- 2017-9-26
- イベントレポート, 映画関連ニュース, 第30回 東京国際映画祭, 記者会見
第30回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表!
世界4大映画祭へと成長していくような映画祭に――
今年、30回目という大きな節目を迎える第30回東京国際映画祭(TIFF)のラインナップ記者会見が9月26日(火)、六本木アカデミーヒルズ タワーホールにて行われた。
日本で唯一の国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の映画祭であるTIFFは、1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生して以来、日本およびアジアの映画産業、文化振興に大きな足跡を残し、アジア最大級の国際映画祭へと成長しました。いまや最も熱気溢れるアジア映画の最大の拠点である東京に世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンが新たな才能とその感動に出会い、交流する場を提供している。
東京国際映画祭 ビジョン30 アートエンターテイメントの調和
記者会見の冒頭、東京国際映画祭フェスティバル・ディレクターの久松猛朗氏により挨拶があり、第30回の節目を迎える東京国際映画祭のビジョンとして掲げられた3つのキーワードが紹介された。
Expansive ― 映画を観る喜びの共有世界の様々な国や地域から、幅広いテーマやジャンルの映画を紹介し、多様で多彩で豊かな映画の魅力を共有し、誰もが参加したくなる、祝祭感溢れる映画祭を開催します。
Empowering ― 映画人たちの交流の促進日本、アジアのみならず、世界の映画文化及び映画産業に携わる人々が交流するハブとなり、相互に発信・受信しながら、新たな出会いと活動が生まれる場を提供していきます。
Enlightening ― 映画の未来の開拓若いクリエイターの育成、未来のクリエイターの創出に取り組み、彼らが世界に羽ばたいていくプラットフォームとしての役割を果たしていきます。また、映画の魅力、映画を観る喜びを共有してもらうことで、若い映画ファン、将来の映画ファンの開拓に取り組んでいきます。
|
アニバーサリービジュアルには、クリエイティブ・ディレクターの佐々木宏氏、アートディレクターに浜辺明弘氏を迎え、新たな30年を祝う「祝祭観」と、何処にもない、此処にしかない「TOKYO」の魅力を強く打ち出したいという想いのもと、日本を代表する写真家で映画監督でもある蜷川実花氏の写真を起用し、様々な「TOKYO」の表情がアニバーサリービジュアルとして制作された。
会期前・会期中、会期後も心に残るキービジュアルとなるだろう。
続いて、映画祭事務局長・都島信成をはじめ、各上映部門のプログラミング・ディレクター、プログラミング・アドバイザーがゲストスピーチし、オープニング&クロージング作品をはじめとする各分門のランナップが発表された。
オープニング&クロージング作品
オープニング作品には、累計発行部数7,000万部突破の国民的コミックを実写映画化したファンタジー・エンタテイメント超大作『鋼の錬金術師』が招待され、日本映画が10年ぶりにオープニングを飾る。映画祭のフィナーレを締めくくるクロージング作品には、アル・ゴア元米国副大統領が世界へ地球環境の保全を訴えたことで世界中で話題となった映画『不都合な真実』(2007年)の続編『不都合な真実2 : 放置された地球-』が上映されることが発表された。
また、第30回東京国際映画祭の“オープニングスペシャル”として、巨匠チェン・カイコー監督がメガホンをとり総製作費150億円の大規模ロケを敢行した日中共同製作映画『空海 ーKU-KAIー』が約10分間、特別に世界最速上映される。
クロージング作品『不都合な真実2:放置された地球』のアル・ゴア氏からはコメントが届いた。
【クロージング作品『不都合な真実2:放置された地球』キャスト アル・ゴア コメント】
『不都合な真実2:放置された地球』が 2017年の東京国際映画祭クロージング作品に選ばれたことを光栄に思います。 また、最近の異常気象により被害に遭われた日本の皆様に対し心からお悔やみを申し上げます。 来日し、異常気象の問題に警鐘を鳴らす機会に恵まれることを心待ちにしております。 |
「コンペティション」部門 ラインナップ
