映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
蒔田彩珠インタビュー
相手のセリフや気持ちを汲んで、お芝居することが大切だと気付きました。
映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』が、2018年7月14日(土)より公開される。
原作は、漫画家・押見修造の同名タイトル「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(太田出版)。作者の実体験をベースに描いたコミックで、ファンの中でも人気が高い作品である。
上手く言葉が話せないことに引け目を感じ、周囲と馴染めずにいる高校一年生の志乃。音楽好きだが音痴な同級生・加代。この2人を主人公に、思春期を迎えた少年少女たちが抱える葛藤や苦悩を描く。主演はともに今年16歳の実力派若手女優・南沙良と蒔田彩珠。本作が映画初主演作となった蒔田彩珠さんに作品に対する思いや撮影時のエピソードを聞いた。
―― 本作に出演することになったきっかけをお聞かせください。
お話をいただいて、原作と脚本を読んでから、監督や関係者の方と面談をしました。
―― 脚本を読んだとき、加代について、どのように感じましたか。
加代の気持ちを表に出さないところや、積極的に人と関われない感じが自分に近かったですね。この役を演じたいと思いました。
―― 面談は緊張しましたか。
明るい雰囲気だったので、あまり緊張はしませんでした。私の趣味の話などをしてから、脚本に書かれているシーンのお芝居をしました。
―― 原作は押見修造先生の同名コミックです。ご存知でしたか。
知りませんでした。脚本と一緒に送られてきて、初めて読みました。コミックは迫力があり、感じるものが多くて、この加代をちゃんと演じきれるかなと思ったことを覚えています。
―― 志乃役のオーディションに立ち会われたと聞きました。数日間で数百人の人が受けに来たそうですが、その時の南 沙良さんの印象を教えてください。
最初から強烈なインパクトでした。オーディションでは、一緒に最初のシーンを演じたのですが、間をすごく取るんです。こっちがのめり込むくらい、そこからすごく感じるものがあって、鳥肌が立ちましたね。とてもやりやすくて、「志乃と加代だ」って。
―― 南さんとの関係はいかがでしたか。
同じ歳なので、すぐに打ち解けることができました。
―― 撮影当時、中学生だったということですが、高校生を演じることに不安はありましたか。
これまでも上の年齢の役をすることが多かったので、そんなに難しくなかったです。もともと実際の年齢よりも上に見られることが多いんです。
―― 映画では加代が原作より大きな存在となっています。
映画は志乃との関わりが深く、2人のシーンが大切にされているように感じました。私は志乃と加代だけでなく、菊地も含めた3人の話だと思っています。
―― 加代は映画の中でギターを弾きます。どのくらい練習したのでしょうか。
一番がんばったのがギターでした。撮影の4カ月くらい前から練習を始めて、曲が決まり始めたのが2カ月前くらい。かなり大変でしたが、何とか弾けるようになって、、、ホッとしました。
―― 加代は音痴という設定です。ギターを弾きながら、音程を外して歌うのは案外大変だったのではありませんか。
難しかったです。元々知らない曲だったので、コードと伴奏だけ覚えて、メロディーはちゃんと覚えないようにしました。
―― どのシーンも思い入れがあると思いますが、中でもこだわったシーンはありますか。
駐輪場で志乃と最初にちゃんと話すシーンですね。それが一番印象的でした。
―― 仲違いをした志乃と加代がバス停で一晩を過ごすシーンが印象的でした。蒔田さんはこのシーンをどう演じていましたか。
志乃が加代に思いを伝えるシーンなので、自分が何かをするのではなく、南さんのお芝居や気持ちを大切にしたいと思って臨みました。
南さんはその日はずっと役に入り込んでいて、全然話さなかったですね。いつもは明るい現場も状況を察して、あの日は静か。すごくハードな一日でした。
ですから、あのシーンを撮り終わったときは、ほんと、すっきり晴れやかな気持ちでした。
―― 現場は明るかったとのこと。これまで経験してきた現場との違いはありましたか。
これまでは大人中心の現場でしたが、今回は同世代中心。こんなに長い時間、同世代の子と現場で一緒にいたのは初めてのことです。
菊地役の萩原さんは年上ですが、私と南さんのテンションに合わせてくれたので、ずっとワイワイと楽しく撮影をしていました。現地のエキストラの方々がクラスメイトを演じていましたが、空き時間に話しかけてくれたことも大きかったと思います。
―― ロケをした沼津の街の印象もお聞かせください。
どこもゆったりしていて、東京のようにごちゃごちゃしていないですね。2週間ほど泊まり込んで撮影しましたが、すぐに地元という感じが自分の中に染み付きました。
―― 加代を演じたことで自分の中で何か変化はありましたか。
これまでは、自分の中でお芝居をしていることが多かったんです。でも今回の現場で、相手のセリフや気持ちを汲んで、お芝居することが大切なんだと気付きました。そこはすごく大きかったです。あと、萩原さんはいろいろな作品に出ているので、一緒にお芝居をしていて学ぶことが多かったです。
―― 今後はどんな作品に出てみたいと思っていますか。
たくさんの作品に出て、いろいろな役を演じることができるようになりたい。特に多重人格の役に興味があります。とても重い作品になるでしょうけれど、そこから何を自分が感じることができるのか、これから役から色々なものをもらっていければいいなと思っています。
―― 最後に、シネマアートオンラインをご覧の皆様にメッセージをお願いします。
プロフィール
蒔田 彩珠 (Ajyu Makita)2002年8月7日生まれ。神奈川県出身。 |
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映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》高校1年生の大島志乃は上手く言葉を話せないことで周囲と馴染めずにいた。 そんな時、ひょんなことから校舎裏で同級生の加代と出会い、一緒に過ごすようになる。 人と距離を置きがちな志乃だったが、加代からバンドを組まないかと誘われたことで少しずつ変わっていく。 ふたりで過ごす夏休みが平穏に過ぎていくと思っていた志乃だったが、自分をからかった同級生の男子・菊地が強引に参加することになり…。 |
小柳まいか、池田朱那、柿本朱里、中田美優/蒼波 純/渡辺 哲
山田キヌヲ、奥貫 薫
監督: 湯浅弘章
原作: 押見修造 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 (太田出版)
脚本: 足立 紳
音楽: まつきあゆむ
配給: ビターズ・エンド
制作プロダクション: 東北新社
製作: 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会(日本出版販売 カルチュア・エンタテインメント 東北新社 ベンチャーバンク)
2017年 / 日本 / カラー / シネスコ / 5.1ch / 110分
© 押見修造 / 太田出版 ©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会