ガメラ降臨!「平成ガメラ」を生んだ「ギャオス」の魅力

東京国際映画祭 新宿 レッドカーペット ガメラ

第28回 東京国際映画祭 日本映画クラシックス
ガメラ降臨!「平成ガメラ」を生んだ「ギャオス」の魅力

今回の東京国際映画祭は、日本映画界のこれまでの「財産」に大きく注目している。
「Japanese Classics」もその一つで、デジタル理マスター版で過去の名作をクリアな画面で楽しめるのは、フィルム修復、復元技術の向上のおかげだ。

今日は「Japanese Classics」の中でも、ガメラ作品について触れたい。
ガメラ作品上映初日の24日には、新宿会場(TOHOシネマズ新宿)のレッドカーペットにガメラが登場した。
日本の怪獣映画といえば「ゴジラ」が有名で、TOHOシネマズ新宿のビルにもゴジラの首が存在するほどである。いち早くリメイクが始まったし、ハリウッドでもすでに2作品を数える。
しかし最近では「ガメラ」も双璧として根強い人気を博す。その要因は「ギャオス」という優れた悪役キャラクターを持っていることに尽きるだろう。
昭和の怪獣はゴジラを筆頭に、最初は恐ろしい存在としてスタートしたものの、シリーズを重ねるほどに「他の怪獣から地球を守る」あるいは「子どもには優しい」という正義の味方としての味わいが次第に強くなっていった。そのために表情も柔らかくなったり、着ぐるみもマスコット化して「怪獣」としての原初的な恐怖は薄れていってしまったのだ。
金子修介監督によるリメイク版ガメラ、いわゆる「平成ガメラ」第一弾のインパクトは、そうした傾向をいったんリセットし、「生理的な恐怖」を復活させたところにある。その立役者はガメラだけではない。ギャオスこそ、私たちを震撼とさせた。
多くの怪獣が「巨大」であるために動作がスローモーションにしか描けないのに対し、ギャオスは比較的小型であり、空を飛ぶ俊敏さ、リアルな神出鬼没さ、シャープな造形を併せ持っていてる。その上、人間を捕食するという点で、ただ踏みつぶされたり焼かれたりするのではない、生々しくグロテスクな恐怖感を生む。
金子監督の脚本が見事だったのは、最初から「ギャオスの仕業」とせず、「何者かに人間が襲われている」という得体のしれなさから映画を始めたところだ。今まで見たこともないものなのだから、形も分からなければ名前だってついていなくて当然。凄惨な被害現場を分析することにより、あれころと犯人をプロファイルするようにして、いつしか「犯人X」が翼竜とも蝙蝠ともおぼしき造形であることが発覚するのである。得体のしれないものに対する恐怖もプラスされたことにより、いよいよサスペンス的な要素が膨らんで、単なる「怪獣というキャラが出演する映画」以上のクォリティーを創出したのだった。
ゴジラ映画のリメイク版の多くが「ゴジラ愛によるゴジラ回顧」に流れたのに対し、平成ガメラがあくまでも「怪獣の原初的インパクト」を追求したことが、「ガメラ映画」のカラーを確立し、その後のシリーズ化に寄与したといえよう。
昭和の「ガメラ対ギャオス」を上映する今回は、本家本元のギャオスに出会う絶好の機会だ。怪獣映画にはスケールの大きさが欠かせない。大スクリーンでしか味わえない感動がある。それを4Kデジタル・リストア版というクリアな映像で鑑賞できるのは、得難い経験となるだろう。
私事になるが、私の父・仲野和正は元大映社員で、「ガメラ対ギャオス」の企画に携わっている。湯浅憲明特撮監督や脚本の高橋二三氏とは幼いころ会った記憶があり、撮影期間に砧の撮影所に見学に行ったこともあった。父は「たとえ怪獣映画といっても、何もかも作り事ではいけない。きちんとした科学的、歴史的な裏付けがなければ、映画として説得力が失われる」と言っていた。脚本家や監督の斬新なアイデアや奇想天外なストーリー運びがより生きるよう、その行間を埋める地道な作業をしていたのを思い出す。常に「本当らしさ」を求める論理的な思考が、平成ガメラにも息づいていることが誇らしい。64歳で亡くなった父は、私にとってはずっと「大人」であったが、「ガメラ対ギャオス」を作っていたころは、まだ40歳にもなっていなかったのだと思うと、映画人としてのエネルギーや矜持を感じずにはいられない。

[文: 仲野マリ/写真: 平本直人]
 

映画作品情報

大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス[デジタル・リマスター版]

大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス[デジタル・リマスター版]
©KADOKAWA 1967
87分 日本語 カラー | 1967年 日本 | 配給: 株式会社KADOKAWA
監督: 湯浅憲明

ガメラ 大怪獣空中決戦[4Kデジタル・リストア版]

ガメラ 大怪獣空中決戦[4Kデジタル・リストア版]
©1995 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂
95分 日本語 カラー | 1995年 日本 | 配給: 株式会社KADOKAWA

監督: 金子修介

ガメラ2 レギオン襲来[4Kデジタル・リストア版]

ガメラ2 レギオン襲来[4Kデジタル・リストア版]
©1996 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂 富士通 日販
100分 日本語 カラー | 1996年 日本 | 配給: 株式会社KADOKAWA
監督: 金子修介

ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒[4Kデジタル・リストア版]

ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒[4Kデジタル・リストア版]
©1999 KADOKAWA 徳間書店 日本テレビ 博報堂 日販
108分 日本語 カラー | 1999年 日本 | 配給: 株式会社KADOKAWA
監督: 金子修介

第28回 東京国際映画祭 日本映画クラシックス 上映作品
ガメラ生誕50周年記念特別サイト

この記事の著者

仲野 マリ

仲野 マリ映画・演劇ライター

映画プロデューサーだった父(仲野和正・大映映画『ガメラ対ギャオス』『新・鞍馬天狗』などを企画)の影響で映画や舞台の制作に興味を持ち、書くことが得意であることから映画紹介や映画評を書くライターとなる。
檀れい、大泉洋、戸田恵梨香、佐々木蔵之介、真飛聖、髙嶋政宏など、俳優インタビューなども手掛ける。
また、歌舞伎、ストレートプレイ、ミュージカル、バレエなど、舞台についても同じく劇評やレビュー、俳優インタビューなどを書き、シネマ歌舞伎の上映前解説も定期的に行っている。
オフィシャルサイト http://www.nakanomari.net

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