映画祭のメイン部門である「コンペティション」部門は、日本でもTVCMでおなじみのハリウッド俳優・映画監督のトミー・リー・ジョーンズ氏が国際審査委員長に就任し、国際審査委員を映画監督のマルタン・プロヴォ氏、レザ・ミルキャリミ氏、女優で映画監督のヴィッキー・チャオ氏、日本を代表する人気俳優の永瀬正敏氏が務める。
国内外から集まった過去最高作品数1,538本の応募作品の中から15本に選りすぐられたラインナップをプログラミング・ディレクターの矢田部吉彦氏が発表し、1作品ずつ見所と共に紹介された。
スパーリング・パートナーサミュエル・ジュイフランス
作品タイトル | 監督 | 製作国 |
マリリンヌ | ギヨーム・ガリエンヌ | フランス |
ナポリ、輝きの陰で | シルヴィア・ルーツィルカ・ベッリーノ | イタリア |
さようなら、ニック | マルガレーテ・フォン・トロッタ | ドイツ |
グッドランド | ゴヴィンダ・ヴァン・メーレ | ルクセンブルグ=ドイツ |
泉の少女ナーメ | ザザ・ハルヴァシ | ジョージア |
ペット安楽死請負人 | テーム・ニッキ | フィンランド |
シップ・イン・ア・ルーム | リュボミル・ムラデノフ | ブルガリア |
グレイン | セミヒ・カプランオウル | トルコ=ドイツ=フランス他 |
スヴェタ | ジャンナ・イサバエヴァ | カザフスタン |
ザ・ホーム-父が死んだ | アスガー・ユセフィネジャド | イラン |
アケラット-ロヒンギャの祈り | エドモンド・ヨウ | マレーシア |
迫り来る嵐 | ドン・ユエ | 中国 |
最低。 | 瀬々敬久 | 日本 |
勝手にふるえてろ | 大九明子 | 日本 |
コンペティション部門15作品の中から日本映画で選ばれた2作品のゲストが記者会見に登壇。『最低。』から瀬々敬久監督、森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈のメインキャスト3名が、『勝手にふるえてろ』からは大九明子監督が登壇し、主演を務めた松岡茉優からはビデオメッセージが届いた。
【コンペティション部門選出作品『最低。』瀬々敬久監督 コメント】
この映画は現役のAV女優の紗倉まなさんの小説を映画化したものなのですが、アダルトビデオというと偏見的な目で見られることもあるかと思うのですが、そういう偏見をすることもなく映画祭で選んでいただいたことを非常に感謝しています。原作はAV女優の友人関係や家族関係であるとか、それを取り巻く日常というものが緻密に描かれているんですがアダルトビデオというものが日本の社会でどういう位置付けてあるものかという事も含めて、今、日本がどう変わっていくのかということを世界の人たちに、日常の断面でいいのですが、感じてもらえたら良いなと思っています。(印象に残ったエピソードは)撮影日数も少ない中、佐々木さんが撮影中にプールに落ちるシーンで脳震盪を起こして病院に行くということがありまして・・・映画の演出だったはずが、現実になってしまって、慌てました。 |
【コンペティション部門選出作品『最低。』主演 森口彩乃 コメント】
(オファーを受けた時の心境)覚悟がとてもいる作品だと思っていました。最初は引き受けさせて頂いて嬉しかったのですが、撮影に入る前くらいから、なんで引き受けちゃったんだろうと思うこともありました(笑)。AV女優に染まり切る前といいますか、足を踏み込んでしまった主婦の役なので、原作の紗倉さんも書いている通り、一度足を踏み入れてしまったら・・・というようなところが映画にも描かれているのではないかと思います。 |
【コンペティション部門選出作品『最低。』主演 佐々木心音 コメント】
この作品に関わらせていただいて、この場に立てたことを嬉しく思います。ありがとうございます。元々原作を読んでいたのでその中で私が演じた彩乃は、多分、紗倉まなさんとも年齢が近いですし相当自分と似ている人物を描いているのではないかと思って読んでいたので、本当にこのお話をいただけたとき嬉しかったです。本当に楽しくやらせていただきました。 |
【コンペティション部門選出作品『最低。』主演 山田愛奈 コメント】
私はこの作品が初めて映像のお仕事をやらせていただくきっかけになった作品です。緊張していますがよろしくお願いします。(映画初挑戦の現場はいかがでしたか?)映画の現場がどういうものか分からず入ったので本当にゼロから学ばせて頂いたんですが、色々勉強になったのと、こういう風に映画がつくられているということを改めて知りました。 |
【コンペティション部門選出作品『勝手にふるえてろ』大九明子監督 コメント】
