映画『ひとりたび』主演・岡本玲 インタビュー
【写真】映画『ひとりたび』主演・岡本玲 インタビュー

映画『ひとりたび』主演・岡本玲 インタビュー

5年の歳月を経て結実した、失いかけた思い出と向き合う物語。
手探りで挑んだ役作りの舞台裏と作品への想い

仕事に恋愛、人生に行き詰まった32歳の女性が、学生時代に経験した「初恋」の記憶を頼りに、自分の人生を見つめ直す姿を描いた映画『ひとりたび』。その主人公・大野美咲おおのみさきを演じているのは、2003年にモデルとしてキャリアをスタートさせて以降、映画『茶飲友達』(2023年)での主演をはじめ、ドラマ・映画・CM・舞台など多方面で活躍の幅を広げてきた岡本玲だ。

【画像】映画『ひとりたび』場面カット01

石橋夕帆監督が5年前に立ち上げた企画が、脚本の上村奈帆とともに丁寧に紡ぎ上げられ、2023年の撮影から完成を経て、ついに劇場公開を迎えた。

同作への出演を決めた経緯や役作りの舞台裏、故郷・和歌山でのロケのエピソード、解禁された予告篇や作品が持つ温かい魅力について話を伺った。

監督が温めてきた熱い想いと、一冊の漫画から始まった物語

5年前に石橋夕帆監督が立ち上げた企画が、長い時間を経てスクリーンへと結実した本作。主演を務める岡本玲が、監督から最初に手渡された一冊の“漫画”のエピソードとともに、作品の根底に流れる真摯な想いの始まりについて明かしてくれた。

―― まずは、今作への出演のきっかけを教えてください。

岡本: 結構前の話になるのですが、5年ほど前に、本作に出演している俳優の中山求一郎君から「石橋夕帆監督が岡本さんを主人公に映画を撮りたいと仰っていて、企画書も手元にあるらしいよ」と連絡をいただきました。

石橋監督とは何度かお会いしたことはあり面識はありましたが、ゆっくりお話ししたのはその連絡がきっかけでした。その際、「まだ実現するかどうかは定かではないけれど、こういう企画で岡本さんに出演してほしいと思っている」と企画書を渡していただいたのが始まりです。

お会いする前から、石橋監督が一緒に作品を作りたい俳優として私の名前を挙げてくださっているのをネットで拝見していて、すごく嬉しかったんです。等身大の作品を作りたいという思いや、この作品に懸ける監督の熱いお話を伺って、「是非一緒にやれたら嬉しいです」とお返事しました。

その後、コロナ禍ということもあってなかなかすぐには進まなかったのですが、2023年にようやく撮影ができることになり、という流れでした。

最初にお話を聞いてから、脚本の上村奈帆さんが参加されて脚本が出来上がっていく過程では、その都度読ませていただいていました。ただ、私が何か意見をするということではなく、情報を共有していただきながら、出来上がる過程をずっと側で見守ってきたという感じでした。

【写真】映画『ひとりたび』主演・岡本玲 インタビュー

―― 企画の段階からお話があったのですね。当時、石橋監督からはどのような作品の想いを聞いたのでしょうか?

岡本: 石橋監督は「完全なフィクションではなく、誰かの人生であり、自分の人生の一端が描かれているような作品をやりたい」と思われたそうです。監督が出会ったある女性の実体験がこのお話の種になっているのですが、監督は「その方が話されている姿がすごく目に焼き付いている」と仰っていました。「その出来事自体をそのまま描きたいのではなく、その話を聞いたという、そのこと自体を作品にしたいんだ」と。それを伺った時に「なるほどな」と思いましたし、すごく独特で素敵だなと感じました。

しかもその時、監督が「大まかなストーリーを漫画にした」と言って渡してくださいました。監督がご自身で構成を考えて漫画家の方に描いてもらったそうで、脚本よりも先にその漫画を手渡されました。内容もすごく分かりやすかったですし、新しい試みがたくさん詰まっていました。

