映画『セトウツミ』レビュー
【画像】映画『セトウツミ』メインカット

映画『セトウツミ』

おバカとネクラ関西男子、青春の暇つぶし 

《ストーリー》

瀬戸(菅田将暉)と内海(池松壮亮)は、クラスも性格も、好きな女の子のタイプも違う。瀬戸は部活を辞め空いた時間、内海は塾までのすき間時間をつぶしに来た河原で出会い、放課後を共に過ごすようになる。男子高校生二人が、肩を並べて階段に座り、喋る。

テンション高く恋の話しをしていたかと思えば、飼い猫の死にどっぷり落ち込んだりもする。青春の喜怒哀楽が詰まった、河原で過ごす毎日は輝く。

 

《みどころ》

この映画は、ほぼ会話のみという異色さにも関わらず、じわじわと人気を集めつつあるコミック『セトウツミ』(秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)の実写化である。コミック同様、関西弁で終始会話し続ける、瀬戸と内海の二人は高校2年生。大人でもなく、子どもとも言い切れない彼らは、互いによければもちろん肯定するし、違うとか変だと思ったら意見する。ゆるやかな関西弁で交わされるコミカルなやり取りには裏表も、変な同調もない。ただ話しているだけなのに心地よい、日常の物語だ。

コミュ障な内海とお調子者の瀬戸、タイプの違う二人は、互いを不思議と肯定できる。例えば内海は、学校で誰とも話さず「お前自分以外のやつは皆アホだと思っとるやろ」と瀬戸に言われるほど他人の気持ちに無頓着だ。そんな内海に瀬戸は初対面から「なぁなぁ聞いて」と一方的に近づいてきて、言いたいことをガーッと喋る。かと思えば、ポツリと内海が呟いた言葉に「お前天才か!」とキラキラした瞳で食いついてくる。

【画像】映画『セトウツミ』場面カット

先輩との確執で部活を辞めざるをえなかった瀬戸、部活に所属すること自体を面倒だと感じていた内海。正反対のようでいて、部活に所属しないという学校社会の常識とほんの少しずれたところが、むしろ共通点な二人。ゆるゆると一緒に時を過ごす内に内海は瀬戸の、瀬戸は内海の隣が居心地のよい場所に認定されたのだろう。

【画像】映画『セトウツミ』場面カット

時間には限りがあり、足りないと嘆くことが多い。しかし、何をしたらいいかわからず持て余す孤独な時間がある。一人で音楽を聞くことが最良な時間のつぶし方だった内海が、瀬戸とくだらないことを喋るため足早に河原へ向かう。その大半は瀬戸のペースなのだが、瀬戸と話す内海の表情は劇中、回を重ねるごとに柔らかくなっていく。他人のために使う時間も捨てたものじゃない、そんな風に思える友人がいる青春は幸せだ。

[ライター: 宮﨑 千尋]

© 此元和津也(別冊少年チャンピオン) 2013   © 2016映画 「セトウツミ」 製作委員会

映画『セトウツミ』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『セトウツミ』ポスタービジュアル

邦題: セトウツミ
 
監督: 大森立嗣 『まほろ駅前狂騒曲』『さよなら渓谷』 
 
原作: 此元和津也 (秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
 
出演: 池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ、鈴木卓爾、成田瑛基、岡山天音、奥村 勲、笠 久美、牧口元美、宇野祥平
 
2016年 日本 / カラー / アメリカンビスタ / 75分 / 映倫区分: G
 
配給: ブロードメディア・スタジオ株式会社
 

© 此元和津也(別冊少年チャンピオン) 2013   © 2016映画 「セトウツミ」 製作委員

2016年7月2日(土)
新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

映画公式サイト

この記事の著者

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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