本日はこのような晴れがましい席にまさかこのようなささやかな映画がお招きいただけることになるなんて、大変緊張しております。プロデューサーに原作を紹介され、綿矢さんの作品はよく読むのですがこれは読んでいなくて。タイトルを見た時に絶対やると思いました。松岡さんは現場では集中力の高い方なので、ちょっとこの映画は内向的というか、独特の性格の女の子を演じてもらっているのですけれども、リアルなヨシカそのもの、というような大変集中している姿が印象的でした。映画を撮るたびにいつも誰かにとって大事な映画になればいいなということだけを思っていましたが、それがまさかこのような形で世界の皆さんにご覧頂けて、そして、素晴らしい監督たちと作品を競うという場に並べさせて頂けるのは驚きでした。 |
【コンペティション部門選出作品『勝手にふるえてろ』主演 松岡茉優 映像コメント】
東京国際映画祭コンペティション部門に選出して頂きました映画『勝手にふるえてろ』主演の松岡茉優です。今回、初めて映画の主演を務めさせて頂きました。この作品には、たくさんの思いがあるのですが、大九明子監督をはじめ、原作の綿矢りささんも女性であり、本当に多くの女性スタッフが集まって作った作品です。全国の“こじらせ女子”や、ちょっと背中を押してほしい女の子たちにこの作品が届けばいいなと思いながら作りました。きっと、たくさんの女の子たちの背中をツンツンと、つつける様な作品になっているはずです。ぜひ映画『勝手にふるえてろ』をご覧ください。よろしくお願いいたします。 |
「アジアの未来」部門 ラインナップ
アジアの新鋭監督たちが賞を競う。世界初上映8本を含むフレッシュな10本が今年も揃った。活気に満ちたアジア圏の映画をぜひ、その目で!
「日本映画スプラッシュ」部門 ラインナップ
今回も日本のインディペンデント映画の中から、独創的でチャレンジ精神に満ちた作品が揃った。しぶきを上げて海外に飛び出すような映画を応援する部門!
「特別招待作品」ラインナップ
第30回を迎える今年は、例年以上の上映作品が集結した!バラエティ豊かな作品群の中から、きっとあなたに合う作品が見つかるはず。
「ワールド・フォーカス」部門 ラインナップ
世界の有名映画祭で受賞した作品から、巨匠の話題の新作まで、日本で紹介されない作品に注目し、日本公開が未決定なレアな映画を上映する。
「CROSSCUT ASIA #04 ネクスト! 東南アジア」ラインナップ
ASEAN設立50周年の今年は、ブリランテ・メンドーサ、トラン・アン・ユンなど東南アジアの名監督が推薦する若手監督作品を紹介!
「日本映画クラシックス」ラインナップ
日本が誇る名作が、デジタル・リストアされ鮮やかにスクリーンに甦る。歌舞伎座では昭和期の貴重な無声映画を上映する。
アニメーション特集「映画監督 原恵一の世界」ラインナップ
これからの日本アニメを牽引する存在として期待される、監督デビュー30周年を迎えた映画監督・原恵一の創作の軌跡を紹介。
今年、アニメーション放送100周年記念のアニメーション特集として発表された「映画監督 原恵一の世界」の原恵一監督がゲスト登壇。アニメーション特集のプログラミング・アドバイザーを務めた氷川竜介氏と本記者会見の司会を務めた笠井信輔アナウンサーとのクロストークが繰り広げられた。
【アニメーション特集「映画監督 原 恵一の世界」 原恵一監督 コメント】
今日着ているTシャツは、今作っている作品のヒントです!まだまだ多くは語れないのですが。今回の特集は、現在ちょうど新作の製作中なので、過去作がこういう大きな映画祭で見てもらえるのは、そのためにもなるし、非常に嬉しく思っています。人に見られて恥ずかしいものは一本も作ってきていないつもりで、どの作品も自分のキャリアの中でとても大事にしています。(特に思い入れのある作品としては)『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』はすごく大きいターニングポイントになった作品なので、海外のメディアやお客さんに見てもらって、どういう評価をもらえるか楽しみです。(原監督の作品は希望を描くために時にはこどもには辛いのではないかと思うようなことも描くことについて)ぼくらの世代が子供のころ見ていた漫画やアニメや特撮ものなどは大体最後に主人公が死ぬという展開が多かった。そういうものに影響を受けて自分も作ることが多かったからか、子どもにショックを与えるものを作らないでくれという要請に対して、そういうものを見て育ったけれど良いショックを受けてきたので。(実写とアニメ―ション)の後、実写は完成までのスピードが早いので撮影期間が 3週間くらいで、映画のほぼ完成形ができあがるというのを『はじまりのみち』で体験してしまったんです。そのあと、また絵コンテを1コマ、1コマ書く仕事に戻ったときは本当にめんどくさいなと思いました(笑) |
