映画『ダイアモンド・アイランド』(Diamond Island) レビュー
映画 「ダイアモンド・アイランド」 (Diamond Island)

映画『ダイアモンド・アイランド』 
(原題:Diamond Island) 

アジアは若いうちに行け

青春とは、自分の可能性が開けている状況ではないかと思う。
その意味で本作はまさに青春映画である。

アジアの熱気が、このフィルムに焼き付いている。
日本のじめっとした熱気とは違う、カラッとした昼間の日差しや、夕暮れから陽が落ちるときの、薄らいで深みが増していく空の下に、鮮やかなネオンサインとギラギラした若者と喧騒が現れる、そのエネルギッシュな街並みが、この作品には焼き付いている。

舞台となるのはカンボジアの首都プノンペンの東端に建設中の一大商業施設「ダイアモンド・アイランド」。田舎から出てきてそこで働く若者のほろ苦い青春物語と言える作品。それは地方から上京した人間にとって、とても近い心理かもしれない。

5年ぶりに再会した兄が、カリスマ的に魅力的な男だった。
仲間も大切だが、恋人も家族も大切。

そんな中の、普遍的とも言える若者の悩みや挫折が、カンボジアの熱気と、夜の派手なネオンと絡み合って、躍動的に、それでいてどこか切なく描かれている。

ストーリーもさることながら、この作品の一番の魅力は、一種のそのエネルギーであると感じる。
成長とは、どこか悲しげで、いつだって切ないものなのだ。そんなことを感じさせてくれる作品である。

監督のデイヴィ・シューは、長編初監督作である前作のドキュメンタリー映画『ゴールデン・スランバーズ』(2011年)が、釜山国際映画祭、ベルリン国際映画祭ほか40以上の国際映画祭で上映され、本作も第69回カンヌ国際映画祭の国際批評家週間でSACD賞を受賞するなど世界中の国際映画祭で評価されている。
今後が注目されるカンボジア系フランス人監督である。

[ライター: 後藤 直樹]

映画『Diamond Island』予告篇

 © Aurora Films

映画作品情報

第69回 カンヌ国際映画祭 国際批評家週間 SACD賞受賞
第18回 ムンバイ映画祭 インターナショナル・コンペティション部門 ゴールデン・ゲイトウェイ賞受賞
第35回 ミュンヘン国際映画祭 国際インディペンデン部門 出品作品
第65回 メルボルン国際映画祭(MIFF) 出品作品
第32回 ハイファ国際映画祭 パノラマ部門出品
CPH PIX 2016 We Promise You Anarchy部門 出品作品
第29回 東京国際映画祭(TIFF) ワールド・フォーカス部門 出品作品
第21回 釜山国際映画祭(BIFF) アジア映画の窓部門 出品作品
第27回 ストックホルム国際映画祭 Discovery部門 出品作品
第27回 シンガポール国際映画祭(SGIFF) アジアビジョン部門 出品作品
 
邦題: ダイアモンド・アイランド(仮題)
原題・英題: Diamond Island
監督・脚本・プロデューサー: デイヴィ・シュー
脚本: クレール・モージャンドル
プロデューサー: シャルロット・ヴァンサン
共同プロデューサー: ハンネケ・ファン・デア・タス、ミヒャエル・メルクト、コンスエロ・フラウエンフェルダー、ソロス・スクム
撮影監督: トマ・ファヴェル
音響: ヴァンサン・ヴィラ
編集: ローラン・ルヴヌール
音楽: ジェレミー・アルカシュ、クリストフ・ミュセ
出演: ヌオン・ソボン、ノウ・チェニック
2016年 / カンボジア=フランス=ドイツ=タイ=カタール / クメール語 / 104分 / カラー
© Aurora Films
 

第29回 東京国際映画祭(TIFF) 公式サイト

この記事の著者

後藤 直樹俳優、ライター

映画を数日観ない日、それに関わらない日が続くと、体調が悪くなるという禁断症状が現れるほどの映画好き。
バック・トゥ・ザ・フューチャーは、土用の丑の日と同じくらいの感覚で観てしまう。
12月はダイハードシリーズとホームアローンが観たくなる。

★好きな映画
「ミッドナイト・ラン」(Midnight Run) [監督: Martin Brest 製作: 1988年/米]
「GO」 [監督: 行定勲 製作: 2001年/日]
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(Guardians of the Galaxy) [監督: James Gunn 製作: 2014年/米]

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