映画『榎田貿易堂』主演・渋川清彦インタビュー

【画像】映画『榎田貿易堂』主演・渋川清彦

映画『榎田貿易堂』主演・渋川清彦インタビュー

このままじゃ ダメだってことだけは、わかるっつうか。
迷えるオトナたちの喜怒哀楽を描いたヒューマンコメディ!

『下衆の愛』(2016年)『テラフォーマーズ』(2016年)『追憶』(2017年)など、インディペンデント映画から商業映画まで、その独特の存在感からオファーが絶えない注目の俳優・渋川清彦が主人公を演じる『榎田貿易堂』が、2018年6月9日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開した。

監督・脚本・編集を務めたのは、飯塚健(『笑う招き猫』(2017年))。共演に伊藤沙莉(『獣道』(2017年))、森岡龍(『密使と番人』(2017年))、余貴美子(『後妻業の女』(2016年))。「飯塚ワールド」の集大成とも言えるユーモラスな会話と個性派俳優たちのアンサンブルが、人生に惑い、もがく大人たちの喜怒哀楽を軽やかに描き出し、あたたかく包み込む。

「扱う品はゴミ以外。何でも来いが信条さ」

地元群馬に帰って来て、あやしいリサイクルショップを経営する40代バツ2の男・榎田洋二郎。そのぐだぐだしつつも不思議な魅力を放つ主人公を好演した渋川清彦さんに、作品の見どころを伺った。

【画像】映画『榎田貿易堂』

―― 劇中に登場する、チン○の形をした美術品が並ぶ「珍宝館」に驚きました。

珍宝館は、群馬県の伊香保温泉に通じる道中に実際にあるんですよ(笑)。俺が知っている限りでは30年以上続いています。あの室内は、劇中では色のついたライトが照らされていますが、普段は蛍光灯の白い光の下に珍品が美術品として並んでいます。熱海の秘宝館とはまたちょっと違った独特な雰囲気なんです。飯塚監督に「あそこ面白いんだよ」って言ったらノッてくれて。館長さんに話をしたら撮影にご協力頂けることになりました。

ちなみに、あの館長役で出演していた女性は本物の館長さんで、「ちん子さん」っていうんです。取材とかもよく受けている名物の人で、お客さんの股間を必ず触るんですよ。男女関係なく(笑)。滝藤(賢一)君も余(貴美子)さんも触られてたかな。二人とも笑ってましたけど。

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―― 珍宝館をはじめ、舞台となる群馬県のロケーションが生き生きと写し出されていました。故郷を想う渋川さんと飯塚監督の気持ちが画面の隅々から感じられて、本作への強い思い入れが伝わってきました。

飯塚監督も俺も、群馬県渋川市の出身で、同じ高校の卒業生なんです。さらに言えば小学校も一緒で。同郷の監督と地元で映画が撮れるなんて最初で最後だと思ったので、思い入れはすごくありました。

撮影期間中は、自分が生まれ育った町で朝起きて現場に行くという日々だったので、仕事をしているのか遊んでいるのか、ちょっと不思議な感覚がありました(笑)。床屋のシーンの時に来ているお客さんとか温泉の石段街にいる人とかは、うちのおばちゃんや後輩だったりします。

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―― 地元でぐだぐだと暮らす主人公の榎田像が、過去の主演作『モーターズ』(2015年)の、郊外でなんとなく生きている男にちょっと似ていると思いました。ぐだぐだでいうと、『お盆の弟』(2015年)の主人公も思い出します。

たぶんこういう役が多く回ってくるのは、俺自身の根本がぐだぐだしているからなんだと思います。榎田みたいに。あまり忙しいのは好きじゃないですし。きたものをやるっていう感じなんですよね。たまにやりすぎて忙しかったりしますけど(笑)。

『お盆の弟』と何か似たものを感じたというのであれば、それは本作と『お盆の弟』のプロデューサーが同じ狩野義則さんだからなのかもしれません。ちなみに狩野さんも群馬県出身なんです。『お盆の弟』の監督の大崎(章)さんも同郷でした。ストーリー自体は本作と『お盆の弟』とでは全然違いますが、ぐだぐだ男という役どころの雰囲気は似ているかもしれません。

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―― オファーに対しては、きたものをやることが多いんですか?