「Japan Now」部門 ラインナップ
今の日本を代表する映画のほか、「銀幕のミューズ特集」と称して安藤サクラさん、蒼井優、満島ひかり、宮崎あおいの4人にスポットを当てた特集上映で30周年に華を添える。
「TIFF ユース(TIFF チルドレン/TIFF ティーンズ)」部門 ラインナップ
少年少女に映画の素晴らしさを体験してもらう部門。「TIFFチルドレン」は小学生を対象に、サイレント映画の名作をパフォーマンス付きで上映する試みを企画。子供たちはもちろん、親の世代も楽しめること必至の作品が選ばれた。「TIFFティーンズ」は中高生世代を主人公や主題に持ち、国際映画祭で評価された秀作を上映する。大スクリーンで観る映画の迫力や美しさ、そして世界の広さを楽しみながら経験することで、未来の映画ファンがここから育っていくという願いが込められている。また、中学生たちが限られた時間の中で映画を製作し、その成果をスクリーンで上映する「TIFFティーンズ映画教室2017」も開催。
「ミッドナイトフィルムフェス!」ラインナップ
「ミッドナイト・フィルム・フェス!」は、ハロウィン間近の週末である10月28日(土)の夜に、様々なジャンルのオールナイト上映を、6スクリーン同時に行うという、フェス感あふれる魅力的な企画となっている。また、新進気鋭の監督たちの饗宴、「SHINPA」も参戦!10人の若手監督が全作撮りおろしを初披露する。
「トリビュート・トゥ・ミュージカル supported by スターチャンネル」ラインナップ
第30回の特別企画として、魂を揺さぶる名曲が物語と共鳴し、観る人の心に深い感動を刻み込むミュージカル映画を特集。「映画の魅力」「映画を観る喜び」を再確認できる絶好の機会である。
「スティーヴン・ソダーバーグの世界 supported by アメリカン航空」ラインナップ
アメリカン航空の支援により新設された、アメリカ大陸の映画人にフォーカスした特集上映。第1弾は、アメリカを代表する監督のひとりであるスティーヴン・ソダーバーグ監督を特集する。
「ジョージ・イーストマン博物館 映画コレクション」ラインナップ
ジョージ・イーストマン博物館は1949年に開館した映画と写真のアーカイブです。ここに収蔵されている貴重な35ミリプリントから選りすぐりの8本を上映。ハリウッドの黄金時代の作品を美しいフィルムでご覧いただきたい。
ラインナップ記者会見の終盤、コンペティション部門出品作品の『最低。』、『勝手にふるえてろ』の監督・キャスト陣、それからアニメーション特集の原恵一監督らスペシャルゲストが再登壇し、質疑応答とフォトセッションが行われた。
原恵一監督より、「TIFF(東京国際映画祭)がこのまま発展していって、世界4大映画祭に数えられるようになってほしい。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンそして東京と言われるぐらい大きな映画祭に成長していけばいいなと思っています」といったコメントが飛び出すなど、第30回東京国際映画祭への期待と興奮が否が応にでも高まる中、会見が終了した。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 蒼山 隆之]
第30回 東京国際映画祭 ラインナップ発表記者会見 概要■日時: 2017年9月26日(火)13:00~
■会場: 六本木アカデミーヒルズ タワーホール
■司会: 笠井信輔(アナウンサー)
■登壇者: 久松猛朗(東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター)
都島信成(東京国際映画祭 事務局長) 矢田部吉彦(コンペティション部門、日本映画スプラッシュ部門 プログラミング・ディレクター) 石坂健治(アジアの未来部門 プログラミング・ディレクター) 安藤紘平(Japan Now部門 プログラミング・アドバイザー) 氷川竜介(アニメーション特集 プログラミング・アドバイザー) ■ゲスト: 瀬々敬久監督(コンペティション部門選出作品『最低。』監督) 森口彩乃(コンペティション部門選出作品『最低。』主演) 佐々木心音(コンペティション部門選出作品『最低。』主演) 山田愛奈(コンペティション部門選出作品『最低。』主演) 大九明子監督(コンペティション部門選出作品『勝手にふるえてろ』監督) 原恵一監督(アニメーション特集「映画監督 原恵一の世界」) |
第30回 東京国際映画祭 開催概要開催期間: 2017年10月25日(水) ~ 11月3日(金・祝) |