第38回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 映画『金髪』Q&A レポート
【写真】第38回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 映画『金髪』Q&A (岩田剛典、坂下雄一郎監督)

第38回 東京国際映画祭(TIFF) 
コンペティション部門 
映画『金髪』Q&A 

岩田剛典が明かす、“絶妙にダサい”表情の裏側とは?
坂下雄一郎監督は映画業界の課題に向けた率直な想いを吐露

10月28日(火)、第38回東京国際映画祭(TIFF)コンペティション部門にて、映画『金髪』の上映が丸の内ピカデリー2で行われ、上映後のQ&Aに主演の岩田剛典坂下雄一郎監督が登壇。本作を鑑賞し終えたばかりの熱気あふれる会場で、岩田は初の教師役へのアプローチや、役を通して自身が感じた社会への視点を、坂下監督は映画現場の課題に向けた想いを真摯に語った。

【写真】第38回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 映画『金髪』Q&A (岩田剛典、坂下雄一郎監督)

母校の元教員から質問!岩田剛典、初の教師役へのアプローチ

Q&Aではまず、岩田の母校である慶應高校で教員をしていたという男性から質問が。「岩田さんが教員の役を演じるにあたって、念頭に描いた先生はいらっしゃったか」と問われると、岩田は「ええっ!?」と思わず驚きの声を上げた。

その後、特定の人物を思い浮かべたわけではないとしながらも、これまでの学生生活で出会った先生方をベースにしつつ、何よりも脚本に助けられたと語り、「本当に脚本がすべて。僕が演じた市川という役は、全部脚本が作ってくれたと言っても過言ではないくらい、細かい描写まで詰めて作ってくださっていました」と、役作りの核が脚本にあったことを伝えた。

【写真】第38回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 映画『金髪』Q&A (岩田剛典/三代目JSB)

“絶妙にダサい”表情の秘密は「何も考えていない」こと?

別の観客からは、普段のクールなイメージとはかけ離れた、どこか頼りなく“絶妙にダサい”市川先生の表情がどのように作られたのか、という質問が寄せられた。

【画像】映画『金髪』場面カット1

これに対し岩田は、「(表情を)こうしようと思った時間は全くなかったです。その時の感情で、皆さんに届いていた表情になっている」と、計算ではなく自然な演技から生まれたものであることを明かした。さらに、「僕は現場でもあまりモニターチェックをしないので、正直、自分がどんな顔をしているか全然わかっていないんです。それはもう監督が引き出してくださったとしか言いようがないです」と話し、坂下監督への信頼をのぞかせた。

その坂下監督は自身の演出について、「僕自身、役者さんとあまり喋らなかったり、コミュニケーションが少なめなので、なるべくシナリオのト書き(脚本上の指示)には『この時、人物がどう思っているか』を多めに書くようにしているんです」と、独特なスタイルを告白。脚本に細やかな心情を書き込むことで、俳優陣の演技を引き出していると語った。

【写真】第38回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 映画『金髪』Q&A (坂下雄一郎監督)

「年功序列」と「労働環境」岩田剛典と坂下監督が語る“理不尽な規則”

作中で描かれる「校則」にちなみ、「最近気づいた理不尽な規則はありますか?」という質問が飛ぶと、二人はそれぞれの視点から回答した。

坂下監督は映画業界の慣習に触れ、「労働環境、もっと言うと報酬の支払いに関して、割とざっくりとした取り決めで始まり、いつ入るかも決まらずに進む。昔からある慣習ですが、最近は業界内でもよく話題に上がっていますし、僕も変えたほうがいいなと思いながらやっています」と、本映画祭でも提起された業界が抱える課題について言及した。

一方、岩田は「無意識に存在する、年功序列みたいなもの」と、日本社会に根付く“暗黙のルール”を提起。「年上の方を敬うのは常識ではありますが、ときとして下が思ったことをはっきり発言できない“風通しの悪い環境”が生まれることがある。それは、ルールではないけれど、皆さんの暗黙の了解になってしまっている。もう少しフラットにみんなが平等に発言したり行動できるのが、本来の労働環境ではないかなと思います」と、その意図を伝えた。

