映画『追想』(On Chesil Beach)

【画像】映画『追想』メインカット

【画像】映画『追想』ロゴ

(原題/英題: On Chesil Beach)

愛に必要なのは想像力、それを補うのが経験。

シアーシャ・ローナン主演映画『追想』が8月10日(金)に公開された。

原作は「アムステルダム」でブッカー賞を受賞し、数多くの話題作を生み出しているベストセラー作家イアン・マキューアンの小説「初夜」。結婚式直後の若い夫婦が初夜の躓きをきっかけに気持ちがすれ違い、別離を選ぶまでの6時間を繊細に描く。イアン・マキューアンはシアーシャ・ローナンが13歳という史上7番目の若さでアカデミー助演女優賞にノミネートされて注目を集めた『つぐない』(日本公開は2008年)の原作者でもある。今回は原作者自らが脚本を手掛け、新たな解釈を加えたという。

監督はドミニク・クック。BBC ドラマ「嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」を手がけた舞台演出家・脚本家で、今回が長編映画デビューとなる。

シアーシャの相手役にはビリー・ハウル。2018年1月に公開された『ベロニカとの記憶』で、主人公の若き日を演じた新進気鋭のイギリス人俳優である。

【画像】映画『追想』場面カット

物語は主人公2人が結婚式を終えたところから始まる。フローレンス(シアーシャ・ローナン)とエドワード(ビリー・ハウル)は美しい海岸のそばにあるホテルに到着。2人のぎくしゃくした様子から、結婚初日の緊張と興奮が伝わってくる。あまりの緊張に、食事を運んできたボーイがトラブルからワインを水で薄めたことにも気がつかないのだ。

そして迎えた初夜。エドワードはフローレンスの服さえスムーズに脱がすことができない。そんな初心な2人の背景を、回想シーンで描き出す。

【画像】映画『追想』場面カット

フローレンスは若きバイオリニスト。裕福な家庭に育ち、カルテットの一員となって大きな舞台でコンサートを開くことを夢見ている。一方、エドワードは教師の父を持ち、歴史学者を目指している。ある日、2人は偶然に出会い、恋に落ちた。

エドワードには事故で脳に損傷を負い、突飛な行動を取ってしまう母親がいたが、フローレンスは躊躇うことなく優しく接し、エドワードの家族に馴染んでいく。エドワードもフローレンスの父親のプライドの高さをうまく受け入れる。娘しかいない父親は経営する会社で彼にポストを与えた。スクリーンには幸せいっぱいの2人が映し出される。

しかし、彼の母親の障害、家柄の違いは結婚においてかなり高いハードルだ。フローレンスの親なら「苦労するのが見えている」と反対したくなるだろう。エドワードの親は息子が入り婿状態になるのを快く思わないだろう。それを真っすぐな愛情ですんなりと乗り越える。順風満帆だ。

とはいえ、結婚が近づくと不安になるもの。フローレンスは古めかしい書物を読んで、初夜の心得を学ぶ。不安や恥ずかしさ、躊躇い、愛し合う喜びへの期待、好奇心。フローレンスの複雑な心情をシアーシャ・ローナンが細やかな演技で表現する。

【画像】映画『追想』場面カット

そして、物語は初夜に戻る。愛し合いたい気持ちばかりが先行し、肉体が伴わない。こんなときは相手を責めるのではなく、むしろ労わる言葉が大事。しかし、2人とも自分が傷ついたことを悲しむだけで、相手の気持ちを慮る想像力が欠けていた。多少なりとも恋愛経験があったらなら、想像力のなさを補えただろうが、それもなかった。

【画像】映画『追想』場面カット

ラストのビーチシーン。カメラが引きながら、離れていく2人を捉え続ける。ふっとカメラが止まった瞬間、構図が変わる。別々に歩むことになった人生がこのワンカットシーンに凝縮されていた。余韻が残る秀逸なラストである。

 [文: 堀木 三紀]

映画『追想』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『追想』ポスタービジュアル

《ストーリー》

1962年、夏。世界を席巻した英国ポップカルチャー「スウィンギング・ロンドン」が本格的に始まる前のロンドンは、依然として保守的な空気が社会を包んでいた。そんななか、若きバイオリニストのフローレンスは歴史学者を目指すエドワードと恋に落ち、人生をともに歩むことを決意する。結婚式を無事に終えた2人が 新婚旅行として向かったのは、美しい自然に囲まれたドーセット州のチェジル・ビーチ。しかし、ホテルで2人きりになると、初夜を迎える緊張と興奮から、雰囲気は気まずくなるばかり。ついに口論となり、フローレンスはホテルを飛び出してしまうのだった。家庭環境や生い立ちがまるで違う2人であっても深く愛し合っていたが、愛しているからこそ生じてしまった“ボタンの掛け違い”。それは、今後の2人の人生を大きく左右する分かれ道となってしまう。フローレンスとエドワードにとって、生涯忘れることのできない初夜。その一部始終が明かされる……。

 
原題・英題: On Chesil Beach
邦題: 追想
監督: ドミニク・クック
キャスト: シアーシャ・ローナン、ビリー・ハウル、エミリー・ワトソン、アンヌ=マリー・ダフ、サミュエル・ウェスト他
原作・脚本: イアン・マキューアン
2017年 /イギリス / 英語 / 110分 / カラー / 5.1ch / スコープサイズ
配給: 東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
© British Broadcasting Corporation/ Number 9 Films (Chesil) Limited 2017 
 
TOHOシネマズ シャンテ他全国公開中!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @tsuisou_movie
公式Facebook:@tsuisou.movie

この記事の著者

堀木 三紀

堀木 三紀ライター

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧善懲悪モノでスカッと爽やかな気持ちになりたい人もいる。その人にあった作品を届けたい。日々、試写室に通い、ジャンルを問わず2~3本鑑賞している。(2015年は417本、2016年は429本、2017年は504本の映画作品を鑑賞)

主に映画監督を中心にインタビューを行っており、これまでにインタビューした監督は三池崇史、是枝裕和、阪本順治、岸善幸、篠原哲雄、大九明子、入江悠、本広克行、荻上直子、吉田照幸、ジョン・ウーなど30人を超える。

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