実際にその漫画と出来上がった映画を観比べると、そのまま残っている部分もありますし、全然違うストーリーの流れになっている部分もあります。実話はあくまでお話の種であって、そこからイメージを膨らませて作っていったきっかけでした。

【画像】映画『ひとりたび』大野美咲 (岡本 玲)

手探りで臨んだ役どころと、中学生キャスト陣から受け取ったヒント

今作で演じる主人公の美咲は、これまでの出演作とは異なるアプローチが求められる役どころだったという。大野美咲という人物の印象や、手探りで挑んだ役作りのアプローチ、そして回想シーンを演じた中学生キャストたちの存在について話が及ぶ。

―― 実際に脚本が完成し、主人公の美咲の印象はいかがでしたか?

岡本: 石橋監督の作品は以前からすごく好きで拝見していたのですが、自分がこれまで任せていただいてきた役柄の空気感とは違うもののように感じていました。そのため、脚本を読んだ段階では、ちょっと自分に演じられるかどうか不安でしたし、怖さもありました。

監督が私の出演した舞台を実際に観て声をかけてくださったので、それなら「絶対に何かしら理由があるはずだ」と思って、怖がらずに「監督が大切にしてるものって何なんだろう?」とずっとその理由を探していた準備期間がありました。

これまでは、どちらかと言うと白黒はっきりつけたり感情の幅の大きい役柄を任せられることが多かったのですが、今回の美咲はそれが絶対に表面には出てきません。プライベートでもどちらかというと感情を表に出すタイプなので、美咲のような人物は初めてのチャレンジでした。

実は今日(このインタビューの取材日に)初めて聞いたんですけど、監督は私の舞台を観てくださった時に「内にフツフツとしたものを肌に感じた」と仰っていて。結果的に、“自分の外には出さないけど何か感情の揺れ動きがある”というお芝居にトライしたことが、きっと監督が想像していた美咲だったんだなって、改めて監督とお話しして思いました。

【画像】映画『ひとりたび』場面カット05

―― 美咲の中学生時代を演じた石山愛琉さんや、初恋の相手・圭一の中学生時代を演じた岩田奏さんの演技をご覧になっていかがでしたか?

岡本: 撮影現場でも拝見していました。まず初めに見たのはファミレスのシーンで、中学時代の回想シーンから現代の美咲、大人たちのシーンにシームレスに移るシーンがあるんですけれど、そのシーンは中学生の子たちの方が先に撮影してたので、それを見学させてもらって、色々なヒントをもらったりしました。

そのシーンは関東での撮影でしたが、和歌山の地方ロケに行ってからは、図書館のシーンも見学しに行きましたし、ずっと現場にいました。

映画の作品の中と同じように、自分の記憶として乗った上で大人のシーンに行けたという感じです。

【画像】映画『ひとりたび』大野美咲 (石山愛琉)

2人はすごく素敵でしたよ。2人ともピュアで、石山さんのその純粋に澄んだ瞳で人の話を穏やかに聞いている姿は「これきっと美咲だ」と思いました。

聞き上手というか、その柔らかさというか、その部分を私はずっと手探りで探そうとしてたので、石山さんのお芝居を見たからこそ「あ、これだ」「この子がそのまま大人になった姿でやってみよう」と、大きなヒントをもらいました。

相手役の岩田君も、不思議な魅力のある子で、世界観があって、なんか圭一っぽかったです(笑)。イメージ通りの圭一でした。

石橋監督がキャスティングをされているんですけど、「さすがだな」と完成した映画を観て改めて思いました。

【画像】映画『ひとりたび』場面カット02

―― 本作では圭一役の岩田奏さんにもお話を伺いましたが、「もし圭一が美咲が20年間想い続けてくれていると知ったら」と伺ってみたら、「切ないけれどきっとすごく嬉しいと思う」と仰っていました。

岡本: 可愛いですね(笑)。作中では明かされない部分ですけれど、もし圭一としてそう思ってくれるなら、本当に嬉しいです。映画を観てくださった方それぞれが色々な感想を抱かれると思うのですが、一つの素敵な答えとして、皆さんの心にも届くといいなと感じています。

【画像】映画『ひとりたび』荻野圭一 (岩田 奏)

映画『ひとりたび』岩田奏 インタビュー

故郷・和歌山でのロケーションと、アンサンブルが生み出した温かい空気感

同級生が集うファミレスの場面や、故郷である和歌山市で行われた撮影。共演者についてもお話を伺った。

―― 岡本さん自身が美咲を演じるシーンで共演されたキャストの皆さんとの撮影はいかがでしたか?

