映画『デイアンドナイト』
Blu-ray&DVD発売記念トークイベント
山田孝之、阿部進之介、藤井道人監督ら製作メンバーが勢ぞろい!!
「10年後にも観てほしい」公開後も止まないアツい思いを告白!
俳優・山田孝之初の全面プロデュース作品として話題を集めた映画『デイアンドナイト』。「人間の善と悪」をテーマに、混沌とした現代で強く生きることの厳しさを描いた同作は、公開後約11ヶ月に渡るロングランを記録している。監督は第32回日刊スポーツ映画大賞で作品賞を受賞した映画『新聞記者』などを手掛け、近々初期作品の短編集も発売予定の藤井道人。企画・原案は主演も務める阿部進之介。今回初めてプロデューサーとして参加した山田孝之は、脚本開発・ロケハン・キャストオーディション・資金集めなどの裏方に専念し、総製作期間6年という長い年月をかけて『デイアンドナイト』を完成させた。また、山田が審査員として参加したオーディションでは、NHK連続テレビ小説「なつぞら」の出演でも話題の女優・清原果耶が抜擢。陰のあるヒロインを熱演し、同じく第32回日刊スポーツ映画大賞で新人賞を受賞している。
話題の絶えない同作のBlu-ray&DVDが12月13日(金)に発売。12月23日(月)に、「HMV BOOKS SHIBUYA」6Fイベントスペースで発売を記念したトークイベントが実施され、藤井道人監督、山田孝之、プロデューサーの伊藤主税に加え、急遽阿部進之介と脚本家の小寺和久が登壇!互いがほとばしるような情熱を傾け続けたこの映画への熱い思いと、撮影の裏側を語り合った。
トークイベントは2部に分けて開催。ここでは20:00から行われた第2部の様子をお届けする。
藤井監督、秋田イベントでの“失敗トーク”を山田に謝罪
今回、司会を務めたのはプロデューサーの伊藤。伊藤の呼び込みに応じて登壇者が1人づつ登場する予定が、早速呼び込みの順番を間違える伊藤の少しとぼけた進行に、客も登壇者も笑顔でイベントがスタートした。
最初に伊藤からこの日急遽阿部と小寺の登壇が決まったことが伝えられ、山田と「初期メンバーの、この5人で動き出しましたね」と感慨深げに顔を見合わせた。11月からはアップリンク渋谷で、山田を中心に映画製作の裏側を収めたドキュメンタリー『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain,No Gain」』と今作の日替わり上映が行われたことが告げられ、「観に行った人!」と呼びかけると観客の約半分が挙手。他の上映館にも複数回足を運んだ熱心な観客も現れ登壇者は顔をほころばせた。
山田から、前日に(撮影地となった)秋田でトークイベントが開催されたことが報告され、登壇した藤井監督、阿部、伊藤に現地の様子についての質問が。藤井監督が「雪が降ってなかったですね」と答えると、阿部も「(撮影で)あんなに苦しめられた雪に出会わなかった」と同意。実は映画内で、当初雪が降る予定ではない場面の撮影で止む終えずに雪の中撮った場面があったと明かされた。しかし山田が「結果的にビジュアル的には雪が降って良かったじゃない」と語るようにプラスに転じたという。
藤井監督は秋田でも雪についての質問があったと話し、「(撮影時)山田さんと雪降ってるけどどうする?ってやり取りをしたときに、山田さんから言われたことをかなり端的に伝えてしまった。もし記事に書かれたらごめんなさい」と突然山田に謝罪。懸案の場面は雪が降っている想定はしていないので「止むまで待ちたい」と言ったところ山田にいろいろと説得をされたが、トークショーでは「みんな忙しいから、撮って」と雑に言われたように話してしまい、「それは端折りすぎだろ!」と全員から突っ込まれたという。
「風と風車」のメタファーは、当初からの揺るがない根幹
作品にまつわる多数のイベントに出演してきた伊藤によると、各地で物語の大きなターニングポイントとなるが詳細が明かされない滝のシーンについて質問が多かったという。ずっと答えてこなかったその質問については、山田から「僕らの中でも答えというのは出していない」という観客の想像の余地であることが伝えられた。
さらに作品内の印象的なモチーフである「風車」に関する話題も。伊藤が「善と悪はなぜ風車なのですか?」という質問をたくさんもらったと話すと、山田がすかさず「あれは風力発電の会社から藤井君がお金をもらった」と返し会場は爆笑。藤井監督も「結構ビジネスマンだから」と話に乗っかり、「そういえば藤井さん引っ越したよね」「あれは社宅ですよ」など、全員でひとしきり盛り上がる一幕に。
実際は企画を始めたときから「風」を使う発想があったといい、山田は「阿部ちゃんが『風はどこから吹いてくるのか。悪はどこから生まれてくるのか』と話していたのを覚えてる」と言うと、阿部も「そうですね。善と悪はどこからやってくるのか、そのメタファーとしての風」と映画のテーマは当初から揺るがなかったことを伝えた。
続いて小寺に長い脚本開発の苦労やエピソードへの質問が。「さっきも楽屋で(他の登壇者が)この作品についてずっと話しているのを聞き、本当にすごいと思った。作っているときもそうだし、出来上がってからもこのチームいろいろな展開をずっと考えていて本当に手作り感が半端ない。まだ続いている感じがして、正直『まだやってんねや』って」と話し、会場の笑いを誘った。
