映画 「スティーブ・ジョブズ」 (Steve Jobs)

Steve Jobs Official Trailer

映画 「スティーブ・ジョブズ」 (原題: Steve Jobs)

21世紀の「世界」と「生活」を変革させた男の素顔

●あらすじ

アップル社の新型コンピューター・マッキントッシュ(Macintosh)のお披露目を行う製品発表会当日。同社の共同創業者でありマッキントッシュの開発者であるスティーブ・ジョブズは、自身が最高だと考えるプレゼンを実施するために、本番直前までスタッフたちとモメていた。技術的な欠点を一切受け入れず、独断専行で無理難題を主張するジョブズ。彼の情熱と偏執なまでのこだわりは、人の心に切りつけるような激しい叱咤に形を変え、次々と同僚や部下たちへ向けられていた。

●妥協なき探求と強烈な自己信奉

スティーブ・ジョブズがこの世を去ってから5年あまり。彼が私たちにもたらしたiPhoneやiPadは、オフィスや学校、あるいは電車など日本のいたる所で見ることができる。ジョブズを称賛した本だって街の書店に行けば、店頭にいくつも並べられていることだろう。そのくらい誰もが知るカリスマ発明者、あるいは経営者だ。ただ、ジョブズの成功や天才性しか知らない人は、おそらく本作「スティーブ・ジョブズ」を観賞して驚くに違いない。映画の中の彼は、巨大企業の創業者やカリスマ経営者にありがちなリーダーシップや人格者とはほど遠いところにいるからだ。
自分が信じた道を邁進するために一分(いちぶ)の譲歩もせず、周囲の人にもそれを強いる。そして徹底的に、ひたすらに攻める。平気で他人を無能呼ばわりし、軋轢が起こっても意に介さず、その言動は時に社内まで混乱させた。映画は、彼のイノベーターとしての功績より、言わばナマのクセある人間像にスポットを当てているわけだが、観ている人はそういう異能で異常な人物だったからこそ、今までに全くなかったコンセプトのツールを次々に生み出せたのだ、とやがて気づく。そう、「唯我独尊」を地でいった風雲児が、私たちのライフスタイルを一変させたのだ。

●みどころ

実は、2年前にも「スティーブ・ジョブズ」という同じ邦題の映画が公開されている(※原題は異なる)。
こちらはアシュトン・カッチャーが主演をつとめ、より伝記に近い形で創業からの苦闘、成功と挫折、そして復活までが時系列で丹念におわれている。
これに対して今回の「スティーブ・ジョブズ」は、マイケル・ファスベンダーをジョブズ役に配しながらマッキントッシュ、eXTcube、iMacといった彼の命運を左右した3つの新作製品発表会のみを舞台として使い、その舞台の裏側を明かすことによって、スティーブ・ジョブズの人間性を隅から隅まであぶりだしている。この演劇ばりの三部構成が非常にユニークで、天才と言われたジョブズのプレゼンにスポットを当てるのではなく、その舞台裏の方をクローズアップしているのが面白い。鬼才ダニー・ボイル監督の本領発揮だろう。ジョブズに対する予備知識がない人でもこの「3つの舞台裏」を観るだけで、終生変わることなかった彼の特化した人格が理解できるのではなかろうか。
もちろん、ただ変わり者であるだけで世紀の発明を成し得るわけもなく、ジョブズ一流の妥協なきこだわりと持続しつづけた闘争心も、映画全編を通じて節々に感じることができる。これも成功の大きな因子であったろう。彼は変人だったかもしれないが、自身の決めたポリシーとグランドデザインに対して、いささかも変節することはなかった。

ジョブズの功績の大きさは衆目一致することながら、その強烈な個性に対しては映画を観終えても賛否両論があるかもしれない。嫌悪感すら憶える人だっているだろう。そうした人たちの溜飲を下げるためか、アップル社のもう一人の創業者であるスティーブ・ウォズニアックがしばしば善玉役として登場し、ことあるごとにジョブズと衝突する。それに喝采を送るファンも多いのではないだろうか。ウォズニアック役をつとめたセス・ローゲンの好演にも喝采を送りたい。
生前のジョブズに近しい存在であった元アップル社上級副社長のジェイ・エリオットは「ジョブズには1000マイル先の水平線が見えていた。しかし彼にはそこに到達するまでに通らなければならない道の詳細は見えていなかった。それが彼の天才性であり落ち度でもあった」と語っている。
不完全な天才であり、落ち度があったからこそ、映画の素材としても光るのだ。

[文:藤田 哲朗]

映画 「スティーブ・ジョブズ」 予告篇

 

映画作品情報

邦題: 「スティーブ・ジョブズ」
原題: 「Steve Jobs」
監督/製作: ダニー・ボイル (Danny Boyle)
製作: マーク・ゴードン (Mark Gordon)
製作: ガイモン・キャサディ (Guymon Casady)
製作: スコット・ルーディン (Scott Rudin)
脚本: アーロン・ソーキン (Aaron Sorkin)
出演: マイケル・ファスベンダー (Michael Fassbender)
    ケイト・ウィンスレット (Kate Winslet)
    セス・ローゲン (Seth Rogen)
    ジェフ・ダニエルズ (Jeff Daniels)
    マイケル・スタールバーグ (Michael Stuhlbarg)
第88回 アカデミー賞 ノミネート
主演男優賞(マイケル・ファスベンダー)、助演女優賞(ケイト・ウィンスレット) 
第73回 ゴールデン・グローブ賞 受賞
最優秀助演女優賞(ケイト・ウィンスレット)、最優秀脚本賞(アーロン・ソーキン)
2015年 アメリカ / 英語語 カラー / 122分
配給: 東宝東和株式会社
© 2015 Universal Pictures

2016年2月12日(金) より全国ロードショー!

映画公式サイト

この記事の著者

藤田 哲朗

藤田 哲朗映画ライター・愛好家

大手出版取次会社で20代後半より一貫してDVDのバイヤー/セールスの仕事に従事する。
担当したクライアントは、各映画会社や映像メーカーの他、大手のレンタルビデオチェーン、eコマース、コンビニチェーンなど多岐にわたり、あらゆるDVDの販売チャネルにかかわって数多くの映画作品を視聴。
プライベートでも週末は必ず都内のどこかの映画館で過ごすなど、公私とも映画づけの日々を送っている。

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