映画『STAR SAND -星砂物語-』ロジャー・パルバース監督インタビュー

【写真】映画『STAR SAND -星砂物語-』ロジャー・パルバース 監督インタビュー

映画『STAR SAND -星砂物語-』

ロジャー・パルバース監督インタビュー

本当に素敵なキャストに恵まれた72歳初監督作品になりました。

第二次世界大戦終盤の1945年の沖縄の小さな島を舞台に繰り広げられる非暴力と愛のストーリー「星砂物語」が、原作者でもあるロジャー・パルバース氏の手により日豪合作映画として映画化された。

1967年から日本に滞在し、約半世紀にわたって日本文化に親しみ、文化人との交流を重ねてきた作家であり、脚本家であり、演出家であるロジャー・パルバース氏が72歳で初監督を務めた映画『STAR SAND -星砂物語-』は、2017年に第9回沖縄国際映画祭と第21回キャンベラ国際映画祭での招待上映、全国各地での劇場公開を経て、DVDセル・レンタルが同時リリースされ、iTunes、Google play、Amazon Prime Video、U-NEXT、Video Market、DMM. COM、ひかりTV、J:COMオンデマンド、dTVでも現在配信中。

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』場面カット (織田梨沙、満島真之介)

シネマアートオンラインでは、この映画を現代に生きる一人でも多くの皆様へ是非届けたいと思い、主要キャストを演じた織田梨沙と吉岡里帆、そしてロジャー・パルバース監督の3名にそれぞれインタビューを行った。

映画『STAR SAND -星砂物語-』特集インタビューの第1弾として、ロジャー・パルバース監督のインタビューをお届けする。

―― 2015年に出版された原作小説「星砂物語」は、監督が1977年に沖縄の鳩間島を訪れ、“星砂”を初めて見たときに物語の着想を得たとお聞きしていますが、どのようにストーリーを膨らませていかれたのでしょうか?

まず“星砂”を見て思ったのは、「これはなんだろう?」と。鳩間島に住むおばあちゃんからそれは微生物の亡骸だということを聞かされて、「とても不思議な存在だなあ」と思いました。

【写真】映画『STAR SAND -星砂物語-』ロジャー・パルバース 監督インタビュー

それよりも、鳩間島には戦争の影響がほとんどなかったということを知りびっくりしたんです。台湾も石垣も爆撃を受け、沖縄本島も全滅しました。そんな激しい戦争の中で、まるで台風の目のような場所があったということに気がついて、それが僕の脳みそに刻み込まれたんですね。しばらくそのことを忘れて、1982年にクック諸島に行って映画『戦場のメリークリスマス』(1983年/大島渚監督)の助監督を務めた際、クック諸島にも戦争は一切来なかったのですが、憎しみ合いや殺し合いなど、残虐なシーンを撮影して、実際にここで戦争はなかったけど、「こんなに美しいところでそんな争いがあるというのはなあ…」と、その時にまた鳩間島のことを思い出したんです。そして、アフガン戦争(2001年)、イラク戦争(2003年)が勃発した時に、「ああ、また戦争をやるのだなあ…何か書かなくちゃ」と思い、その時に“星砂”のことを思い出しました。

劇中でアメリカ兵のボブ(ブランドン・マクレランド)も「みんな星空で繋がっている」と言っていますが、僕は天文学青年だったので星も好きでしたし、ずっと研究している宮沢賢治からも、天と地や星空はみんなつながっているという発想が脳の隅っこから浮かんだのです。そして脱走兵を主人公にする物語は前から考えていましたが、どこの国でも脱走兵がヒーローとしてみなされている小説は一つも見当たりません。ましてや中心人物になることなどあり得なかった。しかも二人も登場するなんて(笑)。

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』場面カット (ブランドン・マクレランド、満島真之介)

『戦場のメリークリスマス』でも敵を愛するシーンはありますが、もしかしたら味方よりも敵との方が、何か繋がれるものがあるかもしれないと思いました。ジャン・ルノワール監督の『大いなる幻影』(1937年)でもそうです。そういった要素をすべて込めました。1977年に沖縄鳩間島の地を踏んでから2008年までかかりましたので、実に着想から執筆に着手するまでには30年近くかかったわけですね。物語に関しては日本語で書いて、その後英語でも書きました。2016年に英語版を出版したら、どういうわけだかちょっとしたベストセラーになりました。僕はそのことが腑に落ちなくてすごく驚きました。アメリカ人にとって第二次世界大戦というのは絶対的なものですから、脱走兵が出るというのはアメリカ人は嫌うんじゃないかなと思っていたので。

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』場面カット (満島真之介、ブランドン・マクレランド)

映画化については、2014年1月に映画を作りたいという話をして、そこから2016年6月のクランクインまで約2年半かかりました。72歳で初監督です。映画監督になりたかったけどなれなかった熟年の方々にとっても何かしら励みになれる存在であったらいいなと思います。

―― 本作を象徴する存在として、“星砂”ともうひとつはその星砂を容れる“牛乳瓶”だと感じました。この二つの相性が非常にマッチしていましたが、最初から牛乳瓶で考えられていたのでしょうか?

