映画 「グローリー」 (Glory/Slava)

映画 「グローリー」 (Glory/Slava)

映画 「グローリー」 
(英題:Glory / 原題:Slava) 

質素で孤独な生活を送る鉄道員が、ある出来事をきっかけに官僚の偽善的企みに巻き込まれてしまう。彼は自分のささやかな尊厳を取り戻そうと抵抗するが…。

ブルガリア出身のクリスティナ・クロゼヴァ、ペタル・ヴァルチャノフ監督コンビによる長編3部作品の第2部にあたる『グローリー』。
女性教師が夫の金銭のトラブルのために窮地に陥っていく様を、転がるようなサスペンスで描き、第27回東京国際映画祭での審査員特別賞をはじめ、数々の映画祭で受賞した前作『ザ・レッスン/授業の代償』(2014年)に続き、第29回 東京国際映画祭(TIFF)のワールドフォーカス部門に出品された、官僚に翻弄される善意の労働者と、彼らの人間性を省みない官僚との関係を、全く先の読めない巧みでスリリングな展開で描いた本作をレビュー。

時計とレンチの名誉

真面目で不器用な鉄道員が、権力者の策略に巻き込まれ、翻弄されていく様子が巧みに描かれている。

映画祭上映での日本語字幕では説明がなかったが、“Glory”とは、栄光、名誉の意味のほか、主人公の使っている腕時計のブランド名でもある。

これはドキュメントなのではないか、と勘違いしてしまうほど、この作品はリアリティに溢れている。
会話ひとつで、衣装や小道具ひとつで、人間性や状況を説明なしに伝えている。

中でも非常に魅力的なのが主人公である。ヤギのように伸ばしたヒゲに、決して綺麗とは言えない格好。
障害のせいなのか、人とうまく話すことができない。この社会において、彼は孤独で不器用な労働者なのである。

高級ブランドに身を包み、社会的地位も名誉もある権力者に比べると、印象はかなり良くないと言えてしまう。

しかし物語が進むにつれ、観客は彼に同情し、応援し、感情移入するだろう。
その眼光を見ただけで、彼の尊厳を感じせるだろう。それは俳優の演技に加え、細部のこだわり、それを切り取ってみせる監督の技術にほかならない。

器用に生きることがそんなに偉いのか。人として正しいのはどちらなのか。そんなテーマを突きつけられる。

これは遠い国のおとぎ話ではない。我々の周りにもある、普遍的な話なのである。

彼が欲しかったものはGlory=名誉ではない。その手首に巻かれたGloryでもない。
その裏に描かれた名誉なのだ。

[文: 後藤 直樹]

映画作品情報

邦題: 「グローリー」(仮題)
英題: 「Glory」
原題: 「Slava」
監督・プロデューサー・脚本: クリスティナ・グロゼヴァ
監督・プロデューサー・脚本・編集: ぺタル・ヴァルチャノフ
プロデューサー: コンスタンティーナ・スタヴリアヌー、イリニ・ヴユーカル
脚本: デチョ・タラレジコフ
撮影監督: クルム・ロドリゲス
プロダクション・デザイナー: ヴァニナ・ゲレヴァ
サウンド・デザイナー: イヴァン・アンドレエフ
音楽: ハリスト・ナムリエフ
衣装: クリスティナ・トモヴァ
出演: マルギタ・ゴシェヴァ、ステファン・デノリュボフ、キトダル・トドロフ

2016年 / ブルガリア=ギリシャ / ブルガリア語 / 101分 / カラー
© 2016 CINEMASCÓPIO – SBS FILMS – GLOBO FILMES – VIDEO FILMES

第24回 ハンプトンズ国際映画祭 コンペティション部門 長編ナラティヴ作品賞受賞
第69回 ロカルノ国際映画祭 インターナショナル・コンペティション部門 出品作品
第21回 釜山国際映画祭(BIFF) フラッシュ・フォワード部門 出品作品

第29回 東京国際映画祭(TIFF) ワールドフォーカス部門 出品作品

 
映画「Glory」予告篇

 © 2016 CINEMASCÓPIO – SBS FILMS – GLOBO FILMES – VIDEO FILMES

第29回 東京国際映画祭(TIFF) 公式サイト

この記事の著者

後藤 直樹

後藤 直樹俳優、ライター

映画を数日観ない日、それに関わらない日が続くと、体調が悪くなるという禁断症状が現れるほどの映画好き。
バック・トゥ・ザ・フューチャーは、土用の丑の日と同じくらいの感覚で観てしまう。
12月はダイハードシリーズとホームアローンが観たくなる。

★好きな映画
「ミッドナイト・ラン」(Midnight Run) [監督: Martin Brest 製作: 1988年/米]
「GO」 [監督: 行定勲 製作: 2001年/日]
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(Guardians of the Galaxy) [監督: James Gunn 製作: 2014年/米]

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