映画『コットンテール』特別先行上映イベント
リリー・フランキーと錦戸亮が家族のラブストーリーを紡ぐ
― 東京からイギリスの湖水地方へ、亡き妻の願いを叶えるための旅 ―
家族に対して心を閉ざしてきた不器用な父と、自分は顧みられていないと感じていた息子が、亡き妻であり母の最後の願いによって異国の地へと導かれる。道中で幾たびも衝突しながら、家族の愛と再生を紡ぎ上げていく。
日英合作の映画『コットンテール』は、日本映画への造詣が深く日本への留学経験があるイギリス人監督のパトリック・ディキンソンが、自身の「母の介護」をきっかけに制作した、ロードムービー仕立てのヒューマン・ドラマだ。
主演はリリー・フランキー、共演には錦戸亮、木村多江、高梨臨を迎え、3月1日(金)より新宿ピカデリー他で全国公開される。
日本に先駆け、2023年10月開催の第18回ローマ国際映画祭のグランド・パブリック部門でワールドツアー上映され、最優秀初長編作品賞(BEST FIRST WORK BNL BNP PARIBAS)を受賞。
その結果を日本へと持ち帰り、満を辞して2月13日(火)に、新宿ピカデリーで特別先行上映イベントが開催されると2階席まである会場は超満員となった。イベントには、コロナ禍での撮影を乗り越え公開を誰よりも心待ちにしていたリリー・フランキー、錦戸亮、木村多江、高梨臨らキャスト陣、さらにはイギリスから緊急来日したパトリック・ディキンソン監督が登壇した。
錦戸亮「本日はお寒い中…」
リリー・フランキー「17℃あるよ?」
本作は、コロナ禍真っ只中である2年半前、海外渡航には隔離期間がつく中で撮影された。撮影は無事完遂できるのか、公開されるのかと次々と不安が生まれる中でこの度開催された特別先行上映イベント。登壇したキャスト一同は、愛おしさを目に込めながら会場を見渡した。
兼三郎を演じたリリー・フランキーは、「やっと今日観ていただけることが感慨深い」と、穏やかに、しかし力強く挨拶。息子の慧(トシ)を演じた錦戸が観客に向けて、「本日はお寒い中…」と語り出すと、リリーがすかさず「17℃あるよ」と”息子”の発言を訂正。錦戸はすぐさま切り替えると「そうか…暖かい中これてよかったですね」と、撮影の中で培った距離感を垣間見せながら会場を笑わせた。
撮影から公開までの期間も長かった本作だが、兼三郎の妻 明子役を演じた木村は、オーディションが開催された5年前を振り返る。「普遍的なテーマゆえ皆様の感じ方はさまざまだと思いますが、パトリックの優しい眼差しが込められている映画です」と優しく会場に語りかける。
慧の妻 さつきを演じた高梨は「撮影も無くなるのでは、という心配もあった中、撮影ができること、無事公開を迎えこのようにたくさんの人に見ていただけるとあって、本当に感謝の気持ちでいっぱいの映画です」と語った。
続けて、この日のために来日したパトリック・ディキンソン監督が登壇。本作が長編劇映画デビュー作となるパトリック監督は、「今日は本当にありがとうございました。感動です」と流暢な日本語で挨拶した。
映画の話題は国境を超える
「食事の相談は難しいのにね」
日英合作ということで、海外のクルーとの現場となった本作。その様子について尋ねられるとリリーは「各国から集まったクルーと撮影するのは新鮮だったけれど、映画の撮影という共通の目的で集まってるから、不思議と撮影に関して不自由はなかった」と返答。食事を何にする?というコミュニケーションになると途端に意思疎通が難しくなったそうだが、映画人同士の会話は、言語関係なく通じ合うのかもしれない。
一方、イギリスでの食事について聞かれた錦戸は、「お米が好きなので、一合分を炊ける炊飯器を持ち込んで、毎朝炊き立てのご飯を、昼はおにぎりを握って食べていました」と家庭的な一面をのぞかせる。これに対してリリーは「たまに僕やパトリック(監督)にくれたんです。やってることはほぼオカンでしたね」と現場の雰囲気の良さを伝えてくれた。日本への留学経験を持ち、日本文化にも詳しいパトリック監督。好きな日本食は紫蘇だそうで、錦戸が作った紫蘇のおにぎりは絶品だったと発言。錦戸は「今日も握ってくればよかった!」と可愛らしく後悔していた。
人間誰しもに訪れる家族との別れ
最愛の人との別れによる喪失感という、人間にとっての普遍的なテーマを扱った本作。さなかに届く最後の願いのもと、遺された家族がその願いを叶える旅路で何を思うのか。
