映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲&川島直人監督インタビュー

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲

映画『高崎グラフィティ。』
主演・佐藤玲&川島直人監督インタビュー

キャスト5人の自由な空気感を作品に映し出す
親と子のすれ違う気持ちは監督の実体験がベースに

映画『高崎グラフィティ。』が8月18日(土)より高崎先行で、8月25日(土)より全国で公開された。

本作は、群馬県高崎市を舞台に、卒業式を終えたばかりのクラスメイト5人の期待と不安を描いた青春群像劇。映像制作会社オフィスクレッシェンドが主催する映像コンテスト「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」で第1回グランプリを獲得した川島直人監督の予告編の映画化である。このコンテストは、任意のある地域を舞台に3分以内で制作した予告編を募集し、グランプリ獲得作品には制作費3000万円相当で本編となる映画を制作するチャンスを与える。主人公・美紀を演じた佐藤玲が日大芸術学部時代に「同期で集まって何かしよう」と川島監督に声を掛けたことがきっかけで応募。川島監督は本作で長編映画デビューとなった。

【画像】映画『高崎グラフィティ。』メインカット

予告編に引き続き、本作でも主人公・美紀を演じた佐藤玲、川島監督にコンテスト応募作制作時にも遡り、現場の様子などの撮影秘話などを聞いた。

―― 映像コンテスト「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」で第1回グランプリを獲得した作品の映画化です。佐藤さんは応募作のときから主演女優として参加されていましたが、関わることになったきっかけをお聞かせください。

佐藤: 私は日大芸術学部の演劇学科でしたが、学生時代にほかの学科の人たちと交流がありませんでした。卒業を控えた頃、みんながどんなことをしているのかを知りたくて、「同期で集まって何かしよう」と思ったときに、川島くんの名前を聞いたのです。川島くんに「何かしませんか」と連絡して、そこから始まりました。映画なのか、舞台なのか、パフォーマンスなのか。何にも決めないまま始めて、最終的に映画にたどり着きました。

「未完成映画予告編大賞」については川島くんが見つけてきました。予告編を作っているときは、とにかく時間がなくて、編集などを含めたら、受付締め切り日までギリギリだったので、何とか撮り切って応募した感じです。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲インタビュー

川島: 僕が偶然、母校のある江古田の駅で「未完成映画予告編大賞」のポスターを見つけたのです。大好きな大根仁監督や堤幸彦監督の作品を作っているオフィスクレッシェントドが主催だったので、「これしかない」と思いました。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』川島直人監督インタビュー

―― 佐藤さんから川島監督にアプローチしたのですね。学生時代から親しかったのでしょうか。

佐藤: 何となくは知ってはいましたが、お話ししたことはなかったです。

川島: 大学一年のときに1回だけあるよね。そこからずっと話していなかったけれど。

佐藤: 連絡先を知らなくて、友だちがツイッターで繋がっていたので、そこから連絡を取りました。

川島: ツイッターのダイレクトメッセージで、「一緒に何かやりませんか」というところからスタートしたって感じですね。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲&川島直人監督インタビュー

―― 応募総数285作品の中からグランプリを取ったときのお気持ちをお聞かせください。

川島: グランプリを獲得する自信はありませんでした。自分の好きなキャストとチームでやれた満足感があったので、グランプリを取らなきゃという焦りもなかったです。

発表は「未完成映画予告編大賞」のサイト上でした。さすがに発表当日は朝からそわそわして、食事ものどを通らない。芸事の神様と言われる「成子天神社」に行って祈願して、14時の発表を待ちました。ところが、14時になっても制限速度がかかって、なかなか開かないのです。やきもきしながら、パソコンの前で待っていたので、グランプリを取ったと分かった途端、わぁーと鳥肌が立ちました。

すぐにキャストやスタッフに電話しました。僕が興奮して、「取ったよ、取ったよ」と言っているのに、佐藤さんもカメラマンの武井くんも落ち着いていて、「うん、よかったじゃん」と。僕だけテンション上がっていて、周りが落ち着いていたのを何となく覚えています。

佐藤: グランプリが取れるとは思っていなかったので、川島くんから「取ったよ」と電話がきても、よく分からなくて、「へぇ、そうなんだ。よかったね」と他人事みたいでした。企画が少しずつ進んで行くうちに、「本当にグランプリを取ったから、映画になるんだ」と途中から理解しました。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲インタビュー

―― 予告編を作ってから本編を撮るというのは制約が多かったのではありませんか。

川島: 5人のキャラクターとそれぞれが何にぶつかるかについては決まっていました。しかし、話の全体像がきちんとできあがっていなかったので、予告編では最後まで見せなかったのです。

