ドコモ未来ミュージアム×映画『未来のミライ』デジタルアートワークショップ レポート

【写真】ドコモ未来ミュージアム×映画『未来のミライ』  映画『未来のミライ』プロデューサーに聞く! デジタルがひらくこどもアートの世界 デジタルアートワークショップ (パネルディスカッション)

ドコモ未来ミュージアム×映画『未来のミライ』 
映画『未来のミライ』プロデューサーに聞く!
デジタルがひらくこどもアートの世界

デジタルアートワークショップ開催!

手書き、デジタル、絵を描く行為は同じ!
細田作品に欠かせない入道雲は「変化し続ける子供の成長を表現している」

「ドコモ未来ミュージアム」と映画『未来のミライ』のコラボレーション、デジタルアートワークショップが8月4日(土)にデジタルハリウッド大学内「駿河台ホール」で開催された。「ドコモ未来ミュージアム」は、未来をつくる子どもの夢を応援するため、2002年から毎年開催されているドコモの創作絵画コンクール。そのデジタルアート部門の設立10周年を記念し本年コラボレーションした映画『未来のミライ』は第71回カンヌ国際映画祭の「監督週間」にアニメーション作品で唯一選出、上映された。さらに第42回アヌシー国際アニメーション映画祭の長編部門コンペティションにも選出されるなど、日本国内はもちろん世界中でも大きな注目を集めている。

【画像】映画『未来のミライ』場面カット

中学生までの子どもと保護者を対象としたデジタルアートワークショップの第一部パネルディスカッションに、スタジオ地図プロデューサー兼代表取締役の齋藤優一郎氏、『サマーウォーズ』から『未来のミライ』までスタジオ地図作品のCGディレクターを務め、デジタルハリウッド専門スクールOBでもあるデジタル・フロンティアの堀部亮氏、進行にデジタルハリウッド大学の南雲治嘉名誉教授が登壇し、「映画『未来のミライ』について」「アナログとデジタル 違っているから面白い~補完しあう技法としての魅力と 可能性~」「夏休みだからこそ絵を描こう!~子どもの表現を広げるデジタルアート~」の3つのテーマをもとに『未来のミライ』の制作課程などの貴重なお話も伺うことができた。

イベントレポート

「『未来のミライ』って不思議なタイトルですね」と南雲氏。齋藤氏は「最初の企画ではこのタイトルはなかったんです。‟庭“が重要な役割を果たす映画なので、庭がタイトルについていた時期もありました。しかし、物語を紡いでいく中で、細田監督と“未来とはどういうものなのか?”という話になりまして。主人公・くんちゃんの妹“ミライちゃん”が未来からやってくるという意味合いにもとれるし、“ミライちゃん”の未来、ともとれる・・・観る人によって幅がある、色んな解釈ができるタイトルなのではないか、ということで『未来のミライ』に決めました」細田監督の映画の作り方については次のように語った。「細田監督は自分の家族の中の喜びや面白さ問題意識は世界中のどこの家族でも起きている、自分の家族に起こっている問題が解決できれば、世界中の家族の抱える問題の解決にも繋がるのではないかと考え、それをモチーフに映画を作っています。今回の『未来のミライ』も細田監督の家庭にお子さんが生まれたという非常に身近な体験から生まれています」南雲氏は「自分の身近な所で起きている出来事とリンクすると感動が生まれてきますよね。そのとらえ方がすばらしかったです」とほほ笑んだ。

【画像】映画『未来のミライ』場面カット

細田監督の映画は、キャラクターは鉛筆と紙で、背景技術に関しても基本的には絵の具と絵筆で描いているという。なぜかというと「細田監督はもともと画家を目指していました。絵描きになりたかった人が映画の表現としてどのようにアニメーションを手がけていくかというと、まず自分で描く線の力強さやエネルギーを使います。しかし、そもそもデジタルと手書きは絵筆を変えるようなもので、絵を描くという行為に違いはないと思うんです。ツールを変えて自分のイマジネーションや作品の持ってる広がりをどう描くか。有効にCGを使って世界を作っていきたいですね」と斎藤氏。実際にそうした流れが今回『未来のミライ』がカンヌ国際映画祭の「監督週間」という作家性を問う部門に選出され上映されたことにも表れているようだ。手書きとデジタルの融合という新しさが魅力的で「観たことがない絵、映像だよね」と言ってもらえたことをとても嬉しく思うとも語った。「手書きとデジタル、それぞれの得意なところを使って表現できたらいいんじゃないかと思います」という堀部氏に対して「まず鉛筆の手書きでイメージを膨らませる、仕上げにCGが出てくるという感じですよね。手書きとCGどちらが良いも悪いもなく、両方不可欠だなと感じます」と頷く南雲氏に、齋藤、堀部の両氏も頷き返した。