伊藤は構成を固めるまでが一番苦労したといい、「構成が固まったら、山田さんと阿部さんがせりふを考えて藤井さんがチェックという形でするする進んでいった」と製作の過程を回想。山田はそのとき藤井監督にせりふを「切られまくった」と明かし、「あれ?またセリフなくなってるよってことが何度も。最終的には『このせりふは必要なんだよ!』って半分怒ってた」とチームで試行錯誤した様子を笑顔で語った。
「人生を進ませてくれた作品」「この先何をすべきかが見えた」
製作者たちが本音で語る『デイアンドナイト』の好きなところ
続いて登壇者が1人ずつ今作の好きなところを語ることに。
トップバッターの小寺はもともと“ストーリーの見えない映画”が好きだといい「どこから発想して、どう作ったのかが分からない。どういう話ってひと言で言えないところがいい」と回答。続く藤井監督は「あまり言ってないけど、自分のために撮っていた」と告白。「自分の中で整理のつかない感情を(阿部演じる主人公の)明石君やキャラクターにぶつけた。そう思うと『デイアンドナイト』を撮ったことで自分の人生が少し進みました。風車についても2011年以降自分が悶々と抱えていたものが少しだけ先に進んだ感覚」と人生の中での一つのきっかけになったことを伝えた。
阿部は最初にやりたかったことをやれたと満足した様子。「(物事の)“片側”だけしか描かれない作品や、普段の生活でもどちらか一方だけしか考えていないような状況が好きではなくて、その違和感をこの映画で表現できたことが本当にうれしかった」という。山田もまた、この映画でたくさんの気づきがあったと話し「ある意味この映画をやったことで大きなブレーキがかかりました。立ち止まらされたというか、止まって何をすべきかがめちゃくちゃ見えてきた。だから今めちゃくちゃやっています」とその結果が現在に生かされていることを伝えた。
伊藤はそんな山田に対し「こんなに相談できるプロデューサーに会えたのが初めてで、そこで想像力も、実現できることも広がった。それに自分のことも冷静に見れるようになった」と感謝。阿部が「いろいろな面で全員に大きなものをもたらした作品」と続くと山田も「最初の作品ということもあるけど、今後プロデューサーをしてもここまで入り込む作品はないと思う」と返答。さらに伊藤が「山田さんのいいところは、作品を作ってみて、学んだことを次はどう生かそうかと考え続けるところ。その姿勢には学びが多かったです」と締めくくった。
観客とのQ&Aコーナー
阿部「映画の発想は藤井監督との”お互いを知る”会話から」
イベントの後半には観客とのQ&Aが。「この映画の発想はどこから生まれた?」という質問には企画の阿部が「最初は自分の中のエッセンスを絞った感覚的な提案だった」と回答。藤井監督と出会った当初、お互いのことを知るためにとりとめもない会話をしたことから藤井監督がインスピレーションを膨らませたといい「役者として関わる作品作りの中でたまっていたものを吐き出す場になった。いろいろな思いがつまっています」と当時の様子を思い返した。
「この作品を超えて来年以降にやりたいこと」の質問に対しては、小寺が「役者と脚本家が(今作のように)協力して作ったほうが作品がふくらんでいくと気づいた。その方法が日本映画界に広がるようにしていきたい」、藤井監督が「仕事は“平常運転”ですが、それ以外の場で下の世代がこんな風に作品作りをできる環境作りできれば」、阿部が「具体的なものはないけれど、芝居もしたいし映画を作りたいし、もっと成長していきたい気持ち」と真摯に回答。山田と伊藤はすでにやらなくちゃいけないことがたくさんあり「健康に気をつけたい」「週に一日は休めるように」とさらに走り続ける1年になることを感じさせた。
最後に企画・原案・主演を務めた阿部が観客にメッセージ。「DVDもBlu-rayも出て、一つ区切りがついたような感じになっていますが、この映画を人生の片隅に置いていただいて、たまに思い出して観てもらったり、これから長いお付き合いをしてもらえるとたいへんうれしいです。僕自身10年ごとに映画を見てその作品に対する思いが変わることもあります。僕は正直まだこの映画を客観的に観られないですが、10年後に観るのが楽しみです。みなさんにもそんな風にこれからお側に置いてくれたらうれしいです。本当にありがとうございました」と改めて『デイアンドナイト』に対する思いを打ち明け、会場からは惜しみない拍手が贈られた。
表裏一体の“善と悪”。人間本質を抉る普遍的なテーマを描ききった映画『デイアンドナイト』のBlu-ray&DVDは全国で好評発売中。
[スチール撮影: 坂本 貴光 / 記者: 深海 ワタル]
イベント情報
映画『デイアンドナイト』Blu-ray&DVD発売記念トークイベント■開催日: 2019年12月23日(月) |
映画『デイアンドナイト』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》善と悪はどこからやってくるのか。 |
監督: 藤井道人
企画・原案: 阿部進之介
脚本: 藤井道人/小寺和久/山田孝之
公式Facebook: @映画「デイアンドナイト」