そうですね。脚本を読んで断るというのはあまりないです。今回の場合は、狩野さんが「KEE君(渋川さん)またやろうよ」みたいな感じで声をかけてくれて。普通だったら狩野さんが代表を務める事務所(Breath inc.)に所属する役者を映画の主役にキャスティングしてもいいはずなんですけど。

狩野さんの「一緒に群馬を盛り上げようよ」って気持ちが伝わってきて、『榎田』は何も考えずに「やる」と決めました。

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―― 初めての飯塚監督の現場はいかがでしたか?

飯塚監督の独特のテンポ感ってあるじゃないですか。ちょっとコントに近かったりする感じ。そこがすごく面白かったです。滝藤君や沙莉(伊藤沙莉)、余さんは飯塚監督の現場に慣れていて、事前に脚本の読み合わせをしっかりとやるとかではなくて、お互い相手の演技を受けながらポンポンとリズムが出来あがっていった感じです。

たぶんここはこのテンポ感でいくんじゃないかなってなんとなく予想して行くと、「やっぱりそうきたか」って。弁当の買い出しを誰が行くのか決めるじゃんけんのシーンのノリなんかは結構その場で皆のテンションがピシッと揃って、演じていて楽しかったです。滝藤君はその場の間合いで演じるのが抜群で、沙莉も若いんだけどすごくうまかったです。

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―― 喋って、返しての小気味よい会話のシーンが続いていくので、テイク数がどのくらいだったのか、画を作り込んだのかが気になりました。

テイク数はあまり多くなかったと思います。飯塚監督は撮影直前に役の感情について多少言うことはありましたが、基本そうしないところでは人の演技を見ながら自由にやらせてもらいました。脚本がまずしっかりしていましたし。

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―― 渋川さんが脚本を読んでこうやろうと想像していたものと違う演出を飯塚監督がして、おお!と思ったシーンはありましたか?

俺の役についてはそこまでなかったんですが、滝藤君の役への演出についてはちょっと意外だと思うシーンがありました。「ここでそんな感情を出させるんだ!」って。

終盤の、俺が自店を閉める云々の話をした後の石段街の場面で、滝藤くんが自分の将来について喋るところがあるんですけど。その辺りの台詞の感じを聞いた時に思わずグッときて、泣くとかではないんですけど、なんかちょっとやばいかもってなったのはありました。クライマックスで、あんなトーンで自分のこれからのことを語るんだって。ちょっと焦りました。

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―― あそこは確かにぐっときました。何気ない感じで言う台詞の一つひとつにいいものが沢山あります。他に印象に残った台詞はありますか?

これもまた滝藤君の台詞で、旅館街の石段を登る母親役の根岸(季衣)さんの背中を押すシーンとかもそうなんですけど。

根岸さんが「あんたいつ東京に帰るの?」って何気なく滝藤君に聞くところで、「……『帰る』か」「俺は今、『帰って』来てるんだけどな……」っていうような台詞を彼が言うんです。実際に俺も地元には「帰る」、東京には「戻る」っていうのを何となく意識していて。それはどちらも同じ意味なのかもしれないですけど、なにか違うと思うんです。生まれ育った町に「帰る」。その台詞が、この映画の中で自然に使われていていいなと思いました。細かな台詞や佇まいがこの映画全体の雰囲気を支えていて、あったかいものが胸に残るというのは、そういう細部の演出の積み重ねにあるんだと思います。

【画像】映画『榎田貿易堂』

―― 榎田のようにぐだぐだしている面があると仰る渋川さんですが、今年は本作含めて、出演映画が目白押しです。

6月9日に『榎田貿易堂』があって、6月16日に『傀儡』、6月30日に『パンク侍、斬られて候』、7月7日には『ルームロンダリング』と『菊とギロチン』が同時に公開します。あとは『高崎グラフィティ。』と『泣き虫しょったんの奇跡』が今秋公開予定です。

実は今年は、『ポルノスター』(1998年)の初出演から始まって、活動20年目にあたる年なんです。撮影時期はそれぞれバラバラだったんですが、こうも公開時期が節目の年に揃うというのは不思議というか、なにかラッキーな感じがします。

【画像】映画『榎田貿易堂』主演・渋川清彦

―― 榎田ほどではないでしょうが、これからもころころと、声をかけてもらったものをやるという感じで、活動を続けられるんですか?

