第49回 日本アカデミー賞 授賞式 優秀監督賞 レポート
【写真】第49回 日本アカデミー賞 授賞式 最優秀監督賞 (李相日監督)

第49回 日本アカデミー賞 授賞式 優秀監督賞

最優秀監督賞は李相日監督が受賞🏆
「映画には悪い流れを踏みとどめる力がある」

3月13日(金)、「第49回 日本アカデミー賞 授賞式」が、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール「崑崙」で開催。昨年『あんのこと』で第48回最優秀主演女優賞受賞した河合優実と、第43回~第48回授賞式に続き7回目となるフリーアナウンサーの羽鳥慎一が司会を務め、各部門の最優秀賞受賞者および最優秀作品などが発表された。

【写真】第49回 日本アカデミー賞 授賞式 司会 (羽鳥慎一、河合優実)

優秀監督賞を受賞したのは、内田英二(『ナイトフラワー』)、大友啓二(『宝島』)、塚原あゆこ(『ファーストキス 1ST KISS』)、永井聡(『爆弾』)、李相日(『国宝』)。受賞者は各自撮影時の思い出を披露した。

内田英治監督は創作活動への決意を新たに
「なんとかオリジナル脚本の“灯”をともし続けたい」

第44回で優秀監督賞・脚本賞を受賞した『ミッドナイトスワン』(2020年)に続く、オリジナル脚本で受賞した内田監督。「映画は一人ではつくれないもので、役者の皆さん…4人のメインの役者とともに一生懸命つくりました。なんとかオリジナル(脚本の映画)の“灯”みたいなものをともし続けていきたいなと思っておりますので、今後もそのような映画もあるということでぜひ応援もよろしくお願いします!」と、創作活動への決意を新たに表明した。

【画像】映画『ナイトフラワー』メインカット

アメリカ統治下の沖縄を描いた大友啓史監督
「人間の尊厳を巡る、忘れてはいけないものがある」

20年近く構想を温めてきたという大友監督は、「20年弱ぐらい、いつか絶対アメリカ統治下の沖縄を描いてやるとずっと思ってました。そこには人間の尊厳を巡る忘れてはいけないものが絶対にあるという直感がありました」と今作にかける情熱を語った。

一方でウクライナやガザを巡る近年の世界情勢を見ると「信念をぐらつかされる」こともあったと吐露。「私たちが信じてきた大事な価値がガラガラと崩れていくような感覚にとらわれて、そういう作品を作ってもどうなのか?と疑問がわくこともありました。それでも自分がそうした想いを作品に込めていくことはきっと出来るだろうと。そして、それに何か感じて頂ける方は必ずいるに違いない。そんなことを思いながら、全員で作り上げた作品です」と、現代に本作を届ける意義を力強く伝えた。「個人的には、そういうことに少しでもアプローチできるような作品を目指して作品づくりを続けていきたい」と今後の展望を語り、スピーチを締めくくった。

【画像】映画『宝島』メインカット

『ファーストキス』塚原あゆ子監督
「ゼロから何かを生み出す作業は孤独な闘い」

3番目に登壇した塚原あゆ子監督は、「まずは脚本を書いてくださった坂元裕二さんに御礼を申し上げます。小説もそうですが、ゼロから何かを生み出すという作業は本当に苦しい、時間のかかる孤独な闘いだということを、一緒に作ってきてくれる仲間から感じています」と創作活動の苦しさに言及。

さらに「今回も坂元さんがすごく悩まれて、1つ1つ台詞を吐き出してこられた。オリジナルなので、きっと向き合う相手は自分でしかなかったんだろうなと思うと、その込められた思いを、私と松(たか子)さんと松村(北斗)くんと、どれだけ身体を通して1つの表現として発揮できるのか、毎日緊張しながら苦しい思いで作りました」と脚本の想いを形にする側の苦労を吐露した。

一方で日本アカデミー賞の場に励まされたといい、「今日ここに来て、映画界の人たちがこれだけ逞しく強く、映画愛を語ってくださる文化の中、自分も端っこにいさせていただけるということが、次のやる気にも繋がりますし、素晴らしい未来につながると信じています」と、映画愛溢れる会場の空気のエネルギーへ感謝を述べた。

【画像】映画『ファーストキス 1ST KISS』メインカット

『爆弾』永井聡監督は“孤独”!?
キャストからのスルーに思わず嘆き節

永井聡監督は冒頭、「通り一編となるんですけれども、まずは感謝したいですね。いつも支えてくれているスタッフとキャストと、原作の呉勝浩先生、私がここに立っているのもみんなの力があっての賜物だと思っています」と仲間への謝辞を述べた。

