イタリアの名匠、エルマンノ・オルミ監督が死去

【画像】エルマンノ・オルミ監督 (Ermanno Olmi)

イタリアの名匠、エルマンノ・オルミ監督が死去

生前のオルミ監督が『緑はよみがえる』のため
日本の観客に向けて残した動画メッセージで監督を偲ぶ

2018年5月7日(月)、『木靴の樹』(1978年/カンヌ国際映画祭グランプリ)『聖なる酔っ払いの伝説』(1988年/ヴェネチア国際映画祭金獅子賞)『ポー川のひかり』(2006年)『緑はよみがえる』(2014年)などで知られ、カンヌ国際映画祭や、ヴェネチア映画祭などで数々の賞を受賞したイタリアの名匠、エルマンノ・オルミ監督が、ヴェネト州アジアーゴの病院で死去した。86歳だった。

オルミ監督は、1931年7月24日ベルガモ生まれ。1959年に初の長編劇映画『時は止まりぬ』を発表。1978年、19世紀末ベルガモの農夫の生活を描いた珠玉の名作『木靴の樹』でカンヌ国際映画祭グランプリ(現在のパルム・ドール)を受賞。1988年には『聖なる酔っぱらいの伝説』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた。2008年にはオルミ監督の長年の功績を称え、ヴェネチア国際映画祭が栄誉金獅子賞を贈呈。世界の映画界から尊敬される存在として、数々の作品を世に送り出した名匠である。
最後の作品は、2017年に発表したドキュメンタリー「Vedete, sono uno di voi 」、2016年に日本公開された『緑はよみがえる』が劇映画の遺作となった。

オルミ監督は、1976年、田舎の自然に囲まれる生活を選び、『緑はよみがえる』の撮影地ともなったアジアーゴ高原に移り住み、その地で86歳の生涯を終えた。
なおイタリアからの報道によると、オルミ監督は数日前に体調を崩し、自宅のあるアジアーゴの病院に入院していたとのことで、葬儀は親族や親しい友人たちのみでとり行われる予定。

映画『緑はよみがえる』は5月22日(火)、6月9日(土)にWOWOWで放映される。

【画像】映画『緑はよみがえる』メインカット

劇映画の遺作となった『緑はよみがえる』公開の際に日本の観客に届けられた動画メッセージはこちら。

オルミ監督動画メッセージ「日本の観客へ」

監督プロフィール

エルマンノ・オルミ (Ermanno Olmi)

1931年7月24日ベルガモ生まれ。父は鉄道員で、1933年に家族でミラノに移り住む。ミラノ郊外の工場労働者たちとベルガモの田舎町トレヴィーリオの農夫たちの世界で子供時代を送る。大戦終了後、電力会社エディソンに就職し、水力発電所についての映画を撮ったのに続いて40作以上のドキュメンタリーを作った。

1959年に、村の夜警と都会の若い男性との友情を綴った「時は止まりぬ」で初の長編劇映画を発表。その後ミラノから来た若い二人の男が初めての仕事で出会う困難と夢を描いた「定職」は1961年ヴェネチア国際映画祭でOCIC賞と批評家賞をダブル受賞したほか、国際的な映画祭で数々の賞に輝いた。続く「婚約者たち」(1963年)では、北からの労働力の流出により南イタリアの工業化が急速に発展した後の顛末を描いた。この3本は、ドキュメンタリー出身ならではの観察力にもとづいた演出による初期の傑作三部作として評価が高い。

1978年、19世紀末ベルガモの農夫の生活を描いた珠玉の名作『木靴の樹』でカンヌ国際映画祭グランプリ(現在のパルム・ドール)を受賞。1988年には、ヨーゼフ・ロートの原作を忠実に映画化した『聖なる酔っぱらいの伝説』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。2001年カンヌ国際映画祭に出品した『ジョヴァンニ』は、16世紀初頭ジョヴァンニ・デ・メディチの神聖ローマ帝国軍との激しい戦闘を描いた作品。イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を9部門で受賞し、イタリアで大成功を収めた。

