第30回 東京国際映画祭(TIFF) コンペティション審査委員記者会見レポート
【写真】第30回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 審査委員記者会見

第30回 東京国際映画祭(TIFF)開幕!
コンペティション部門 審査委員記者会見

永瀬正敏「全ての作品にグランプリを与えないことだけは気をつけたい」

10月26日(木)、華やかなレッドカーペットで幕をあげた記念すべき第30回東京国際映画祭(30th Tokyo Inetnational Film Festival、略称: TIFF)のオープニング翌日、メイン会場であるTOHOシネマズ 六本木ヒルズにてコンペティショ ン部門の審査委員記者会見が行われ、審査委員長であるトミー・リー・ジョーンズ(俳優/監督)をはじめ、レザ・ミルキャリミ(映画監督/脚本家/プロデューサー)、ヴィッキー・チャオ(趙薇)(女優/映画監督)、マルタン・プロヴォ(映画監督)、永瀬正敏(俳優)ら、国際審査委員が勢ぞろいした。

30周年の節目を迎える今回のコンペティション部門は、88の国と地域から1,538本の応募があり、厳正な予備審査を経た15本の作品が出品されている。アメリカ、イラン、中国、フランスそして日本の監督や俳優で構成された彼ら国際審査委員5名のもと、東京グランプリをはじめとする各賞が選出され、クロージングセレモニーで発表される。

記者会見レポート

記者会見は、国際審査委員長であるトミー・リー・ジョーンズ氏の挨拶からスタートした。

審査委員長 トミー・リー・ジョーンズ 挨拶

皆さんこんにちは、ここに来ることができてとても光栄です。今回私は審査委員メンバーの中で、今回唯一のアメリカ人ですね。そして、唯一の中国人、唯一のイラン人、日本人、そしてフランス人審査委員が集まりました。私たちは世界を代表しているわけではないですし、それがいいことだと思っています。お互い出会って、いま仲が良くなってきているところですが、この期間内にそれぞれが望む以上にお互いのことを知ることになるかもしれません。私にとってはとても嬉しい冒険、経験になる時間となると思っています。これは皆さん全員の意見を代表して言うわけではないですが、願わくば審査委員として望むことは、とてもうまく作られている映画であったり、観客に強制することなく、それぞれの理解が深まることが出来るような作品を観たいと思っています。日々この一週間、楽しみながら映画を観ていければと思っています。

審査委員 レザ・ミルキャリミ 挨拶

参加させていただくことができてとても嬉しく思っています。著名な映画祭、そして美しいこの国に来ることができて光栄です。以前、私は映画祭の方にただ参加するいうことはしたことがあるのですが、今回は全く違う状況で、映画を作る側から映画を審査する側という、とても難しい立場として来ているなという気持ちです。なぜなら芸術作品に対して最善な結果の出し方、審査の仕方が非常に難しいと思いますし、色々な要素によって異なることもありますが、とにかく私としましては集中をして映画としての価値を見出すことを最善として 取り組みたいと思っております。

審査委員 レザ・ミルキャリミ

審査委員 ヴィッキー・チャオ 挨拶

今回の映画祭に参加することが出来て大変嬉しく思っております。観客の皆さんと我々の為に沢山のジャンルの、まさに多種多様な映画を選んでくださってとても光栄です。今回の仕事は、観客の皆様と我々が一緒に映画の旅をしようというものだと思っております。審査委員のパートナーの皆さんと映画を一生懸命観て、最適な判断をしたいと思っております。最高の映画をお勧めしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【写真】審査委員 ヴィッキー・チャオ

審査委員 マルタン・プロヴォ 挨拶

皆様、こんにちは。他の方と同じ内容となってしまいますが私も今回この場にいられることを大変光栄に思っております。ある意味フランス代表として日本にこのような立場で来ることが出来たことも感謝しております。このように映画を審査させていただくという立場は非常に責任あるものと思っております。客観的であろうと思ってますし、作品の裏側にどういった意味合いが含まれているか世界でどういったことが起こっているのか、温度感、そういったものを体感できればと思っております。様々な違った世界観があると思いますが、その中から我々がジャッジをして、世界に知らしめていくに値する作品を見いだせたらと思っております。

【写真】審査委員 マルタン・プロヴォ

審査委員 永瀬正敏 挨拶

皆さんこんにちは!30回目を迎える記念の年に、審査委員として来ることができてとても光栄に思っております。コンペティション部門に選ばれているこれら15作品は、もう選ばれている現時点で既に素晴らしいともう証明されたと思うので、あとは、、なんでしょう僕が気をつけることは全部の作品にグランプリを与えないようにしようと(笑)。観客の皆さんの目でもって、そして作り手の目もありつつ、素晴らしい作品を選べればと思います。

