映画『響 -HIBIKI-』

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映画『響 -HIBIKI-』

響という天才小説家を描く方法

《ストーリー》

文芸誌「木蓮」新人賞に投稿された一篇の小説「お伽の庭」。厳しい目を持つベテラン作家たちをも魅了したその作品の作者は、鮎喰響(平手友梨奈)。若干15歳の少女であり、そして理屈にそぐわない、正しくないことを看過しない、それらを正すためには暴力も辞さない、という過激な性格の持ち主であった。生き方や作品に対し、自分にも他人にも一切の妥協やごまかしを許さない響の姿勢は、関わった人間たちの価値観をゆさぶり、そして生き方を見つめなおさせてゆく。

作家としての成功を意識せず、自分の書いた小説が面白いのか客観的な判断を求めて小説を投稿した響だったが、「お伽の庭」は話題を呼び、そして芥川賞・直木賞のダブルノミネートを機に、世間の注目が響に集まり始める。

《みどころ》

天才小説家」という高いハードルをいかに表現するか

マンガ大賞で2017年に大賞を受賞した柳本光晴の漫画「響~小説家になる方法~」を原作とした本作。天才小説家・響の出現によって激震が走る文芸界を描いている。作中では、響の小説がどんな内容で文体なのかはほとんど触れられない。“文学界に革命を起こすかつてない才能の天才”という存在を描くことで、この作者が描く小説とはどんなものか、観客の想像にゆだねるという方法をとっている。

響は破格の天才という形容を裏付けるために、個性的なキャラクターとして描かれる。中でも飛び蹴りやパイプ椅子での殴打など、暴力を振るう場面が印象的だ。
その行動はもちろん褒められたものではなく、作中でも世間から批判される描写があるが、暴力をふるうきっかけを振り返ると響は自身や友人に対して悪意ある言動をむけられたときに暴力で対抗しているという傾向がある。

人は自分の言動が人に与える力に対して無自覚過ぎはしないか、と気づかされる。

肉体的な攻撃だけが暴力ではない、振りかざされた言葉もパイプ椅子と同じように人を傷つけるということを、可視化して返している点が、小説家という「言葉」を大切にする世界に生きる響らしい発想だ。

原作漫画家も太鼓判、平手友梨奈という奇跡

この映画を語るとき、響を演じる平手友梨奈を外すことはできない。

孤独に戦う少女の凛々しいカッコよさを楽曲のテーマに掲げ、かわいさや笑顔を良しとするアイドルの世界に新風を起こしたのが平手の所属する欅坂46というグループだ。平手は、曲の世界観に没入し表現できる才能を評価され、21人のメンバーの不動のセンターとして活動している。

ジャンヌ・ダルクに始まり、リボンの騎士など、高潔で勇敢な少女像というのは文学や映画・漫画などで重要なモチーフとして描かれ続けてきた。

欅坂46の方向性を決定づけたデビュー曲「サイレントマジョリティー」は、自分らしく生きるためには、周りに流されず、孤独も恐れるな、という強いメッセージ性をもつ曲だ。原作者は、映画化の企画が出る前から同曲のMVの平手をみて、「響がいる」と感じていたという。

曲のテーマ性、それを体現するように表現に対して妥協を許さない平手の姿勢、そして年齢。響と平手の運命のような符合は、この響という特異なキャラクタ―に説得力をもたせ、映像化の成功に大きく寄与している。

また、ダークヒーローのようなカッコよさの反面、ともすれば暴力的で非常識な印象になってしまいそうなところだが、時折見せる等身大の少女らしさが、立体的でミステリアスな魅力をかもし出している。

普段は無表情な響だが、自分の小説を認めてもらえた時にははにかんだ表情を見せ、小説を語るときや好きな作家に会ったときには素直な笑顔を浮かべる。この不思議な少女をこんなにも魅了する小説とはどんなに素晴らしいものだろう、と思わずにはいられない。

小説の魅力をわかちあう世界観

響という天才の出現により、小説家たちは苦悩していく。

響の先輩であり、小説家の祖父江凛夏(アヤカ・ウィルソン)は響と正反対のキャラクターだ。響の才能にかなわないことを自らが一番痛感していて、嫌いになれば楽になれると思っていても、響の信頼を裏切ることはできず、愛憎の間で悩む。

若くして認められる才能があれば、長く続けても相応の評価に恵まれない作家もいる。工事現場でバイトをしながら作家を10年続ける山本(小栗旬)は、傑作ともいえる小説を書き上げるが、話題性のある響や凛夏の影に隠れ、日の目を見ることができない。

中でも印象的なのは、かつての天才小説家・鬼島(北村有起哉)だ。響という新世代の才能を目の当たりにし、自らの才能の枯渇を意識する。

彼らから感じるのは、それでも小説が好きである、ということだ。響の正当だが不躾な言葉や態度に憤らず耳を傾けてしまうのは、響の小説が面白く、その才能を認めているからだ。

「小説が好き」で「面白い小説を書けるということが小説家にとっての何よりの価値」という共通認識が、この個性豊かなキャラクターや世界観を繋いでいる。

本作には、本好きであれば共感してしまうシーンがたくさんある。

通学中時間を惜しんで歩きながら本を読んだり、一冊の本をめぐって面白いか面白くないか争い、好きな作家の新刊の発売日には部活を早めに切り上げて本屋に直行する。

いつも平坦な話し方の響が珍しく少し興奮した声色で「小説が好き」と話す場面は、初めて面白い小説に出会ったときのみずみずしい興奮と喜びを思いおこさせる素晴らしいシーンだ。小説の魅力を分かちあいたい、という気持ちが沸き上がる。

響をデビューへと導く担当編集者・花井(北川景子)は、作中で響の小説を「いつの時代かどこの国かもわからないのに、懐かしい風景が眼前に広がって、この世界で人が人として生きるってこういうことなんだな、と生き方の正解を感じた」と評している。

『響 -HIBIKI-』という作品自体もまた、規格外の天才小説家の生きざまとその生きる世界について、説得力を持って観客に見せてくれる。

[ライター: 金尾 真里]

映画『響 -HIBIKI-』予告篇

映画作品情報

出演: 平手友梨奈、アヤカ・ウィルソン、柳楽優弥、小栗旬、北川景子
 
原作: 柳本光晴「響~小説家になる方法~」(小学館「ビッグコミックスペリオール」連載中)
監督: 月川翔
脚本: 西田征史
配給: 東宝
2018年 / 日本 / カラー
© 2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 © 柳本光晴/小学館
 
2018年9月14日(金) 全国東宝系にてロードショー!
大ヒット上映中!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @hibiki_movie
公式Instagram:@hibiki_movie

この記事の著者

金尾 真里

金尾 真里ライター

神奈川県横浜市生まれ。
映画の舞台挨拶を観て、最前列で写真を撮ったり記事を書いている「あの仕事がしたい!」と思いライター講座に飛び込む。普段は都内でIT関係の仕事に従事。
好きな映画のジャンルは単館上映のニッチな青春ものとビジュアルだけでもゲラゲラ笑えるコメディ。
一番影響を受けた映画は『ベニスに死す』(原題: Death in Venice/1971年)。
2.5次元系と特撮関係はかれこれ10年以上追いかけていて、遠征にかこつけた旅行が趣味。

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