完成しきっていなかったところをクレッシェントの方に評価いただいたと後から聞いて、最後まで描かなくてラッキーだったと思いました。佐藤さんが演じた美紀に関しても、キャラクターは決まっていましたが、メインの5人を選んでから、脚本を仕上げました。

―― 佐藤さんは役へのアプローチをどのようにしましたか。

佐藤: 高校生だから今の自分より幼いだろうとは考えず、自分の中で考え方がまだ定まっていない女の子ということで演じました。

【画像】映画『高崎グラフィティ。』場面カットD

―― 監督から何かアドバイスをされましたか。

川島: 役に関しては、自然なものを撮るという認識でやっていたので、本人に任せました。5人それぞれのキャラや彼らがどう仲良くなっていったのかは、自然と画に出てくる。役作りというより、5人が仲良くなることが大事だったのです。

ただ、佐藤さんは予告編の制作から参加していたので、難しい立ち位置だったと思います。一役者というだけでなく、他の4人をまとめ上げなくてはという意識が本人の中にあったように見えました。僕も頼った部分があるので、もう少し役に集中させてあげればよかったと反省しています。

佐藤: 5人というより、監督を含めて6人で1チームでしたね。

最初はガチガチな部分もあったのですが、みんなでご飯を食べに行ったり、おしゃべりしたり。一緒にいる時間が長いと気心が知れるというか、気持ちが緩むというか。そんな感じでした。そんなみんなの空気感や自由なところが少しずつ入って、いい意味で学生映画っぽさも若干ある作品に仕上がりました。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲インタビュー

―― 監督を含め、6人が同じ世代だからでしょうか。

佐藤: 今でも付き合いがあります。ついこの間も、みんなでご飯に行きました。

川島: そういった仲の良さは作品にも出ていると思います。

―― 撮影中に起きたエピソードがあったら教えてください。

川島: 撮休が1日だけあって、僕はファミレスで脚本を直していました。そこに佐藤さんから「至急、相談がある」と連絡があったのです。てっきり、「現場のこの人の態度が嫌だ」とか、現場の進め方に対する不満などを言われると思って、「わかった、時間を空ける」と返事をしました。「どうしよう」とビクビクしながら、佐藤さんの好物の銀だこを用意して、万全な体制でスタンバイして、いざ、会って話を聞くと、思いっきりプライベートな相談でした。

「何なんだろうな、この時間は」と思いながら、話を聞くこと、2時間くらい。でも、それが僕には良かった。気が抜けたというか、クランクインから撮休まで、緊張の糸が張り詰めていたのが、大分緩みました。

佐藤: 撮影に関しては何も嫌なことはなかったんです。とてもナチュラルで、バランスがニュートラルな感じ。撮影中もみんなで喋っている合間の時間も、あまり変わらないくらい安心できる空気がありました。

川島: これが僕にとっての転機になりました。その日、高崎に残っていたのは、三河悠冴と萩原利久。2人に「合流するか」と連絡したら「お昼からずっとゲームセンターで遊んでいるのですが、メダルが止まらないです」と。それを聞いて、僕は力んでいるのがアホらしくなり、メインの5人を信じて楽しく撮ればいいと思えたのです。

そこから後半戦に入っていきましたが、その後の撮影は肩の荷が降りた感じでスムーズにできました。僕としても楽しんで撮れたかなと思います。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』川島直人監督インタビュー

―― 若者の鬱屈した気持ちや見えない将来への不安を描いた作品ですが、親たちも似たような気持ちを抱えていることが伝わってきました。親世代の気持ちをどう考えますか。

川島: 卒業後に何をするか決めていない優斗、東大に入れなかった康太には、自分と両親とのエピソードを盛り込んでいます。
父親と同じ道を目指そうかなと思っていたときに、「わざわざ継がなくていい」と言われたのですが、僕としては見放された気持ちでした。今となってみれば、自由にやっていいという意味だったのもわかる。でも、当時はぞんざいに扱われた気がしました。

高校を卒業して浪人するときには、「滑り止めの学校に行きなさい」と母から言われました。康太とお母さんのやりとりを実際に経験したわけですが、あのときの母親の気持ち、これも今になってみるとわかります。当時は全然わかりませんでしたけれどね(笑)。そういう親と子のすれ違う気持ちも描きたかったのです。

佐藤: 私は中学時代から、「女優をやりたい」と両親に話していました。すると親から「お前の人生設計図を企画書にして出せ」と言われたのです。それを真面目に考えて、考えて、考えて、15歳くらいのときに「日芸に行きたい」、「その前にこういう勉強をする」、「日芸に行ったらこういうことをしてみたい」と20歳くらいの分まで書いたのです。それで初めて、自分がどれだけ女優がやりたいかということに気づけました。また、親を納得させたということで、自信にも繋がりました。本当に納得したのかどうか、わかりませんけれどね(笑)。