そうです。星砂よりも牛乳瓶の方が大事です(笑)。小説の方が映画よりも、より細かく牛乳瓶について描写しているのですが、小学校の生徒たちが使っていた牛乳瓶を先生が保管しているわけですね。つまり保管してある牛乳瓶にはそこの小学校の生徒たちが戦争に行って死んでしまったのではないかなという意味合いを暗に込めています。その牛乳瓶に、命が宿っていると映画でも小説でも、先生は言っているわけです。戦時中の牛乳瓶は小さいです。カット宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』でも主人公のジョバンニがお母さんのために牛乳瓶を持っていくラストシーンがあり、親友のカムパネルラが死んだということを受け入れ、諦めて走って家に帰るわけです。実際に僕の小説のラストは似たような描写となっています。だから宮沢賢治の亜流ですね(笑)。

【写真】映画『STAR SAND -星砂物語-』ロジャー・パルバース 監督インタビュー

―― そういったお話を伺っていると、監督の日本文化への理解と愛をとても感じます。
監督が1967年に初来日されてから半世紀が過ぎましたが、その間に井上ひさし氏や坂本龍一氏、隈研吾氏をはじめ、多くの文化人の方々と交流も生まれたと思います。本作では坂本龍一氏が音楽を担当していますが、どのような経緯からだったのでしょうか?

多くの文化人の方々と交流を重ねてきました。本当に僕は果報者です。1960年代の新宿文化を自分の目で見れたことは僕にとって宝物です。1920年代のパリだったり、1960年代の東京というのは文化の魅力に満ち溢れていました。

僕は音楽業界の人ではないので、音楽関係の人をあまり知らないんです。でも坂本龍一さんは『戦場のメリークリスマス』で知り合って以来、交流を重ねてきました。日本で会ったりもするし、『星砂物語』ができたときも本を送り「素晴らしい」と褒めていただきました。そうでなければ今回のオファーをしないし、共感してもらっていなければ良いものは創れないと思います。冒頭のシーンもそうですが、(織田梨沙演じる)洋海が1956年に洞窟を再訪するシーンは、彼のあの音楽がなければ成り立ちません。

また、演出に関しては、僕の演出でなく、女優の二人が素晴らしいんです。織田梨沙さんも吉岡里帆さんもすごいですよ!(何回も繰り返し二人を絶賛)本当に素晴らしかったです。

―― 配役に関しても監督自らされたのでしょうか?
また、キャストの皆さんとはどのようなコミュニケーションをとりながら映画作りをされたのでしょうか?

配役に関してはもちろんそうです。映画の80パーセントはキャストで決まりますから。僕はキャストにすごく恵まれましたね。最初僕は織田さんのことも吉岡さんのこともよく知らなかったのですが、プロデューサーが真剣に選んでくれて、その上でしっかり配役させてもらいました。満島真之介さんは本作の舞台の沖縄出身です。かねてより交流のあった 野田秀樹の芝居に出演していたので、その時にお会いしまして、満島さんから、「どういう話ですか?」と訊かれたので、僕は自己紹介する前にiPadで写真を見せました。そしたら「あ、伊江島だ!!」と満島さんが反応して、もう彼はこっちのものだと(笑)。

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』場面カット (満島真之介、織田梨沙)

結局、監督と演出家というのはどういうものかというと、テレビなどで役者を叱るシーンがよく出てきますが、そんなの僕は監督とは思わないんです。正真正銘の監督は、役者の周りに真空を作って、どんなチャレンジでもできるような、どんなリスクも犯せるような雰囲気を作るわけです。なんでもやっていいんですよって。ヘマをするとみっともないとか思わせませんよ。自由な発想のままに、リスクをとったほうがいいんです。もしかしたら役者自身が気づいていない自分の才能が湧き出てきて、特別な演技ができるかもしれない。それが良い監督だと僕は思います。
だから、編集しながら映像を観て「俺はキャスティングの天才だな」と思いました(笑)。