2005年、オルミは友人でもあるアッバス・キアロスタミ、ケン・ローチとともに、オムニバス映画『明日へのチケット』の一篇を監督。2006年には、時代に絶望した哲学教授がポー川近隣に住む人々から「キリストさん」と呼ばれるようになるまでを描く『ポー川のひかり』を発表。2008年、オルミ監督の長年の功績を称えヴェネチア国際映画祭は、栄誉金獅子賞を贈呈した他、ヴェニス・ディ部門が発表した「後世に遺したいイタリア映画100」で、フェリーニ、ヴィスコンティらと並んで『木靴の樹』、「定職」が選ばれた。

2011年には移民とキリスト教の問題について描いた『楽園からの旅人』を発表し、ヴェネチア国際映画祭で招待作として上映された。自らを「熱心なキリスト教徒」と呼ぶオルミ監督は、時に教会批判も辞さないが、その作品世界に通底するゆるぎない信仰心を指摘する批評家は多い。

1976年オルミ一家(妻のロレダナ・デット、子供のファビオ、エリザベッタ、アンドレア)は、都会の生活よりも田舎の自然に囲まれる生活を選び、ミラノを離れ本作の舞台でもあるアジアーゴ高原に移り住む。

【画像】エルマンノ・オルミ監督 (Ermanno Olmi)

映画『緑はよみがえる』作品情報

【画像】映画『緑はよみがえる』ポスタービジュアル

《ストーリー》

1917年、冬。第一次世界大戦下のイタリア・アルプス、アジア―ゴ高原。雪の山中に、イタリア、オーストリア両軍ともに塹壕を掘り戦況は膠着していた。敵は姿を見せないが、その息づかいが聞こえるほど近くにひそんでいる。劣悪な環境の塹壕に押し込められた兵士たちは、いつ落ちてくるかもわからない砲弾に怯え、戦意も失い、家路につくことだけを願っていた。彼らの唯一の楽しみといえば、家族、恋人から送られてくる手紙だけだ。 そんな時、厳しい戦況を知らない平地の司令部が出した理不尽な命令を携え、少佐と少年の面影を残す若い中尉が前線へとやってくる。通信が敵に傍受されているため、新たな通信ケーブルを敷けというのだ。命令を受けた大尉は、「土地の起伏も考えず地図をなぞっただけの計画だ。この月明かりの下で外へ出れば、狙撃兵の餌食だ!」と強く抗議し、軍位を返上してしまう。後を任されたのは何の経験もない若い中尉だった。彼は、想像とは違う戦争の酷薄さと、無力感に打ちのめされながらも、母への手紙にこう綴る。「愛する母さん、一番難しいのは、人を赦すことですが、人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」と・・・。

 
第65回 ベルリン国際映画祭 特別招待作品 
 
邦題: 『緑はよみがえる』
原題: 「Torneranno i prati」
監督/脚本: エルマンノ・オルミ (Ermanno Olmi)
撮影: ファビオ・オルミ (Fabio Olmi)
出演: クラウディオ・サンタマリア、アレッサンドロ・スペルドゥーティ、フランチェスコ・フォルミケッティ
 
配給: チャイルドフィルム/ムヴィオラ
後援: イタリア大使館
特別協力: イタリア文化会館
2014年 イタリア / カラー / 1:1.85 / 5.1ch / 76分
 
映画公式サイト
 

この記事の著者

堀木 三紀

堀木 三紀ライター

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧善懲悪モノでスカッと爽やかな気持ちになりたい人もいる。その人にあった作品を届けたい。日々、試写室に通い、ジャンルを問わず2~3本鑑賞している。(2015年は417本、2016年は429本、2017年は504本の映画作品を鑑賞)

主に映画監督を中心にインタビューを行っており、これまでにインタビューした監督は三池崇史、是枝裕和、阪本順治、岸善幸、篠原哲雄、大九明子、入江悠、本広克行、荻上直子、吉田照幸、ジョン・ウーなど30人を超える。

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