映画『私は絶対許さない』公開初日舞台挨拶
暴力的で怖い父親役の友川カズキが
「主観撮影だったと今日、知った」と天然ぶりを発揮。会場は笑いの渦に!
精神科医の和田秀樹監督が映画化した映画『私は絶対許さない』が4月7日(土)に初日を迎え、東京・テアトル新宿で初日舞台挨拶を開催。W主演の平塚千瑛と西川可奈子、友川カズキ、隆大介、佐野史郎、和田秀樹監督、主題歌を担当した元SKE48の出口陽が登壇した。
原作は15歳の元日に集団レイプに遭い、加害者の男たちへの復讐だけを胸に生きてきたという雪村葉子による衝撃的な手記。主人公目線ですべてが撮影される完全主観撮影によって、よりリアルにレイプシーンなどを映し出す。主人公の葉子役は、前半の集団レイプに遭う学生時代を西川可奈子が、整形後、AV嬢となっていく後半を平塚千瑛(ひらつか ちあき)が演じた。精神科医ならではの視点でトラウマを描いた新感覚社会派作品である。
まず、本作で映画初主演を務めた平塚と西川が挨拶。「雪村葉子さんが見たままの世界です。最後までみなさまの目で観ていただければと思います」(平塚)、「性犯罪について改めて考える機会をいただきました。作品を通して葉子さんのメッセージを発信していけたらと思います。みなさまもひとことでかまいませんので発信していただければと思います」(西川)と語る。
続いて、高校時代の葉子の援助交際相手を演じた隆が「3年前に不祥事を起こしました。その節はお騒がせしまして申し訳ございませんでした。この場をお借りして、お詫びしたいと思います。映画は社会的な意義深い作品だと思っています。この役で和田組に参加できたことを俳優として誇りに思います」と久しぶりの公の場に俳優としての喜びを感じているようだった。
葉子の夫を演じた佐野は、「何よりもこの2人の体当たりの演技に頭が下がるばかりです。性犯罪を扱った映画ではありますが、もっと大きい暴力そのものについて描いた映画ではないかと受け止めています」と作品テーマについて言及。自身が演じた役はレイプ犯ではないが、別の形で主人公を傷つけたと考えていたのかもしれない。
主題歌「迷宮」を歌う出口は、「映画の主題歌を歌わせていただくのは初めて。光栄なことと思っています。音楽を通して、この作品の良さをたくさんの方に届けていきたいなと思います」と緊張しながらも、喜んでいることが伝わってくる。
MCから映画化の理由を聞かれた和田監督は、「日本ではトラウマについて、レイプの後PTSDになり、悪夢を見る、多重人格になるといった通り一辺倒な捉え方をする映画・ドラマが多い。しかし、実際にはトラウマは時間の連続性を断ち切ってしまう怖さがある。レイプの被害者が自分は被害者なのに、落ちた人間になってしまったかのような感覚を持ってしまい、風俗やAVの世界に入ることが多い。その結果『もともと(セックスが)好きだったんじゃないか』と言われ、さらに傷ついていく。そういった話を聞いて、意外に思っていましたが、この手記に出会い、納得できるものがありました」と作品への思いを語った。
本作は主観撮影のため、主人公は演技をしていても、あまりスクリーンに映らない。それでも出演したいと思った理由を尋ねられ、平塚は「まずは実話であることです。あと、境遇に負けずに戦いながら生きてきた生き方そのものが、生きる強さを教えてくれていると思いましたし、雪村葉子さんに魅力を感じました」と、西川は「主観撮りによって雪村葉子さんの内面、世界観が生々しい臨場感で映し出されます。演出にまったく妥協がなく、監督が思いをぶつけているところも魅力だと思います」と本作の魅力を語った。
役作りに関しては、「私自身は性犯罪のトラウマを知りません。本を読み、原作者の雪村さんに会って聞いたことを参考にしました。昔の傷をえぐってしまいましたが、私たちのためになるのならと心情を話してくださったので、何が何でも私たちで再現したいという気持ちになりました」(平塚)、「事件に遭ってからもう1人の人格が現れるので、違う人格の使い分けを意識しながら役作りに励みました」(西川)と話し、役どころの難しさが伝わってきた。
