満島ひかり4年ぶりの単独映画主演!
戦時中に神の島で出会った小説家夫婦の物語。
映画『海辺の生と死』は、島尾敏雄の傑作「死の棘」(新潮社)や「島の果て」(集英社)、妻・島尾ミホの「海辺の生と死」(中央公論新社)などを織り交ぜた作品である。太平洋戦争の末期に、奄美群島・加計呂麻島で出会った二人が、後に小説家として描いた鮮烈な出会いとせつない恋の物語を、若い頃から彼らの小説を愛読していたという『アレノ』(2015年)の越川道夫監督が加計呂麻島を舞台に映画化した。
自然や神、人々が共存するこの島に畏敬の念を抱いていたという越川監督は、島との調和をはかりながら、『海辺の生と死』の空気感を表現している。島やそこに存在する大自然、島の人々に対して、越川監督が愛情と感謝の気持ちをもって撮影しているのが伝わってくる。
奄美大島にルーツがあるという主演の満島ひかりは、一人の人間としてトエ役に関わっている。満島は、戦時中の愛する人へのせつなくて狂おしい思いをトエを通して演じるだけでなく、撮影前には島の生態系を学び、島を守る意志をもちながら、裏方としても、島の人々との人間関係作りや撮影の準備などの手伝いもしたという。
劇中でとても印象深いのが、満島のイントネーションである。満島は、原作者である島尾夫婦の長男で写真家の島尾伸三氏に脚本のトエのセリフを吹き込んでもらい練習したという。また、トエが歌う島唄は、奄美島唄伝承の第一人者・朝崎郁恵氏から、口伝えで教わっている。大自然の映像とともに聴こえる言葉や音の調べも、観る者の心情を大きく揺さぶるだろう。
『海辺の生と死』は、日常を紡ぐ日々の大切さが丁寧に撮られており、戦後72年が経ち、愛する人と明日また会える平和な毎日に、心から感謝の思いがあふれるきっかけとなるだろう。
《ストーリー》
昭和19年12月、奄美のカゲロウ島で、国民学校の教員として子どもたちを教える大平トヨ(満島ひかり)は、新しく島に駐屯してきた海軍特攻艇・隊長の朔中尉(永山絢斗)と出会う。朔中尉が兵隊の教育用に本を島で慈父(うんじゅ)と慕われるトエの父(津嘉山正種)から借りることになり、トエと朔中尉は知り合い、お互いに好意を抱くようになる。軍歌よりも島唄に興味を示し、島の子どもたちと仲良くなっていく朔中尉に、トエの心は惹かれて、二人は逢瀬を重ねるようになる。そのような中、沖縄が陥落し、広島にも新型爆弾が落とされて、とうとう朔中尉が出撃する日がやってきた。
[ライター: おくの ゆか]
映画『海辺の生と死』予告篇
映画作品情報
満島ひかり×永山絢斗共演/戦後文学史に残る伝説的夫婦の出会いの物語
脚本/監督: 越川道夫
原作: 島尾ミホ「海辺の生と死」(第15回田村俊子賞受賞・中公文庫刊)島尾敏雄「島の果て」ほかより
脚本監修: 梯 久美子
参考文献:『狂うひと―「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮社刊)
歌唱指導: 朝崎郁恵
企画/製作: 畠中鈴子 製作: 株式会社ユマニテ 制作:スローラーナー
配給: フルモテルモ、スターサンズ
2017年 / 日本 / 155分 / DCP / 5.1ch / 16:9 / カラー
2017年7月29日(土)より
テアトル新宿ほか全国順次公開!
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