【画像】映画『未来のミライ』場面カット

次に、アニメーションの作り方について『未来のミライ』の絵コンテや映像(アニメーションの設計図)を実際に会場画面に映し、堀部氏から説明があった。中でも1つ1つの映像・カットによって1本の映画ができていることに付属したエピソードでは、1本のアニメーションを作り上げる苦労が感じられた。「『未来のミライ』の場合は全部で918カットあります。前作『バケモノの子』は1600カットでしたから少なく感じますよね。1つ1つの映像、カットができて1本の映画ができるのでカット数は減っていますが、実は1カットの尺(時間)が長くなっているので大変なものは大変なんですよ」堀部氏は苦笑した。また、映画『オオカミこどもの雨と雪』で細田監督が「映画の中で風を吹かせたい」と言ったことがきっかけで『未来のミライ』でも草花が揺れるシーンがある。そもそもアニメーションで草花を動かすことはなく「アニメーションはキャラクターを動かすものだ」という齋藤氏は、はじめ細田監督の言葉に耳を疑ったという。実際は堀部氏を中心としたクリエイター陣の高いCG技術によりアニメーションで風が起こる、草花が動くことを体現した。「映画を観ていると見過ごしてしまいそうですよね」という堀部氏に対し、実際の映画の中での完成シーンが流れると会場からは「すげー」という感嘆の声があがり「ありがとう」と堀部氏「これから後10年くらいは頑張れるね」と齋藤氏と二人笑みをこぼした。

【写真】齋藤優一郎プロデューサー/堀部亮 CG ディレクター

アニメーションであれ実写映画であれ、その業界・ジャンルの中でメカニックデザインや美術監督がいてその人たちと議論をしながら作品を作っていくのが通常だという。しかし、細田監督は色んな世界観や表現を映画の中に取り入れたいと思っている。例えば『未来のミライ』に登場する「未来の東京駅」で主人公のくんちゃんが出会う「遺失物係」と「時計の駅長」というキャラクターは絵本作家「tupera tupera」がデザインを担当している。「未来の東京駅をこれまでの世界観とは違うものだと見せたくて、あえて他のシーンとは違うテイストにしようということでtupera tuperaさんにお願いしました」と齋藤氏。実際の作業は、細田監督がキャラクターを描くのと同様に「tupera tupera」が鉛筆でラフ画を描き、監督と話し合い色んなアイディアを出しながらキャラクターを作り上げていったという。他にも、くんちゃん家族の暮らす家のデザインは建築家に設計してもらったり、「黒い新幹線」という新幹線のキャラクターも何と本物の新幹線をデザインする方に設計してもらったりしているそうだ。「みんなも好きだと思うけど、大人になっても新幹線って好きなんだよ。大人も子供もみんなすごいな!と思えるものを作れる人にお願いしたいなと思いました」と会場の子供たちに語りかける齋藤氏に対し南雲氏も「本当の新幹線を作っている人なんですね」と興奮気味に話していた。「『鉛筆と紙でまずスケッチすることから始まるんです。実は僕こういう趣味があって・・・』という亀田さん(新幹線のデザインをされている方)の言葉に、僕ら映画を作る者と、物を作る人って変わらないんだ。やっぱり実際手で描いてるんだ!と励まされました」と齋藤氏は目を輝かせた。実際の完成映像の迫力に、会場からは「やばいやばい」という感嘆の声もきこえた。「新幹線や家を本当のデザイナーがつくっているなんて。リアリティがありユニークですよね」と南雲氏。