【写真】審査委員 永瀬正敏

司会: そうですね。永瀬さん、全部の作品にはグランプリをあげないでください(笑)。

国際審査委員質疑応答

一人一人の丁寧な挨拶の後、続いて質疑応答の時間が設けられた。

―― 作品を審査する際、改めてどこをポイントに審査していきたいとお考えか、皆さんそれぞれ聞かせてください。

レザ・ミルキャリミ: 私はシネマティックの価値観を第一に、そのあとは内容について注目したいと思います。

ヴィッキー・チャオ: 今回のセレクションはいろんな国からいろんな映画を選んできたわけですが、文化背景 も全く違う映画がありますね。一度映画のあらすじ紹介をそれぞれ読んだのですが、それぞれの映画の方向性や、全体としての映画の完成度を重要視しています。

マルタン・プロヴォ: 大変難しい質問ですが、自分としては審査委員という役割を一旦忘れて、なるべくシンプルにオープンな心をもって、一観客として映画を観ていきたい。願わくば、全ての作品から全ての人に共通して響くものがあることを願っています。

永瀬正敏: 僕もマルタンと一緒です。自分の心がどれぐらい動いたか、衝撃を受けたか?その気持ちを審査委員の方々と共有して、審査していければと思っています。

トミー・リー・ジョーンズ:  ここで5人の異なる視点を持つ審査委員がいますが、一緒の視点も同時に持ち合わせていると思っています。とにかく完成度の高い映画を求めていますし、物語の整合性が取れているもの、色の使い方ですとか、人間味あふれるもの、ここに集まっている審査委員のメンバーは誰も政治的な意図を持っていませんので、誠実に、深い関心を持って人間の持つ知的な、また感情的な作品ひとつひとつをしっかりと観ていきたいと考えています。

【写真】審査委員長 トミー・リー・ジョーンズ

―― 映画の定義についてお聞きしたい。皆さんが映画に対して思っていることを短く述べていただきたい。

トミー・リー・ジョーンズ: 映画というものが一言で語れるものであれば我々は誰一人カメラを回しておりません。ゴダールの作品でそれが表現されていますので、ご参照ください。

レザ・ミルキャリミ: 人生を一言で表現することは無理がありますよね。映画も一緒です。

ヴィッキー・チャオ: 基本的に二人と同感ですけれども、現実のこの社会が一つの世界。クリエイターが作る映画もまた一つの世界だと思っていて、それが多くの方に受け入れられれば、これもまた世界として成り立っているのではないかなと考えています。

マルタン・プロヴォ: 映画というものは「目覚め、覚醒」と表現したいと思います。

永瀬正敏: もう皆さん言ってしまいましたよね。。。映画というものの可能性をとにかく僕は信じています。

トミー・リー・ジョーンズ: 最後に、あえて一言でいいますと、「お金」です。映画を作るにはとても多くのお金が必要になります。

第30回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門 審査委員記者会見

最後のトミー・リー・ジョーンズ氏によるジョーク交じりのコメントで会場が沸いたあと、5人揃ってのフォトセッションが行われ、終始和やかな雰囲気の中、コンペティション部門記者会見は幕を下ろした。

[記者: 蒼山 隆之 / 編集: Cinema Art Online UK]
 

記者会見概要

■開催日: 2017年10月26日(木)
■会場: TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン2
■登壇者: トミー・リー・ジョーンズ(俳優/監督)、マルタン・プロヴォ(映画監督)、レザ・ミルキャリミ(映画監督/脚本家/プロデューサー)、ヴィッキー・チャオ(趙薇)(女優/映画監督)、永瀬正敏(俳優)

この記事の著者

蒼山 隆之アーティスト/インタビュア/ライター

映画俳優や監督のインタビュー、映画イベントのレポートを主に担当。
東京都内近郊エリアであれば、何処にでも自転車で赴く(電車や車は滅多に利用しない)スプリンター。

そのフットワークを活かし、忙しい中でもここぞという時は取材現場に駆けつけ、その時しかないイベントを現地から発信したり、映画人の作品へ対する想いを発信するお手伝いをしている。

また、自身も表現者として精力的に活動を展開。

マグマ、波、雷など、自然現象から受けたインスピレーションをブルーペイントを用いたアートで表現する「Blue Painter」として、数々の絵画作品を制作。銀座、青山、赤坂などで開催する個展を通じて発表している。

俳優の他、映画プロデューサーやインテリアデザイナーと幅広い顔を持つブラッド・ピットをこよなく尊敬している。

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