【写真】映画『STAR SAND -星砂物語-』ロジャー・パルバース 監督インタビュー

―― 戦争という悲惨な経験をされた日本人が毎年減っておりますが、本作は戦争の恐ろしさをキャストの方々、特に寺島しのぶさんが克明かつ強烈なメッセージとして与えてくれているように感じます。

寺島さんは本当にすごい演技をしてくれました。彼女のシーンだけ、あえて浮いているように演出しました。そこだけは演劇風ですね。ただし、そのシーンでほとんどの間、映しているのは洋海(織田梨沙)の顔なんですよ。アメリカ人であるボブを愛している洋海が、アメリカ人は全員ケダモノだと罵倒する寺島さん演じる儀間の言葉にどう反応するのか、どんな表情で聞いているのか、それを撮りたかったんです。織田さんもまた、本当に素晴らしい表情を見せてくれました。

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』場面カット (寺島しのぶ)

―― 織田さんの演技は本当に際立っていました。織田さんの表情から監督がこの映画に込めた「戦争は二度としてはいけない」というメッセージが伝わってきました。

それでしたら、この映画は成功です。本当に嬉しく思います。

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』場面カット (渡辺真起子、織田梨沙)

―― 次回作の構想がありましたら是非お聞かせください。そして、パルバース監督にとって日本はどんな国でしょうか?

次作も予定していまして、舞台は日本です。こんなに素晴らしい国に50年以上住むことができて本当にありがたいですよ。この50年間の日本の変化に関してですが、隔世の感がありますね。日本人はそんなに変わらないけど、国は大分変わりました。僕は若者が一番好きです。彼ら彼女らは才能、可能性の塊です。この国をダメにしたのは団塊の世代、政治家の人たち。いまの若者たちは素敵だと思いますよ。

―― 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。

[インタビュー: 蒼山 隆之 / スチール撮影: 内田 智之]
[取材・撮影協力: ベリーベリースープ 原宿神宮前店]

プロフィール

ロジャー・パルバース (Roger Pulvers)

1944年米国生まれ。作家・劇作家・演出家。ハーバード大学大学院ロシア地域研究所で修士号を取得。ポーランド、フランスへの留学後、1967年よりほぼ半世紀を日本で過ごし、執筆活動を開始。大島渚監督との知遇を得て映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)の助監督を務める。著書に、「もし、日本という国がなかったら」、「驚くべき日本語」、「英語で読み解く賢治の世界」など多数。小説に「新バイブル・ストーリーズ」、「旅する帽子ーー小説ラフカディオ・ハーン」、「ライス」、「ハーフ」など。宮沢賢治や井上ひさしの作品の英語翻訳にも数多く携わり、その功績から、第18回宮沢賢治賞(2008年)、第19回野間文芸翻訳賞(2013年)、第9回井上靖賞(2015年)、旭日中綬章(2018年)を受賞。また映画脚本に関しては、アニメ映画『アンネの日記』(1995年)、映画『明日への遺言』(2008年)で、共同脚本家として参加、後者で第27回テヘラン国際映画祭 脚本賞を受賞。日本の地を踏んでからちょうど50周年となる2017年、執筆した書籍は50冊を超えることとなった。

映画『STAR SAND -星砂物語-』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『STAR SAND –星砂物語-』DVDジャケット

《ストーリー》

1945年の沖縄。戦火から遠く離れた小島に渡り暮らし始めた16歳の少女・洋海(ひろみ)は、洞窟で日本軍とアメリカ軍からの脱走兵、隆康とボブに出会う。隆康とボブ、そして彼らの世話を焼く洋海の間には、不思議な関係が築かれてゆく。

ある日、戦いで脚を負傷し、除隊を余儀なくされた隆康の兄・一(はじめ)が、養生のために洞窟にやって来るが、それは悲劇の幕開けだった──

2016年、東京。大学生の志保は、卒業論文のために教授から一冊の日記を手渡される。それは、戦時中に沖縄の小島で暮らしていた少女のものだった。志保は日記を読み、そこに封印されていた過去の出来事にわれ知らず迫ってゆく……。

 
第9回 沖縄国際映画祭(OIMF) 特別招待作品
第21回 キャンベラ国際映画祭(CIFF) 正式招待作品
 
出演: 織田梨沙、満島真之介、ブランドン・マクレランド、三浦貴大、吉岡里帆、寺島しのぶ、渡辺真起子、石橋蓮司、緑魔子
監督・脚本: ロジャー・パルバース
原作: ロジャー・パルバース「星砂物語」講談社刊
主題曲: 坂本龍一
© 2017 The STAR SAND Team
 
DVD 好評発売&レンタル中!
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映画公式サイト

公式Twitter: @starsand_movie
公式Facebook: @TheStarSandTeam

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