しかし続けて、「ただ、先ほど受賞者の方々がスピーチして少しずつ監督の名前に触れているのに、まさか佐藤二朗さんが私に一言も触れないという……(笑)。」と、優秀助演男優賞を受賞した佐藤二朗からの見事な“スルー”に対して軽快なツッコミを入れ、慌てて佐藤が立ち上がり「ごめんね、ごめんね」と弁明する一幕に。さらに「まさか(新人俳優賞を受賞した)坂東(龍汰)くんまで私に触れないとは。あんな小さい女の子まで触れていたのに……。山田(裕貴)くんが(同作で演じた)類家が孤独と話していましたが、私のほうが孤独です(笑)」と自虐で畳みかけ会場の笑いを誘った。最後には「エンドロールに載らないようなエキストラの皆さんにも本当に感謝しております」と、すべての協力者へ最大限の賛辞を送った。

【画像】映画『爆弾』メインカット

“歌舞伎映画”のハードルに挑んだ李相日監督
「400年という伝統をいかに穢さずに作れるか」

李相日監督は、「三度に渡って身を削るような思いで小説を書き、それを映画として託していただいた吉田修一さんにまずは感謝を述べたいです。そして吉田さんが開いてくれた歌舞伎の世界、そこを繋いでいただいた(中村)雁治郎さんとのご縁……。歌舞伎の映画を作るということは、ハードルの高さはもうやればやるほど終わりがなくて。我々スタッフも、この400年という伝統をいかに壊さずに、穢さずに、でも映画としてどう捉えていくかってことを一人一人が本当に真摯に向き合って、自分の力を振り絞って作ってくれた作品です」とプレッシャーの中での現場を回顧。

続けて「協力していただいた歌舞伎の方たちも『映画だから』といったことは一切考えずに、一緒になってのめり込んでいただき、この作品に命を吹き込もうとしていただいたことに感謝しかありません。この作品が10年20年30年経っても皆さんの記憶の片隅に残るような映画になっていることを願って止みません」と関係者と作品への誇りを口にした。

【画像】映画『国宝』メインカット

最優秀監督賞は、李相日監督!
「美しい映画をつくりたい
」想いのもと、共闘したスタッフを賛辞

全ての監督の言葉が披露された後、前回『正体』で最優秀監督賞に輝いた藤井道人監督がプレゼンターとして登壇。藤井監督は「本日受賞された皆様、関係者の皆様、本当におめでとうございます。僕も受賞された作品を拝見させていただいて、たくさんの刺激と、感動と、悔しさをいただきました。来年は自分もしっかりとこの場に立てるように参加したいと思っています。そして今回受賞された監督の皆様と一緒により素敵な映画界を作っていけるよう一員として頑張っていきたいと思います」と真っ直ぐな言葉で未来を見据えた。

最優秀監督賞は李相日監督の手に。会場からの大きな拍手の中、輝くブロンズを受け取り再びマイクの前に立った李相日監督は「本当にこの映画、総力戦と言うか。俳優たちの献身がまずなければ全く成り立たないですし、先ほども述べたようにスタッフの力が本当に隅々までスクリーンいっぱいに迸っているからこそ、多くの人の心を打つことができたと確信しています」と改めて製作陣の尽力を讃えた。

【写真】第49回 日本アカデミー賞 授賞式 最優秀監督賞 (李相日監督)

 

続けて「自分には、まだまだ本当の意味での映画の作り方がわかっていません。でも何か『衝動』だけはあって、『こういう物を作りたい』『何かこうしたい』というその衝動だけで走っていることを多分、スタッフも俳優のみんなも信じてくれていて。いろんな人の信頼があって監督というものは存在できていることを今も感じております。この映画を吉田さんから託されて、最初に映画にしようと思ったのはもう7年ぐらい前かもしれません。その頃から既に人間同士の不信や、格差や信頼というものが人と人との間で揺らいでいる、人の心の中に“トゲ”が刺さっているような空気感があって。だからこそ『美しい映画』を、歌舞伎という伝統芸能の舞台の美しさだけでなく、人としてどこまでも極めていくという、人間だからこそある美しさを描きたいと思ってこの作品に臨みました」と世界的に不穏な空気にふれながら、自身の作品作りの信念を伝えた。

【写真】第49回 日本アカデミー賞 授賞式 最優秀監督賞 (李相日監督)

 

さらに、「やっぱり人って美しいもの見たいと心底思っているんだなとこの結果が教えてくれましたし、悪い方向へ行く流れを踏みとどまる力は映画にあるんじゃないかと思っています。まだまだ映画で闘う価値が自分にあると思っているので、共に闘って、映画で何か食い止めたいと心から思っております」と語り、映画への愛にあふれるスピーチを締めくくった。

[記者: 深海 ワタル / 写真提供: © 日本アカデミー賞]

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イベント情報

第49回 日本アカデミー賞 授賞式

■開催日: 2026年3月13日(金)
 
■会場: グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール「崑崙」
 
■司会: 羽鳥慎一(アナウンサー)、河合優実(女優)
 
■副賞協力: TASAKI
 
■協賛: 大東建託、Dolby Japan
 
【画像】日本アカデミー賞 (JAPAN ACADEMY FILM PRIZE)
 

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Cinema Art Online編集部

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