岡本: 大人の美咲の同級生となる女子3人組のうち、日高七海ちゃんは石橋組の常連さんですし、もう1人の里内伽奈ちゃんも七海ちゃんと日頃から仲が良い子だったんです。そのため、初対面の段階からすっかり打ち解けていて、何の苦労もなくあのファミレスのシーンを作ることができました。

上村さんの脚本がとにかく素晴らしいので、私たちが何かを気負うことなく、純粋にまっすぐ演じているだけで自然と素敵なシーンになりました。本当の同級生の集まりのような空気感のなかで、地元にずっと残っている二人と、東京から戻ってきた美咲というバランスが絶妙だったなと思います。

【画像】映画『ひとりたび』場面カット04

お父さんとお母さんを演じてくださった平田満さんと原日出子さんも本当に素敵でしたし、妹(大野綾香)役の坂ノ上茜ちゃんも、自由で可愛らしいお芝居をされる方で、演じていてすごく楽しかったです。よく「撮影で苦労した部分は?」と聞かれるのですが、一番最初に自分が不安に思っていただけで、撮影中は何も苦労はなかったですね。

―― 圭一のお母さん役の濱田マリさんとはいかがでしたか?

岡本: 圭一のお母さんを演じられた濱田マリさんは、お人柄が素晴らしい方です。昔から面識がある女優さんですが、1対1で共演するのは初めてでした。「ようやくがっつり対面できる」という思いでいっぱいでしたし、しかも本当に最後に撮ったんです。

ラストのシーンはクランクアップの日だったと思います。作品の最後を引き締めていただいて、本当に感謝しています。濱田さんはこの1日の撮影のために和歌山まで駆けつけてくださったので本当にありがたかったです。

【画像】映画『ひとりたび』荻野圭一の母 (濱田マリ)

 

―― 岡本さんは和歌山のご出身ですが、故郷・和歌山での撮影はいかがでしたか?

岡本: 和歌山でのロケはこれまでの別の出演作でも経験があったのですが、そちらは和歌山の南部の方での撮影でした。今回のように私の実家がある和歌山市内で撮影したのは初めてでした。私が和歌山出身ということで、おそらくロケ地に選んでくださったのだと思います。

【画像】映画『ひとりたび』場面カット03

観客として向き合った本編の確信と、広く届けたいメッセージ

完成した本編を観て抱いた率直な感想や作品の持つ独自の魅力とともに、日常のなかで少し立ち止まって心を癒やしたいすべての人々へ向けた温かい想いが綴られる。

―― 完成した本編を観ていかがでしたでしょうか?

岡本: シンプルに「好きな映画です」。そう言える作品に出会えたっていうのはすごく誇らしいし、嬉しいなって素直に思っています。

登場人物たちの心の揺れ動きや人との関わり方が、丁寧に、じっくりと繊細に描いている作品で、しかもそれがどこか一部分だけではないんです。

カメラもそうだし美術もそうだし、限られた予算の中でみんなが最大限の魅力を持ち寄って、この作品に詰め込まれています。

出演されている役者さんも本当に素敵な方ばかりですし、脚本の上村さんのストレートではなく遠回りしているけど結果的に心に深く伝わる言葉の表現だったり、ちょっとおしゃれな単語を使っていたり、耳に残る台詞の構成だったり。きっと観終わった後「思った以上に、観てよかった」と満足していただけると思います。

言葉を選ばずに言えば、いろんなところに“良さ”が散りばめられていて、それはフルスイングではなくて常にバントしてるような…でも気がついたらもうホームグラウンドを一周してるみたいな作品です。