そうですね。音楽活動から始まって、モデルも役者もきたものをやってきたって感じなので、別になにかを決めずに、これからもうまい具合に転がって行こうと思っています。

―― ラストの榎田の、軽やかな佇まいが重なりますね。

ただ、あいつみたいにふらふらしすぎて、事件に巻き込まれることがないようには、気をつけます(笑)。

[インタビュー: 大久保 渉 / スチール撮影: 平本 直人]

渋川清彦さんからメッセージ

プロフィール

渋川 清彦 (Kiyohiko Shibukawa)

1974年生まれ、群馬県渋川市出身。KEE としてモデル活動後、1998年に豊田利晃監督作『ポルノスター』で映画デビュー。その後も『青い春』(2002年)、『ナインソウルズ』(2003年)、『蘇りの血』(2009年)など豊田組に多数出演。他『せかいのおわり』(2004年/風間志織監督)、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年/若松孝二監督)、『フィッシュストーリー』(2009年/中村義洋監督)、『ゴールデンスランバー』(2010年/中村義洋監督)、『生きてるものはいないのか』(2012年/石井聰亙監督)、『11・25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012年/若松孝二監督)など出演作品は多岐に渡る。主演作に『そして泥船はゆく』(渡辺紘文監督)、『お盆の弟』(2015/大崎章監督)、『モーターズ』(2015年/渡辺大知監督)、『下衆の愛』(2016年/内田瑛治監督)等。今年の主な公開作に『菊とギロチン』(瀬々敬久監督)、『高崎グラフィティ。』(川島直人監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督)、『ルームロンダリング』(片桐健滋監督)、『パンク侍、斬られて候』(石井岳龍監督)がある。
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映画作品情報

【画像】映画『榎田貿易堂』ポスター

《ストーリー》

群馬県にある開業四年目のリサイクルショップ・榎田貿易堂。「扱う品はゴミ以外。何でも来いが信条さ」という店主・榎田洋二郎のもとには、店の商品同様に様々な人間が集う。榎田貿易堂でバイトする人妻・千秋、同僚のクールな青年・清春、終活中の客・ヨーコ、東京から出戻った自称スーパーチーフ助監督・丈。各々が小さな秘密を心に抱えながらも、穏やかな日々を送っていた。ある夏の日のこと、いつものように彼らが集う中、店の看板の一部が落下する。「これ予兆だよ。何か凄いことが、起きる予兆」と言う洋二郎の言葉通り、それぞれの抱える悩みや問題が、その日から静かに、だが確実に動き出す……。

出演: 渋川清彦、森岡龍、伊藤沙莉、滝藤賢一、宮本なつ、渡邊蒼、三浦俊輔、駒木根隆介、キンタカオ、金子昌弘、諏訪太朗、片岡礼子、根岸季衣、余貴美子
 
監督・脚本・編集: 飯塚健
エグゼクティブプロデューサー: 狩野善則
ゼネラルプロデューサー: 田中和磨
プロデューサー: 柴原祐一
アソシエイトプロデューサー: 古川一博
音楽: 海田庄吾
撮影: 山崎裕典
照明: 岩切弘治
録音: 藤林繁
美術: 吉田敬
美術進行: 佐々木伸夫
編集: 木村悦子
衣装: 白石敦子
ヘアメイク: 内城千栄子
スクリプター: 石川愛子
音響効果: 松浦大樹
助監督: 杉岡知哉
ラインプロデューサー: 川島正規
エンディング曲: 「ハロー」奥野涼
配給:アルゴ・ピクチャーズ
2017 / 日本 / 110分 / 5.1ch
©2017映画「榎田貿易堂」製作委員会
 
2018年6月8日(土)~
新宿武蔵野間ほか全国順次ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @enokidabouekido
公式Facebook:
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