【写真】南雲治嘉 デジタルハリウッド大学名誉教授

最後に、夏休みという機会に絵を描いてみようかなと思っている子供たちに齋藤・堀部両氏からエールが送られた。

齋藤: 夏って、暑いだけではないと思います。夏ってどういう季節なのかな、ということをよく細田監督と話すんですよ。例えば細田監督作品に入道雲が出てくるんです。細田監督に、なんであれ毎回青い空に大きな入道雲が出てくるんですか?ってきくと、『それは変化し続けるからです。アニメーションが子供の成長を促す何かのきっかけになったらいい、そういうためのものなんですよ。だから雲を常に描くということで子供の成長を表現している、そういうことなんです』というんですよ。日々変容する社会で、子供達は未来というものを見据えながら変化し、成長しながら僕らが見ていない未来を見ているんじゃないか、そんなことを話しながら『未来のミライ』を作りました。子供たちが見ている未来はとてもみずみずしくてバイタリティーにあふれているんじゃないでしょうか。ぜひ成長を促す夏に、色々な体験をして主体的に絵を描いてほしいと思います。

【写真】齋藤優一郎プロデューサー

堀部: 今日は映画のメイキングを見て頂くことができたので、こういったアニメーションの世界を見て楽しそうだな、そういったことを目指そうかなと思ってもらえたなら嬉しいです。

【写真】堀部亮 CG ディレクター

終わりに・・・

子供たちの反応を見ながら進められていくパネルディスカッションは終始和やかな雰囲気で終了した。
第二部のワークショップでは、未就学児から小学校4年生までのジュニアクラスでは「ぼくたちわたしたちの未来のくらし」をテーマにタブレットを使っ た描画体験を実施し、小学校5年生から中学生までのエルダークラスでは自分の描いた絵を3D ホログラムとして投影できるホログラムピラミッドを作成した。参加者の小学生は「初めてだったけれど、優しく教えてもらえ て楽しかった。また描いてみたいし、デジタル部門にも応募したい。」とコンクールへの抱負を語った。

 

もしかしたら、今回のワークショップをきっかけに、未来のデジタルアートクリエイター志願者が誕生したかもしれない!そんな希望を感じさせるイベントとなった。

[記者: 宮﨑 千尋 / スチール写真: オフィシャル提供]

イベント情報

<映画『未来のミライ』プロデューサーに聞く!デジタルがひらくこどもアートの世界>

■日時: 2018年8月4日(土)
■場所: デジタルハリウッド大学内「駿河台ホール」
■登壇者: 齋藤 優一郎(プロデューサー)、堀部亮(CGディレクター)、南雲治嘉(デジタルハリウッド大学名誉教授)

■イベント構成
第一部 パネルディスカッション
・「映画『未来のミライ』について」
・「手描きと CG 違っているから面白い!」〜それぞれの魅力と可能性~
・「夏休みだからこそ絵を描こう!」〜子どもの表現を広げるデジタルアート~
・質疑応答

第二部 デジタルアートワークショップ
・ジュニアクラス「はじめてのデジタルアート 描いてみよう、ぼくたちわたしたちの未来のくらし」
・エルダークラス「君の絵が宙に浮かぶ!? 3DCG ホログラム体験」

■参加者: 一般公募で集まった未就学児童〜中学生及び保護者等 131名

映画『未来のミライ』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『未来のミライ』メインカット

《ストーリー》

とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。
ある日、甘えん坊のくんちゃん(4歳)に生まれたばかりの妹がやってきます。
両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うくんちゃん。
そんな時、くんちゃんはその庭で自分のことを“お兄ちゃん”と呼ぶ、
“未来からやってきた妹、ミライちゃん”と出会います。
ミライちゃんに導かれ、時をこえた家族の物語へと旅立つくんちゃん。
それは、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした。
待ち受けるみたこともない世界。
むかし王子だったと名乗る謎の男や幼い頃の母、
そしてある青年との不思議な出会い。
そこで初めて知る様々な「家族の愛」の形。
果たして、くんちゃんが最後にたどり着いた場所とは?
ミライちゃんがやってきた本当の理由とは――

 
英題: MIRAI
 
声の出演: 上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司/福山雅治
 
監督・脚本・原作: 細田守
作画監督: 青山浩行 秦 綾子
美術監督: 大森 崇 高松洋平
音楽: 高木正勝
オープニングテーマ・エンディングテーマ: 山下達郎
企画・制作: スタジオ地図
配給: 東宝株式会社
© 2018 スタジオ地図
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @studiochizu
公式Facebook: @studiochizu
公式Instagram: @studiochizu

この記事の著者

宮﨑 千尋

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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