さらに自身の経験と重ね合わせ、「反面教師じゃないですけど、この映画で僕自身ハッとさせられました」とコメント。「気づいたら後輩がいっぱいできていて、先輩ぶるわけじゃないにせよ、気を遣われて本音を言ってもらえないことで、僕が何も気づけていない状況が生まれているんじゃないかと。是非その部分も、この作品で注目していただきたいです」と、作品が自身を見つめ直すきっかけにもなったことを伝えた。

「失敗を恐れずに挑戦して」夢を追う若者へ、岩田剛典からのエール

最後に指名されたのは、“金髪”の女性。看護師国家試験に向けて勉強しているという看護学生は「同じ目標や夢に向かって頑張っている若い世代へメッセージをいただけますか」とコメントした。

これに対し岩田は、「僕から言えるのは、失敗を恐れずに挑戦してほしいなということです」と即答。「自分に自信が持てない、練習量の少なさ、時間の無さ、年齢…、挑戦しない理由って、本当に簡単に見つかる。でもそこで諦めちゃうと、何も生まれない。やってみて、失敗して、自分に合うか合わないかを含めて知るっていうことが、人生かなとも思います」と自身の経験を思い返すようにしながら続けた。

そして、「失敗はいつでも、最終的に『失敗じゃなかった』と思えるようなことに変えられる。だから、『失敗なんてないんだよ』っていうぐらいの気持ちでチャレンジしていただきたいなと思います」と、温かく、力強いエールを送り、Q&Aセッションを締めくくった。

[スチール撮影: Cinema Art Online 編集部 / 記者: 深海 ワタル]

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イベント情報

第38回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 
映画『金髪』Q&A

■開催日: 2025年11月4日(火)
■会場: 丸の内ピカデリー2
■登壇者: 岩田剛典、坂下雄一郎(監督)
■MC: 奥浜レイラ
■英語通訳: 冨田香織

【写真】第38回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 映画『金髪』Q&A (岩田剛典、坂下雄一郎監督)

映画『金髪』予告篇🎞

映画作品情報

【画像】映画『金髪』ポスタービジュアル

《ストーリー》

その日、中学校教師・市川の人生を大きく変える出来事が起きた。一つは担任クラスの生徒数十人が髪を金色に染めて登校してきたこと。そしてもう一つは、彼女から結婚の話を切り出されたこと。マスコミやネット、さらには文科省まで巻き込み大騒動になる“金髪デモ”と、日々の愚痴を聞いた彼女からの辛辣な説教で板挟みになる市川は、窮地を脱するために“金髪デモ”を計画した張本人・板緑と手を組み、とある作戦に打って出る⋯。仕事の問題と人生の決断が一挙に押し寄せた市川は、いつまでも若者で何事も順風満帆だと思っている“イタいおとな”から“マトモな大人”へと成長し、全ての試練を乗り越えられるのか!?

 
出演: 岩田剛典、白鳥玉季、門脇麦、山田真歩、田村健太郎、内田慈
 
監督・脚本: 坂下雄一郎
音楽: 世武裕子
 
配給: クロックワークス
 
2025年 / 日本 / カラー / アメリカンビスタ / 5.1ch / 103分 / 映倫区分:G
 
© 2025「金髪」製作委員会
 
2025年11月21日(金) 全国公開!
 
映画公式サイト
 
公式X: @kinpatsumovie
公式ハッシュタグ: #映画金髪
 

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この記事の著者

深海 ワタルエディター/ライター

ビジネスメディア、情報誌、ITメディア他幅広い媒体で執筆・編集を担当するも、得意分野は一貫して「人」。単独・対談・鼎談含め数多くのインタビュー記事を手掛ける。
エンタメジャンルのインタビュー実績は堤真一、永瀬正敏、大森南朋、北村一輝、斎藤工、菅田将暉、山田涼介、中川大志、柴咲コウ、北川景子、吉田羊、中谷美紀、行定勲監督、大森立嗣監督、藤井道人監督ほか60人超。作品に内包されたテーマに切り込み、その捉え方・アプローチ等を通してインタビュイーの信念や感性、人柄を深堀りしていく記事で評価を得る。

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