- 2025-10-28
- イベントレポート, ティーチイン, 日本映画, 第38回 東京国際映画祭

第38回 東京国際映画祭(TIFF)
コンペティション部門
映画『金髪』Q&A
坂下雄一郎監督が語る、校則への“ささやかな抵抗”の物語
ブラック校則から生まれた“笑い”とは?
10月28日(火)、第38回東京国際映画祭(TIFF)コンペティション部門にて、映画『金髪』のワールドプレミア上映がヒューリックホール東京にて行われた。上映後には坂下雄一郎監督が登壇し、観客とのティーチインに臨んだ。

不条理な“校則”をテーマにしながらも、独自のユーモアで軽快なコメディに仕上げたこの作品について、着想の源泉からこだわりの演出、キャスティングの裏話まで、監督が作品に込めた思いを語った。
“ブラック校則”とイギリスのデモが着想源
社会問題を扱いながらも、エンターテインメントに昇華させる手腕で知られる坂下監督。本作はコミックや小説を原作としないオリジナル脚本だが、その着想は意外なところにあったという。
「この企画が始まった4~5年前、ニュースで“ブラック校則”がよく取り上げられていました。それを題材にしたら面白いのではと思ったのが一つです。もう一つは、以前見たネットニュースを思い出しまして。確かイギリスだったと思うんですが、制服の決まりに抗議するために男子生徒たちがみんなでスカートを履いて登校した、というものです。日本の学校でなら何かなと考えたときに、金髪の子たちが抗議する、という物語の始まりを思いつきました」と、国内外の出来事が創作のきっかけとなったことを明かした。

約3年に及ぶ脚本開発では、リアリティを追求するための取材も欠かさなかったという。「実際の事件というよりは、登場人物である先生や教育委員会の方々に近い立場で働かれている方々に取材を重ねました。『普段は何時に出勤して、どんな昼食を?』といった基本的なことから、『もし映画のような抗議が起きたら、どう対応しますか?』ということまでお聞きして、登場人物の造形に活かしています」と、細やかな役作りの一端を語った。

30歳を目前にした主人公に投影した監督自身の“恐れ”
観客から、岩田剛典演じる主人公の教師・圭介が30歳という年齢に固執する理由について質問が飛ぶと、監督は自身の個人的な感覚が反映されていると打ち明けた。
「脚本の開発過程で、この映画は“年齢”に関する映画でもあるなと意識し始めました。大人になる手前の30歳という年齢が面白いのでは、と。感覚的なものですが、一つの節目というイメージがパブリックにもあると思います」。さらに、「このキャラクターを深掘りしていた時期に、SNSなどで自分より上の世代の男性の発言が“炎上”しているのをよく目にしました。発言している本人たちは無意識。それを見て、『自分もいつかこうなってしまうかもしれない』という、“おじさん”になっていくことへの恐れを感じたんです。その個人的な感覚をキャラクターの葛藤として取り入れてみたら面白くなるのではと思いました」と、キャラクターに込めた複雑な心境を語った。

リアルな中学生キャストたちとの撮影秘話
本作の大きな魅力である、長回しを多用した会話劇。坂下監督は「カットバックでテンポを作るのではなく、ウディ・アレンやエリック・ロメールの映画のように、俳優さんたちのお芝居のテンポでシーンを作ってもらいたかった」と、演出のこだわりを語った。

撮影現場の様子に話が及ぶと、坂下監督は思わず苦笑いを浮かべる。「教室のシーンなど、待ち時間になると(中学生のキャストたちが)本当に騒がしいんです(笑)。僕自身、10代の子たちが騒いでいるのが少し苦手なものですから、そういうシーンの撮影になるとそっと教室から出て、外にモニターを出してもらって、中には入らないようにしていました」とユーモラスな裏話を披露し、会場を和ませた。

最後に、坂下監督は「僕が関わる作品は、エンタメ映画、娯楽映画であることを常に心掛けています。やはりつくった作品はなるべく多くの人に観ていただきたい思いがあります。そのためには商業的な映画、娯楽的な映画にできた方が、より多くの人に届くのではないかと考えています」と、自身の映画作りへの信念を語り、Q&Aを締めくくった。

イベント情報
第38回東京国際映画祭(TIFF) コンペティション部門
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映画『金髪』予告篇🎞
映画作品情報

《ストーリー》その日、中学校教師・市川の人生を大きく変える出来事が起きた。一つは担任クラスの生徒数十人が髪を金色に染めて登校してきたこと。そしてもう一つは、彼女から結婚の話を切り出されたこと。マスコミやネット、さらには文科省まで巻き込み大騒動になる“金髪デモ”と、日々の愚痴を聞いた彼女からの辛辣な説教で板挟みになる市川は、窮地を脱するために“金髪デモ”を計画した張本人・板緑と手を組み、とある作戦に打って出る⋯。仕事の問題と人生の決断が一挙に押し寄せた市川は、いつまでも若者で何事も順風満帆だと思っている“イタいおとな”から“マトモな大人”へと成長し、全ての試練を乗り越えられるのか!? |
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