『コットンテール』で描かれたのは、日本で暮らすある1つの家族であり、世界中どこにでもいる可能性のある家族だ。脚本はパトリック監督の家族との実体験を元に描かれており、その背景を理解したキャスト一同、さまざまな思いを胸に作品に参加したそうだ。
高梨は、「パトリック監督から見て、日本の家族がこう見えているんだなと興味深く台本を読ませていただきました。同じテーマだとしても、日本人(の監督)だったらこういうふうには撮らないだろうな」と発言。
木村はパトリック監督の経験を知った上で木村自身が感じたことが大事だと伝えられたそうで、リハーサルで様々な演技を試しながら、答えを出さないまま本番を撮影に挑んだそう。「台本はあくまで台本で、みんなでつくっていく姿勢。誠実で俳優に委ねてくださる監督だなと、私にとってはとても心地よい現場でした」と答えた。
初共演で父と息子を演じたリリーと錦戸。もともと錦戸の芝居のファンだと話すリリーは、「僕の役柄は本当にダメなお父さんで、亮ちゃんはちゃんとした息子。だめなところを大人しく吸収する役柄で一緒にいやすくて、ナチュラルに親子ができたんじゃないかな」と錦戸に語りかける。
対して錦戸は「一生懸命振り回される準備をしたけれど、親父はきっちりと振り回してくれましたね(笑)。でも、演じる中で思わず自分の感情も出てきてしまった。その過程を見ていただけたら」と、思わず素の自分の感情が生まれてしまった経験を振り返った。
リリーは「家族が歳をとっていく、世界中の人が抱える同じ問題を、パトリックが映画にしてくれたことで、日本人のある家族の話じゃなくて、世界でこういうことに直面しながら生きている人たちがいるんだなって思わせてくれる。そう思うと、世界が愛おしく感じる気持ちになりました」と語り、人間にとっての普遍的なテーマを扱いながらも、最後には心が温まる映画となった由縁を垣間みせた。
この映画を観終わった後は大切な人に愛を伝えて
「『コットンテール』はラブストーリーです。父親と息子、妻と夫、家族の愛の物語なんです。日本であってもイギリスであっても他の国であっても、私たちは全員人間であり、愛は同じ。愛が世界を回しているんですよね」とパトリック監督は語りかける。
住む国が違うと、人も違うのではと感じてしまうが、「人間は愛をいつも望んでいる」という共通したテーマをこの映画は伝えてくれてくれる。
翌日がバレンタインデーということもあり、男性から女性にデートや食事・お花をプレゼントするイギリスの風習があるそうで、それにのっとってパトリック監督からキャスト陣に1輪ずつバラをプレゼント。
リリーは「かわいい習慣ですね」と目を細めると、「バレンタインのお花は、家族にあげてもいいのかな?」と質問。その質問に賛同するように、錦戸は「愛を伝えたい相手に渡したらいいですよね、みなさん今日はバラを一輪を買って帰ってください」と提案した。
イベントの最後に一言求められると、パトリック監督は「この映画は、世界への贈り物として送り出そうとしています。映画を観て愛を心の中に入れていただいて、観終わった後にその愛を大切な人に伝えてもらえたら」と語り、イベントを締めくくった。
フォトギャラリー📸
イベント情報
映画『コットンテール』特別先行上映イベント
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映画『コットンテール』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》60代の作家、大島兼三郎の最愛の妻、明子が、闘病生活の末に息を引き取った。 埋めようのない喪失感に打ちひしがれた兼三郎は、生前の明子が寺の住職に託した一通の手紙を受け取る。そこには明子が愛したイギリスのウィンダミア湖に、遺灰をまいてほしいという最後の願いが記されていた。 兼三郎は遺言を叶えるために、長らく疎遠だった息子の慧とその妻さつき、4歳の孫エミとともにイギリスへ旅立つ。しかし互いにわだかまりを抱えた兼三郎と慧は事あるごとに衝突し、単身ロンドンから湖水地方に向かった兼三郎は、その途中で道標を失ってしまい……。 |
新宿ピカデリーほか全国公開!
公式Instagram: @cottontail_movie