今回、寛子の母親を演じた篠原ゆきこさんとお話ししたときに、「子どもはこういう気持ちになったりするものなのね」とおっしゃっていたのが印象的でした。役を通して、初めて知ることがたくさんある。想像するだけでなく、体験する。面白いですよね。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲インタビュー

―― 今後はどのような役を演じてみたいですか。

佐藤: 悪役というような固定的なイメージはありません。とにかく、いろいろなタイプの役を演じてみたいですね。いわゆるヒロインのような役をやったり、意地悪な子や個性的な子をやったり。お芝居だけでなく、声優のような声だけの仕事や違うものを表現することにも興味があります。

―― 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様にメッセージをお願いします。

[インタビュー: 堀木 三紀 / スチール撮影: Cinema Art Online UK]

プロフィール

佐藤 玲 (Ryo Sato) 

1992年7月10日生まれ、東京都出身。

2012年に蜷川幸雄演出の舞台「日の浦姫物語」の娘役で女優デビューを果たす。

2014年には映画デビュー作『おばけ』で初主演、MOOSICLAB2014/女優賞を受賞する。その後も『リュウグウノツカイ~17歳の妊娠サークル~』(2014年)、『イニシエーション・ラブ』(2015年)、などに出演するほか、『色あせてカラフル』(2015年)では主演を務めた。他の主な映画出演作に『少女』(2016年)、『沈黙-サイレンス-』(2017年)、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)などがある。テレビドラマの主な出演作は「表参道高校合唱部」(TBS/2015年)、「ON~異常犯罪捜査官・藤堂比奈子~」(CX/2016年)、「架空OL日記」(NTV/2017年)、「今からあなたを脅迫します」(NTV/2017年)など。現在放送中のドラマ「グッド・バイ」(BSジャパン)に出演中。待機作に『栞-Shiori-』(榊原有佑監督/本年、秋公開予定)、『それでも、僕は夢を見る』(山口健人監督/来年公開予定)など。演じる役によってガラリと印象が変わり、多彩な表現力を持ち合わせる女優。本作では、未完成映画予告編大賞への応募から積極的に参加し、そのまま本作でも主演を演じる。

【写真】映画『高崎グラフィティ。』主演・佐藤玲

川島 直人 (Kawashima Naoto)

1990年生まれ。千葉県九十九里出身。日本大学芸術学部映画学科映像コース出身。Guns Rock Inc.所属。

2016年、短編映画『始まりの鐘をならせ』で FOX短編映画祭にて最優秀賞を獲得。エンターテイメントに徹した演出と“人に寄り添う”映像で多岐にわたり演出をする。

映画『高崎グラフィティ。』川島直人監督

映画『高崎グラフィティ。』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『高崎グラフィティ。』ポスタービジュアル

《ストーリー》

群馬県高崎市を舞台に高校の卒業式を終えてからはじまる、5人の男女の数日間を描いた青春群像。幼なじみの、美紀、寛子、優斗、直樹、康太の5人は、高校を卒業してそれぞれが未来への夢や不安を抱えていた。そんな中、美紀の父親が進学のための入学金を持ったまま失踪。年上の彼氏との結婚生活を夢見ていた寛子も、彼氏への不信感を募らせる事態が。自動車修理工場を営む父との確執を抱えた優斗は、ふとしたはずみで犯罪に巻き込まれていく。直樹と康太もそれぞれに心に抱えた屈折を持て余していた。クラスメイトなのにそれぞれが抱える夢や悩みも知らなかった5人は、卒業パーティーの一夜をきっかけに衝突しあいながらも友情を育み、自らの人生の新たな一歩を踏み出していく…。

 
出演: 佐藤 玲、萩原利久、岡野真也、中島広稀、三河悠冴、佐藤優津季、冨手麻妙、狩野健斗、 山元駿、JOY、篠原ゆき子、玄覺悠子、戸田昌宏、奥野瑛太、川瀬陽太、渋川清彦
 
監督: 川島直人
脚本: 小山正太
音楽: 長尾洋輔
製作: 長坂信人
エグゼクティブプロデューサー: 神 康幸
プロデューサー: 利光佐和子、松永弘二
協力プロデューサー: 木城愼也、井上 潔
撮影: 武井俊幸
照明: 山本浩資
録音: 柳田耕佑
助監督: 東條政利
美術・装飾: 平原孝之
衣裳: 高橋幸希
ヘアメイク: 杉本妙子
キャスティング: 新江佳子
制作担当: 髙橋恒次
制作プロダクション: オフィスクレッシェンド
配給: エレファントハウス
© 2018 オフィスクレッシェンド 
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @takasaki_movie
公式Facebook: @takasakigraffitimovie
公式Instagram: @takasaki_movie

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