間が支配しているものではないのです。次代に生きる人や生物に遺したい想いでいっぱいです。

【画像】映画『世界が愛した料理人』場面カット

―― 先日、惜しくもお亡くなりになられたジョエル・ロブション氏から料理についてインスピレーションを受けたことはありますか?

ロブション氏は私にとって本当に素晴らしい人でした。レシピだけでなく、人間として素晴らしい人だったのです。彼のような料理人はもういないと思いますが、フランスだけじゃなくいろんな国に店舗をオープンすることで彼の優しさ、彼の料理を味わえるのは素晴らしいと思っています。

―― 他に影響を受けた料理人は?

いろんな料理人から影響を受けました。この作品に出ている方々だけじゃなく、新聞にも出てない方からも影響を受けましたよ。自分の家族のために料理をする人など、友人からも影響を受けているのです。彼らのおかげで今の自分が出来たと言っても過言じゃないですね。素晴らしい料理人になっていくと思える家族のような人たちばかりです。彼らが次の世代に教えていく姿を見て感動しています。

【画像】映画『世界が愛した料理人』場面カット

―― エネコ氏が料理、そして日本料理とバスク料理について思うことはありますか?

日本の料理は自然と風景を大切にしていて、そこがバスク料理と似ていると思っています。私にとって料理とは人生における儀式であり、幸せを表現するための言葉なのです。土地や風景なしに料理はできません。

―― 最後に、この映画についてメッセージをお願いいたします。

この映画をご覧になる方々へ。楽しんでいただければ幸いです。そして、エネコ東京でも、「アスルメンディ」でもぜひ両方で我々の料理を楽しんでくれればと思います。

【写真】映画『世界が愛した料理人』公開記念イベント エネコ・アチャ (Eneko Atxa)

映画『世界が愛した料理人』は、9月22日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中である。

[記者: 蒼山 隆之 / スチール撮影: 坂本 貴光]

プロフィール

エネコ・アチャ (Eneko Atxa)

1977年9月14日生まれ。スペインバスク地方ビスカヤ県出身。バスク州ビスカヤ県ララベツにあるレストラン「アスルメンディ」のオーナーシェフ。 “故郷を深く愛する繊細な人間”と自らを表現するエネコ・アチャは、美食を重視するバスク地方の料理界で頭角を現した若手シェフの1人。偉大なスペイン人シェフの多くがそうだったように、祖母と母の影響から料理と食の世界に魅了された。彼女たちは長い時間をかけて、エネコに食材選びの極意とバスク料理の伝統を教え込んだと言う。2007年にミシュラン一ツ星を獲得。2012年にはスペイン史上最年少の三ツ星シェフになった。2017年、東京六本木にてエネコ東京をオープン。

【画像】映画『世界が愛した料理人』エネコ・アチャ (Eneko Atxa)

小野 二郎 (Jiro Ono)

1925年10月27日生まれ。静岡県浜松市出身。2007年に出版されたミシュランガイド東京で三ツ星を獲得。以来現在まで連続してミシュラン三ツ星を獲得し続けている東京銀座の寿司店“すきやばし次郎”初代店主。ミシュラン史上最高齢の三ツ星料理人。世界中の一流シェフたちから寿司職人の生ける伝説として一目置かれており、革新的手法で作り出されるモダンな寿司は高い評価を得ている。2014年、黄綬褒章を受賞。

【画像】映画『世界が愛した料理人』小野 二郎 (Jiro Ono)

映画『世界が愛した料理人』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『世界が愛した料理人』ポスタービジュアル

《ストーリー》

スペインとフランスにまたがるバスク地方。そこはミシュラン星付きレストランも多く、世界的に美食の街として知られる。バスク州ビルバオ近郊の名店「アスルメンディ」をプロデュースする料理人エネコ・アチャ。スペイン史上最年少でミシュラン三ツ星を獲得した彼の華麗でサステナブル(持続可能)な料理には世界中から多くの顧客が集まる。昨年は六本木に「エネコ東京」もオープンさせた。農園とレストランが隣接する独特の環境の中で、料理を極めることに命を懸ける彼は、最高の料理に必要なもの、料理に込めるべき魂とは何かを求めるため、東京・銀座にある「すきやばし次郎」の主人、小野二郎に会いに行く旅に出た…。サンパウ、ジョエル・ロブションなど世界的な名店の創作の秘密も紐解きながら、エネコが目指す究極の料理の姿が次第に明らかになる。

 
監督: アンヘル・パラ、ホセ・アントニオ・ブランコ
 
出演: イエネコ・アチャ「アスルメンディ」、マルティン・ベラサテギ「ラサルネ」、カルメ・ルスカイェーダ「サンパウ」、ジョエル・ロブション「ジョエル・ロブション」、石田廣義・石田登美子「壬生」、山本征治「龍吟」、小野二郎・小野禎一「すきやばし次郎」、服部幸應、マッキー牧元、マイケル・エリス「ミシュランガイド」
 
2016年 / 75分 / 原題: SOUL / スペイン / 5.1ch / ビスタ / カラー
配給・宣伝: アンプラグド
© Copyright Festimania Pictures Nasa Producciones, All Rights Reserved.
 
2018年9月22日(土)より
YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開!
 
映画公式サイト
 

公式Twitter: @ryori_sekai

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