首藤凜監督×北條誠人対談
映画『ひらいて』首藤凜監督
自身の映画作りの原点から語る!
芥川賞受賞作家・綿矢りさの傑作恋愛小説「ひらいて」が衝撃の映画化!荒々しさと繊細さが共存する少女が美しくもポップに描かれる、新感覚・乱反射する少女の愛憎エンターテインメント作品、映画『ひらいて』が10月22日(金)に全国公開される。
主演を山田杏奈、作間龍斗(ジャニーズJr./HiHi Jets)、芋生悠が共演。映画『また一緒に寝ようね』(2016年)が、第38回ぴあフィルムフェスティバル(PFFアワード2016)で審査委員特別賞と映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)を受賞。話題のオムニバス映画『21世紀の女の子/I wanna be your cat』(2018年)でも注目を集めた新進気鋭の映画監督・首藤凜が監督・脚本を務める。
毎回様々なゲストを招き、映画や映画館にまつわる様々な話を聞く、ミニシアター・映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」。今回は、10代で綿谷りさの原作小説「ひらいて」に出会い、8年後に商業長編デビュー作品として映画『ひらいて』の監督を務めることとなった首藤凜監督をゲストに迎え、 10月15日(金)、ユーロスペース事務所で、ユーロスペース支配人・北條誠人×首藤凜監督の対談が行われた。
「高校の文化祭で映画を撮って…」
映画作りの原点
―― 映画作りに興味を持たれたきっかけは何でしょうか?
首藤: 高校生のときに文化祭で友人と映画を1本撮って、すごく失敗したんです。その当時見ていた映画や演劇に影響されて「作ってみよう!」ということになって作ったのですが、できたものが内輪的でつまらないものになって、上映するしないの話にもなるくらいで。結局上映しましたが、最後に観客に謝るという…。「映画を作るって怖いな」とそのとき思いました。その後、大学に入っても何かを作りたいという気持ちがあったので、早稲田大学映画研究会に入りました。
―― その後、自主制作された映画『また一緒に寝ようね』(2016年)が第38回ぴあフィルムフェスティバル(PFFアワード2016)で審査委員特別賞と映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)を受賞されましたが、これは映画監督になる大きなきっかけになりましたか?
首藤: いえ、そのときはまだ全然思ってませんでした。自主映画の監督ってやることが多くて大変なので、目の前のことだけで精一杯で。
「ひらいて」との出会い
そして映画化に向けて
―― ぴあフィルムフェスティバルで受賞すると“スカラシップ”という長編制作の援助システムに挑戦する資格を得られると聞きましたが、当時「ひらいて」の映画化に向けて出版社にコンタクトを取られたそうですね。
首藤: はい。先輩がたまたまその出版社にいたこともあって、お手紙を書きました。そのときに口約束ですが『撮れるなら撮ってもいいよ』と言っていただいて。ただ、あのスカラシップはオリジナルが規定だったので実現はしませんでした。
―― 高校生のときに綿矢りささん原作小説「ひらいて」に出会ってから、ライフワークのように映画化に向けてずっと取り組んでこられたそうですが、そこまでこの原作にこだわった理由は何でしょうか?
首藤: 一番最初に胸を打たれた小説で、生きていく糧になるような…。自分の人生で色々なことが起きる前に「ひらいて」に出会って、独特でいびつな関係性の中で人が人に受け入れられていく様に衝撃を受けました。これから自分にも色々なことが起きてきそうな予感と相まって…。本当にこの原作に救われてきました。その後、就職をして仕事をしながらずっと脚本を書いていました。「他に原作権を取られたらどうしよう」と正式に固まるまで不安で仕方がなくて。ちょいちょい「対抗馬がいる」といったことも耳にして、気が気じゃありませんでした(笑)。
―― 初の商業長編映画ですが、プレッシャーはありましたか?
首藤: ありがたいことにスタッフの皆さんが本当に優しくて。ただ、当たり前ですが、監督としての判断をきちんとしていかなければいけないのでそのあたりは孤独だなと感じました。
俳優たちとの役作り
愛は「わからなさもそのまま演じてほしい」
北條: 俳優との役作りで苦労された点はありますか?
首藤: 特に主人公の愛についてですかね。山田杏奈さん演じる愛というキャラクターは、私がずっと共鳴してきたキャラクターで。愛自身も自分のことがよくわかっていないので、演じるときには山田さんも悩まれたようなのですが、私は「そのわからなさもそのまま演じてほしい」と思っていたので試行錯誤しました。私が言語化して伝えてその通りに演じてもらっても、あまり面白くならないような気がしていて。山田さんも愛と同世代なので、その渦中の中にいる人の特有の分からなさがいいと思いました。役者さんとこんなにも対話することも初めてでした。作間さんは演技もほぼ初めての様子で背の高さ、スタイルの良さも含めて持て余している感じでした。撮影の自分の出番が終わっても気配を消して他のシーンの撮影を見ていたり、私がこのシーンは見られたくないな、と思ったときは何も言わなくても帰って行かれたり。芋生さんは人あたりも良くて優しい方なのですが、演じること以外は全く興味のない感じだなと思いました。
北條: 作品を観ていて、はじめは作間さん演じるたとえが“勉強ができてかっこいいから”愛が惹かれていくのかなと思っていたら、たとえは実は家庭環境が酷くてそこから脱出するために勉強を一生懸命していて、中学の時から付き合っている秘密の彼女(美雪)だけは連れ出そうとしているんだなと、その辺りのキャラクターが寡黙ゆえに面白かったですね。あとはバス停でのシーンや山田杏奈さん演じる愛と芋生悠さん演じる美雪がカラオケに行くシーンが印象的でした。
首藤: カラオケのシーンは私も気に入っているので嬉しいです!
北條: 主人公の愛の体当たりの衝動的な行動を周囲がどう受け止め続け、いつ切り返して来るか興味深く観ていました。あまりネタバレできませんが、冒頭のゴミ箱を“バーーン!!”と落とすのシーンとかも良いですよね(笑)。
最後に首藤凜監督からメッセージ✉
首藤: 観ると色々言いたいことが出てきたり、もやもやと複雑な気持ちになったりするかもしれませんが、是非色んな感情になってもらえたら嬉しいなと思います。
イベント情報
首藤凜監督×北條誠人対談レポート■開催日: 2021年10月15日(金) |
映画『ひらいて』首藤凜監督×北條誠人対談 一部特別公開映像🎞
映画『ひらいて』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》高校3年生の愛(山田杏奈)は、成績優秀、明るくて校内では人気者。 彼はクラスでも目立たず、教室でもひっそりと過ごす地味なタイプの男子。だが寡黙さの中にある聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえに、愛はずっと惹かれていた。 しかし、彼が学校で誰かからの手紙を大事そうに読んでいる姿を偶然見てしまった事で事態は一変する。 手紙の差出人は、糖尿病の持病を抱える地味な少女・美雪。その時、愛は、初めてふたりが密かに付き合っていることを知るのだった。それが病気がちで目立たない美雪(芋生悠)だとわかった時、いいようのない悔しさと心が張り裂けそうな想いが彼女を動かした―。「もう、爆発しそう―」 愛は美雪に近づいていく。誰も、想像しなかったカタチで・・・。 |