主人公に厳しく当たる父親を演じた友川が「私の役はインテリで東北の大学を出た大地主です。自分は高卒で学歴もないので、ちょっと演技力がいりましたけれど!」と話すと会場に笑いが起こった。「殴ることが威厳だと勘違いしている父親で、難しかったです。ただ、私は気が小さく、スタッフや共演者の方に迷惑をかけられない。特に白川和子さんは怒ったら怖そうだから、一つ間違えたら大変とスタッフとセリフの練習をしました」。さらに「今日”主観撮影”だと初めて知った。怖くて一生懸命やっただけです」と天然ぶりを発揮。和田監督は、「(主観撮影なので友川さんは)カメラマンに向かって殴るので、カメラマンの方が強いと言っていた」と撮影時のエピソードを話した。それに呼応して、佐野が主人公がレイプを受けて帰宅したときの両親とおばあさんの対応シーンについて「いーっすよ! 僕も暴力的なシーンは随分やってきましたけれど、友川さんもすごすぎて」と絶賛した。
隆は「20年後のシーンのことを思うと、彼女に援助交際を申し込んだ時、所詮やくざ者だから、下心を持ったままでいいのではないかと思いまして、一つ一つの場面を彼女と楽しむことに徹しました」と撮影当時を振り返る。
整形後の主人公と結婚する雪村役の佐野は主観撮りなので、あえて棒読みにしたという。その理由を聞かれ、「見ている人に見えているものと実際に起こっていることの差がすごくあるんじゃないかなと思っています。どういうつもりで言ったかは別として、優しいつもりで言ったことが受け止め方によって事実が正反対にもなってしまいます。自分の“つもり”は入れないで、葉子が見ている風に聞こえればなと思いました」と答えた。
その後、出口が「人は辛いことや悲しいことからどうしても目を背けたくなるものだと思います。私はこの作品を見て、主人公の女性がどんな暗闇の中でも生きていこうという想いを感じて、勇気をもらいました。その想いを込めて精一杯歌います」と話し、作曲者の近藤薫さんと特別セッションで主題歌「迷宮」を披露。
最後に、和田監督が「編集の太田さんは北野たけしさんの映画をずっと手がけられた方です。繋げて見たとき、とても好きな映画に仕上がりました。主観で撮っている映画ですが、観客が主人公の世界に入ってどう感じるかは、一人ひとり違うと思います。最後まで御覧ください」と登壇者を代表して締めくくった。
イベント情報<映画『私は絶対許さない』公開初日舞台挨拶> ■日時: 2018年4月7日(土) |
映画作品情報
《ストーリー》15歳の元旦、私は死んだ 東北地方の田舎で育った中学3年生の葉子(西川可奈子)は、メガネに化粧っ気のない素朴な女の子。厳格な父(友川カズキ)と、女々しく意地悪な母(美保純)と、優しいがどこか他人事の様に接する祖母(白川和子)と、小さな弟と妹に囲まれて平凡に暮らしていた。あの日までは・・・。 年末、若い男達に無理やり輪姦されたのだった。元旦に全身傷だらけで帰宅した葉子を待ち受けていたのは、冷たく突き放す家族と親戚だけだった。体のみならず、心もズタズタにされ、天涯孤独の様な気持ちだった。ひょんなことからレイプ犯の一人である若者の養父・早田(隆大介)と出会い、援助交際という名の契約を交わす。どうせ私は傷物なんだから・・・。 冬休み明けの学校でも、瞬く間に輪姦された噂は広まり、イジメが始まった。その間も援助交際でコツコツと大金を稼ぐ葉子。一刻も早くこの地獄から自力で抜け出すために。そしていつか、あの男達に復讐するために・・・。 高校卒業後、大都会東京へ。すぐさま全身整形し、昼間は真面目な学生、夜は学費や生活費を稼ぐべく風俗で働いていた。そんな中、葉子(平塚千瑛)は客としてきた雪村(佐野史郎)に出会う。彼は将来の夫になる人だった・・・。しかし、ある日、彼の真実を知ってしまう・・・。 そんな体験を実際に持つ雪村葉子さんが35歳になって執筆した手記を元に、何に対して復讐しているのか。あの男達への思いは・・・。 |
テアトル新宿にてレイトショー公開ほか全国順次
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