戦後から本土返還の1972年まで、アメリカ統治下に置かれた沖縄を舞台に、混沌とした時代を懸命に生き抜く若者たちの20年を描いた『宝島』。会見の会場となった丸の内TOEIは1960年に開業し、映画と同じ時代を見守り続けた歴史ある映画館だ。そんな共通点をもつ場所で、『宝島』初となるイベントがスタートした。

主人公・グスクを演じた妻夫木は、念願の映画完成に対して「この映画は2回ほど延期になっていて、3度目の正直でやっと完成を迎えることができました。完成報告会見として今日を迎えることができて感慨深いです」と笑みを浮かべた。

ヤマコ役の広瀬は「本日は足を運んでくださり、ありがとうございます」と来場者を労い、レイ役の窪田は「作品を撮影した日々を思い返して、懐かしい気持ちとどこかたぎるような気持ちが混ざった、不思議な心持ちでこの場に立っています」と胸の内を明かした。

大友監督も「妻夫木さんが言った通り、この作品は成立するまでに紆余曲折ありました。今日こうしてお披露目できることを嬉しく思います」と熱い気持ちを露わにした。

妻夫木聡「圧倒的な生命力を感じた」
広瀬すず「血が騒ぐよう」

完成した映画を観て、妻夫木は「作品が持つ圧倒的な生命力を感じた」と明かし、「生きていかなければならないと心の底から思いました。死があるからこそ生があり、死が生きる糧になる。僕たちは精一杯生きていかねばならない」と受け取った思いを噛みしめた。

広瀬は「良い意味ですごく疲れました。血が騒ぐようなシーンがとても多くて。撮影をした日々も濃厚だったなと思い返す瞬間もいっぱいありました。良い疲れがあります(笑)」と笑顔に。

窪田は「みんな全力で生きていて。次の瞬間に命を奪われるかもしれない、今を全力で生きている若き沖縄のうちなんちゅのみんなの、生きている魂を感じたのが大きかったですね」と感慨深げにコメントした。

大友監督は「原作を読んだときから生きるエネルギーを痛切に感じていた」と言い、「沖縄に宿る魂が時空を超えて語りかけてくるようなパワーをどう映像に活かすか。映画を通して彼らの人生を追体験してもらいたい。役者たちがそれを感じて演じてくれたんだなと、改めて思いました」と俳優陣の熱演へ感謝を述べた。

妻夫木「コザに導かれた」
広瀬「覚悟のいること」出演への使命感

オファー時の心境について、妻夫木は「舞台となったコザが以前出演した『涙そうそう』から続くことで、縁があるなと。自分はどこかでコザに導かれたのかもしれない。沖縄には今なお続く問題もあって、現地の方の声にならない言葉を表現する使命感があった」と運命的な巡り合わせに触れた。

広瀬は「沖縄にある問題を体現、表現することは覚悟のいること。原作では男性が多いなかで太陽のような存在のヤマコが眩しくて。彼女の持っている覚もを自分ができれば良いなと思った」と明かした。

窪田は「大友監督の元で人間の生き様を荒々しく表現できることが画面から出ているのかなと思いました」と思いの丈を述べた。

エキストラ2,000人超！
妻夫木聡が「しびれた」と語る圧巻のゴザ暴動シーン

大友監督は、アメリカ統治下の沖縄を表現する上で「ローカルな琉球文化と、対峙するアメリカ文化をしっかり描くこと。この時代の歴史群像を描くのだから嘘をつけない」と、いままでなかなか映画化されなかった難しさに言及した。

中でも、クライマックスのゴザ暴動シーンは延べ2,000人を超えるエキストラを投入して撮影。妻夫木は「2,000人もいたんですか！？」と驚きつつ、「沖縄で役作りに行ったとき、コザ暴動はただの憎しみや怒りだけで起こったことじゃないと知りました」と複雑な思いを抱えていたという。しかし、大友監督が演出したシーンを目の当たりにし、「色んな感情が入り混じった混沌とした塊が流れていくようで、しびれましたね！これを大友監督がやりたかったんだ」と手腕を大絶賛。大友監督は「感情のうねりがどこに向かうのか、『どう現場を混乱させるか』が僕の演出のテーマだった」と明かした。

サプライズで永山瑛太からのビデオメッセージ！
「何度も涙腺がボロボロに」

ここで、物語のカギを握る英雄オンを演じた永山瑛太からビデオメッセージが到着。「この役を演じるということの重圧にどう向き合えばいいかという葛藤はあったけど、大友監督や共演者の妻夫木くん、窪田くん、すずちゃんに全部委ねてもいいかなというつもりで、身を投げるような気持ちで今回は役に挑みました」と振り返ると、「完成した作品を拝見した時、何度も涙腺の弱い私はボロボロに。周りの方々にバレないように、涙を拭きながら観ました」と熱いメッセージが届けられた。

旧知の仲である妻夫木は「彼がいることが心強かった。彼に助けられました」と信頼を寄せ、広瀬は「現場でもどうみてもヒーローで、ついていきたくなる姿を見せていただきました」とコメント。窪田も「瑛太さんにしかできない偉大なオンちゃんでした」と大絶賛した。

妻夫木聡が「宣伝アンバサダー」に就任！
全国行脚で“人生のバトン”を届ける

さらに、妻夫木が「宝島宣伝アンバサダー」に就任し、大友監督と共に全国を巡ることが発表された。スクリーンに映し出された名刺に、妻夫木は「この映画は撮っている時から、是非皆さんの前に立って、会いに行って宣伝したいなと思っていて。『ウォーターボーイズ』（2001年）の宣伝で全国を回った時、行った土地でその映画がその人のものになる姿を拝見しました。まさしくこの映画はそうあるべき映画」と熱弁。

「この映画は沖縄を舞台にしていますけど、日本の物語です。そして皆さんの物語。人生のバトンの物語として受け継がれ、未来にバトンを渡すため、皆さんに直に届けに行こうと思います！」と力強く意気込みを語った。6月7日の沖縄プレミアを皮切りに全国行脚がスタート。沖縄には広瀬も登壇予定で、窪田も「どこかで馳せ参じたい！」と応えた。

質疑応答では撮影裏話も！
妻夫木聡「覆す力がある作品。映画の力を信じたい」

マスコミからの質疑応答では、「大友監督がつけた演出のなかで強く印象に残ってるものは？」という質問が。窪田が「（大友監督は）『確実にこうしてください…』ということは言わず、役者が動いた方向にカメラが付いてくる。大事なシーンで腑に落ちない時は、それまで組んでいたものを更地にして進めてくれた」と大友監督の演出を振り返った。

また、「撮影期間での印象的なエピソードは？」という質問に対しては、沖縄ロケ中に妻夫木の親友宅に広瀬と窪田がそれぞれ招かれていたことが明かされ、広瀬が「一緒にカチャーシーを踊りました。昔から知り合いなんじゃないかと思うぐらいファミリーというものを感じました」と心温まるエピソードを披露した。

最後に、「『この映画をただの映画で終わらせたくない』』と以前コメントしたことについて、具体的に届けたいメッセージや思いは？」と問われた妻夫木は、「映画はビジネスだけど、この映画は観て『ああ、よかった』で終わらせず、それを覆す力がある作品。だからこそ、宣伝アンバサダーとして映画の力を信じたい」と熱い思いを語った。

会見の締めくくりに、大友監督は「渾身の作品です！一人でも多くの人に届けるために、日本中走り回ろうと思っています！」とアピール。妻夫木は「この映画が、歌における応援歌のように、日本を応援する映画になれればいいなと思っています」とメッセージを送り、会見は終了した。