【写真】映画『ひとりたび』主演・岡本玲 インタビュー

―― 最後に、これから映画をご覧になる方、お疲れ気味の皆さんにメッセージをお願いします。

岡本: ちょっとお疲れ気味なあなたに、サプリみたいな気持ちで「癒されませんか?」とお伝えしたいですね。

世の中には、自分の力で人生を切り開いてながら自己実現できる人たちもいると思うし、私も憧れます。でも、頭で分かっていても身体が動かない時があるじゃないですか、心が疲れていたりとか。そういう人の背中を押すような、「あなたの人生もそんなに悪いもんじゃなくない?」ってちょっとマル(◎)をあげるような作品だと思うので、日々の生活にお疲れの方にこそ、是非劇場で観てほしいです。

一度だけでなく、何度も何度も観るたびに新しい味わいや深みが伝わってくる、じっくりと噛み締めるご馳走のような、まさに「スルメ映画」だと思います(笑)。

[取材・文・スチール写真: Cinema Art Online 編集部]

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プロフィール

岡本 玲 (Rei Okamoto)

1991年6月18日生まれ、和歌山県出身。

2003年、第7回雑誌「ニコラ」専属モデルオーディションでグランプリを獲得しデビュー。以後、ドラマ・映画・CM・舞台と多方面で活躍中。

主な映画出演作に、『弥生、三月-君を愛した30年』(2020年/遊川和彦監督)、『茶飲友達』(2023年/外山文治監督/主演)、『たしかにあった幻』(2026年/河瀨直美監督)などがある。

またドラマでは、NHK連続テレビ小説「純と愛」(2012年〜2013年)、「わろてんか」(2017年〜2018年)など数々の話題作に出演。舞台では「レオポルトシュタット」(2022年)、「デカローグ」(2024年)、「トランス」(2024年)、「頭痛肩こり樋口一葉」(2024年)、「Come Blow Your Horn〜ボクの独立宣言〜」(2024年)などがあり、映画・舞台を軸に確かな演技力が高く評価されている実力派女優。

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映画『ひとりたび』予告篇(本予告)🎞

映画作品情報

【画像】映画『ひとりたび』ポスタービジュアル

《ストーリー》

主人公と同世代の3人が、将来への不安と過去の思い出の邂逅を繊細に紡いでいく。

東京で働く主人公・美咲。10年勤めていた会社に居づらくなり退職し、将来が見えないまま実家に帰る。地元で開催された同窓会で、初恋の相手が2年前に亡くなっていたことを知り――。空っぽだった美咲の心が、初恋の思い出で埋め尽くされていく…

 
出演: 岡本玲、長村航希、坂ノ上茜、岩田奏、石山愛琉、日高七海、里内伽奈、中山求一郎、長友郁真/濱田マリ、原日出子、平田満
 
監督: 石橋夕帆
脚本: 上村奈帆
 
撮影: 関 瑠唯
照明: 中田祐介
録音: 坂元 就
美術: 畠 智哉
スタイリスト: 小宮山芽以
ヘアメイク: 安藤メイ
助監督: 中村幸貴
制作担当: 小元咲貴子
編集: 小笠原 風
 
音楽: 山城ショウゴ
スチール: 松井綾音、おにまるさきほ
ビジュアルデザイン: 東 かほり
宣伝: 五味聖子
アソシエイトプロデューサー: 大江達磨
プロデューサー: 田中佐知彦
 
主題歌: ん・フェニ「omoutabi」作詞・作曲:ん・フェニ(ビクターエンタテインメント/CONNECTUNE)
 
配給: MomentumLabo
製作: Ippo
 
2024年 / 日本・アメリカンビスタ / 5.1ch / カラー / 94分
 
© 2026「ひとりたび」製作委員会
 
2026年6月27日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開!
 
映画公式サイト
 
公式X: @hitoritabi_film
公式Instagram: @hitoritabi_film
 
 

映画『ひとりたび』公開初日舞台挨拶 レポート

この記事の著者

Cinema Art Online編集部

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